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長い薬指 #肉食と草食の物語
彼の長い指が私の体の表面を撫でる。
それだけで私は背中をのけ反らせた。
私も彼の剥き出しになった先端を両手で包み込む。
長く濃密な前戯のあと、硬くそそり立った彼の一部を私の中へ受け入れる。
彼の指に私の指を絡ませ、私は絶頂を迎える。
「薬指が長い男はあっちの方も強いらしいよ」
掠れぎみの声でそう言ったのはユキだった。
普段はそんな下の話なんてしないのに、酔った勢いでそんな話を始めたのはきっと好きな人が出来たからだろう。
「ユキったらもう妄想が止まらないんじゃないの?このスケベ」
「たまにはいいじゃない私だってー、マミなんか経験豊富だからそんなこともうとっくに知ってるんだろうけどさ」
ユキが言っているのはテストステロンのことだ。
テストステロンとは代表的な男性ホルモンで、血液中の濃度が高いほど男性的な体つき、思考性をもつと言われている。当然、生殖機能にも影響される。
そして、これはまだ科学的に解明されていないのだが、胎内でのテストステロン濃度が高いと薬指が長くなるらしい。しかもこれは人間だけに限らないそうだ。
「そんなことよりそろそろアキラ君にそのユキの不純な気持ちを伝えちゃったら」
「不純だなんてひどーい、私のアキラ君への思いは純粋なんです!」
私はユキのことを応援している。
ユキとアキラが付き合って結婚できたらいいと本気で思っている。
ユキは一生の大親友だ。彼女には幸せになって欲しい。
告白してきたのはアキラからだった。
アキラの気持ちは前々から分かりやす過ぎるくらいに解っていた。
ついにきたか!
が、私のその時の気持ちだった。
アキラには別に好きとかいう感情は持っていなかった。
それでもユキの気持ちを知らなければ簡単にオーケーしていただろう。
何故ならそれは、彼の長い指が気になっていたから。
私はアキラと居る間、いつもその長い指ばかり見ていた。
あの指に触れられたい。
そのことばかり考えていた。
私は彼にひとつの提案をした。
付き合う前に私と寝て欲しいと。
それから考えても遅くはないでしょと。
彼は納得はしていなかったが、それでも私の提案に乗った。
そして私たちは混じり合い、重なりあった。
一度では済まなかった。
私は返事を保留にしたまま、彼と体だけを何度も何度も重ねた。
アキラからは毎回、行為が終わったあとで訊かれていた。
いつになったら付き合ってくれるの。
体だけじゃなく、マミの気持ちが欲しいんだって。
それでも私には解っていた。
彼がもう私の体からは離れられないことを。
そこで私はまた彼に提案した。
ひとつは彼がマミと付き合って、私ともこの関係を続けるか。
それとも私とマミの前に2度と姿を現さないか。
アキラの答えは解っていた。
驚いた顔で困惑する彼がとても可愛く思えた。
だが、アキラもユキの気持ちは理解しているはずだ。
ユキのことを振るような真似は絶対にさせない。
彼は苦悶の表情を浮かべながら、マミと付き合うことを了承した。
そして私の体をベッドに押し倒すと、いつもより荒く私の乳房を揉んだ。
優しく彼の頭を撫でた。
彼の長い指が蜘蛛の足のように見えた。
そう、これでいい。
心の中で呟いた。
きっと私の方が彼よりも母親の胎内でテストステロンを大量に浴びていたのだろう。
ただそれだけのことだ。
❮おわり❯
山根あきらさんの企画に参加させていただきました。
こんなん出来上がりましたけど、どうかお納めくださいませ🐒
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