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【SLAM DUNK Gl】141話「インペリアール オッキオ」

三田良佑との会談を終え、トライアウトを開催することを告げられた牧紳一が次なる場所に向かったのは1年前、チームの一員として大会に参加したアメリカの仲間の元だった。

「シンイチ。よく来たな! 元気しているのか?」ジャック

「イエス。でも、中々、順調とは言えないですね。」牧

テルノン会長の国際試合出場禁止宣言だったな? ハナミチは元気か?」エリック

「ああ、日本はモチベーションを失っていた。しかし三田良佑の改革がそれを払しょくするはずだ。桜木も必ずはい上がってくるはずさ。」牧


「シンイチ。 お前もだろ? だからここに来た。」アレックス

「アレックス。その通りだ。自身の課題は見えている。俺も必ずはい上がる。」牧


牧は仲間に三田良佑との一件を話し、開催されるトライアウトに向けて、ここアメリカで課題クリアのヒントを求めてきたことを伝えた。


「よーーし やるぞ!!」ジャック


ジャックの号令でストリートバスケに明け暮れる一日が始まった。

牧は1年振りの異国の地、選手とのマッチアップに自身の課題と照らし合わせていた。


「バン!」 

牧がミドルレンジのシュートを外した。

「シンイチ。どうした?」アレックス

ミドルレンジからのシュートの成功率、これが俺の課題だ。サミュエル・謙信との試合でも俺が決めていれば勝っていたはずだ。」牧

「シンイチはシュートが下手なわけではない。自分のペースでガンガン、得意のペネトレイトからのシュートやパスが決まっている時は、例え体勢が崩れていてもリングに入れてくる。そうだろ?」アレックス

「確かに、、。でもそのパワー任せのプレーでは、、。」牧

「シンイチ。覚えているか?俺がシンイチと初めて公式戦に出場した時に言った言葉がある。」アレックス

「えっ?」牧

そのパワーは活かせる。そして覚えているだろ? 始めてマッチアップした時のことを。」アレックス



「アンクルブレイク」牧


アレックスは、卓越したハンドリングとテクニック足元を崩すというアンクルブレイクを得意としており、アメリカ流の挨拶として桜木花道、牧紳一をも崩していたのである。

「シンイチはパワーだけじゃない。スピードとキレでペネトレイトを仕掛け、そのパワーで当たり負けせず自らゴールを決める。のってる時は止められないな。日本ではそうそう止められる奴はいなかったんだろうよ。」アレックス


封じられた時、アウトサイドでの選択肢が課題だ。ガンガン行けている時はいいんだ。打たされるシュート成功率の低さ。」牧


「そこでアンクルブレイクさ。アンクルブレイクってのは、その技術の特性上、密集地帯では難しい。中にペネトレイトできている時はいいさ。アンクルブレイクが外での選択肢を広げてくれるはずさ。」アレックス


アレックスは、自身が手本となり、そしてNBAのアンクルブレイクの映像を交え、牧の伝授を始めた。


「これ見てみろよ。上手くいくと、相手がコートに這いつくばるような体勢になるんだ。フリーで時間もたっぷりと落ち着いてシュート決めてるだろ?」アレックス

「これはすごいな! NBAならではなのか!?」牧


「シンイチはフリースロー決められるからな。打てないわけじゃない。」

帝王、牧紳一か。コートに這いつくばった相手からすれば、まさに帝王に映るだろうぜ! シンイチ! お前に似合うぜ!」アレックス

「ああ! どうすればいい?」牧


パワーとスピードとキレを持っているんだ。その3種を組み合わせて、相手の先を読んで、逆をつく。そのパワーを活かせるっていうのは迫力と前への推進力だよ。なおかつスピードの組み合わせ、ここでのスピードは、ストップするスピード切り替えのスピードのことも指しているからな。」アレックス


「あーそうそう、ボールハンドリング、技術は前提の話だ! アンクルブレイクってのは、アンクルブレイクを練習しようっていうより、その状況を見極める、先を読む目を養うことがポイントだ。まぁ相手が動かなきゃ使えないわけだからな。」アレックス

「なるほどな。」牧


「優秀なPGだ。その目を手に入れることができるはずだ。」アレックス


この時から牧はアンクルブレイクを習得しようと技術を磨くことにフォーカスする。
牧、藤真2強時代築いたが無意識にパワーの牧、テクニックの藤真と区分化され、互いのプレースタイルに鍵をかけてしまっていたのかもしれない。

「とは言え、ポイントはある。5つだ。」

「1つは、クロスステップの瞬間を狙う。大きくディフェンスがクロスステップした瞬間だ。」

「2つ目は、コンタクトの瞬間を狙う。ディフェンスがコンタクトを受けて不安定な瞬間だ。シンイチのパワーが活かせるはずだ。」

「3つ目は、左右の揺さぶりで重心を崩す。前足を狙って、スタンスを何度も変えさせる。これはオレの十八番だ。」

「4つ目は、100→0 0→100で前後のズレを作る。急停止、急加速をすることでディフェンスを崩す。シンイチはスピードもあるからな。活かせるはずだ。」

「5つ目は、相手の読みを外すこと。さっきも言ってたが先を読む目だ。ポイントを総合的にまとめるとこの目を養うこと、シンイチなら手に入れられるばすさ」


「アレックス、サンキュー! 必ず習得してはい上がって見せるよ。」牧

「おう! 楽しみにしてるぜ!」アレックス


アメリカでオフシーズンを過ごし、日本へ帰国。CBAリーグも開幕。

牧は自身の課題に向き合いながらプレーをした。それは傍から見れば、イージーにも見えるシュートを外す等、もの足りないプレーにも映っていたのかもしれない。

宣言撤回に向けて話はしているものの現状、代表での試合予定はない。難しい状況でのプレーにハイパフォーマンスが出しずらい環境にあるというのが一般的な認識でもあった。


安西光義を偲ぶ会での藤真健司、花形透、清田信長の会話もそこにあった。

「牧の調子はどうだ?」藤真

「・・・・」花形

「わかんないっすよ。」清田


しかし牧紳一の見据えた先は違ったのだ。
すでに所属の本田トラベルには、牧の意向は伝えていた。

批判は覚悟だった。

それでも退路を断ってでも新しい環境へ、牧紳一は先を読む目を養っていた。

イタリアでの出会いをきっかけとしたその目を


「インペリアール オッキオ」


とネーミングされることをまだ日本は知らない。






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