t&y creations

はじめまして。友人と二人で紙芝居や絵本を作ったりしています。個人的には児童文学や童話が好きなので投稿しようとおもっています。どうぞよろしくお願いします。

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はじめまして。友人と二人で紙芝居や絵本を作ったりしています。個人的には児童文学や童話が好きなので投稿しようとおもっています。どうぞよろしくお願いします。

最近の記事

らくがき王国⑨

ピーターとジョナサンはついにらくがき王国の外の世界にたどりつくことができました。 しばらくの間、どこまでも広がる草原を二人で眺めていました。 「外の世界は、おもったより静かなんだね。らくがき王国の方が騒がしいや」 ピーターがいいました。 「でも、王様は刺激に満ちあふれているっていってたぜ」 ジョナサンが言い返しました。 「外の世界に出れただけで刺激的だけどね」 「まあね。それより、あそこに見えてんの小屋じゃないか?」 ジョナサンはそういって小屋の見える方向に指

    • らくがき王国⑧

      ピーターとジョナサンの二人は王宮を出て、一本線が示す方角へ歩きだしました。 一本線は二人が少しでも道に沿っていないとすぐに方角を修正してくれました。 一本線が示す先には、深い森がありました。二人は少し心配になりましたが、外の世界に行くためには仕方がないとおもい、森に足を踏み入れました。 まだ、昼だというのに森は静かでじめじめとしていました。二人はあたりをキョロキョロと見渡しながら歩いています。 すると、急に森に濃い霧が立ちこめました。あっという間にあたりは白くなり、前

      • らくがき王国⑦

        ピーターとジョナサンは考えた末、外の世界にほんの少しだけ行ってみることにしました。 「王様、ぼくたちに外の世界への行き方を教えてください」 ピーターは王様にお願いをしました。 「そこの机で一本の線を描きなさい。その線が外への地図となり、道しるべになる」 ピーターは机の上で線を一本描きました。そして、描いた一本線が宙に浮き上がり、ピーターの手のひらに乗りました。 「これが外への道か。なんかあっけないな」 ジョナサンがいいました。 「行き方は難しくないのだ。行き方を

        • らくがき王国⑥

          らくがき王国の王様は、話だしました。 「ワシは、らくがき王国の外からやってきたんじゃ。そして、このらくがき王国を作った。なにもないところからこの王国を作るのは大変だったが、とても楽しかった」 「王様は外の世界のことを知っているんですか‼︎教えてください‼︎」 ピーターは興奮していました。 「ああ、知っているとも。外の世界は刺激に満ち溢れている。このらくがき王国がいかに楽園かがわかる」 「王様、あの机はいったいなんですか?」 今度はジョナサンが聞きました。 「あの

          らくがき王国⑤

          ピーターとジョナサンが足を踏み入れた隠し部屋には、机と椅子があるだけでした。 あまりにも部屋ががらんとして二人はとまどいました。 「これが秘密の部屋なのか?」 ジョナサンが聞きました。 「たぶんね……」 ピーターは自信なさげにいいました。 この部屋には机と椅子以外は何もありませんでした。机は古びていて、かなりの月日がたっているようです。 二人はしばらく部屋の中をすみずみまで調べましたが、何も見つけることはできませんでした。 「この部屋はいったいなんなんだ」

          らくがき王国⑤

          らくがき王国④

          今日は、らくがき王国の感謝祭です。 国民は、この日お城の中庭に集まり、王様の言葉に耳を傾けていました。 そんな中、ピーターとジョナサンは頃合いをみて、人気のない場所に移動しました。 「いよいよだな。本当にいいんだな?」 ジョナサンが小声でピーターに聞きました。 「もちろんさ。ジョナサンこそ大丈夫かい?」 「へっ、もうここまで来ちまったからな。まっ、足はふるえているけどな」 二人は気持ちを確認しあい、お城に入る準備をしました。 ピーターが壁にトンネルのらくがきを

          らくがき王国④

          らくがき王国③

          放課後、校庭のすみでピーターとジョナサンは話込んでいました。 「それでどうなんだよ?」 ジョナサンはピーターに聞きました。 「やはりこのらくがき王国には何か大きな秘密があるとおもう。この国は、好きなところに好きなだけらくがきをして暮らしている。お城にまでらくがきをしていい太っ腹な国さ。だけど、そのお城には年に一度だけしか入ることが許されていない」 「たしかにな。ピーターは、お城の中に秘密があるとおもっているんだな?」 「うん。お城にはこの国の秘密が隠されているとおも

          らくがき王国③

          らくがき王国②

          らくがき王国の一日はゆっくりはじまります。 なんせ、この国仕事はらくがきをすることなので、誰もいそがしくする必要がありません。 ゆっくり仕事をはじめて、じっくりらくがきを楽しむ大人がたくさんです。 この国では楽しく働く人ばかりでした。 らくがき王国では大人よりも子どもの方がいそがしいのです。 それは、子どもたちがらくがきを描きたくて急いで学校に向かうからです。 そんな中、らくがき小学校に通うピーターは珍しくゆっくりと登校していました。 ピーターが学校に着くころには、

          らくがき王国②

          らくがき王国①

          とある島にらくがき王国という不思議な国がありました。 このらくがき王国は地図にもない国でした。 それは、国民全員がらくがきをして外の世界に知られないようにしたからです。 国民は朝から晩までいたる所にらくがきをします。家の壁やお役所、そしてお城にまでらくがきをします。 そう、らくがき王国はらくがきをすることが仕事なのです。 生活もらくがきで済ませてしまいます。 お腹が空いたら、らくがきをすると、それが食べ物に変わるのです。なんと味もとても美味しいのでした。 学校の

          らくがき王国①

          図書室の精霊

          少年は放課後、人の少ない学校の図書室で本を読んですごしていました。 一人また一人と、図書室をあとにして、とうとう少年だけになりました。 本が好きな少年はまわりの生徒が帰っても本に夢中です。 そんな少年も下校時間がせまるとさすがに、まわりに誰もいないことに気がついてすぐに帰りのしたくをはじめました。 すると、机の上に一冊の白い本が置いてありました。 表紙もタイトルも何も書かれていない真っ白な本でした。 「なんだろうこの本。誰かの忘れ物かな」 少年は白い本を手に取り

          図書室の精霊

          リフレッシュかばん

          夜も遅い電車内。 一人のサラリーマンが今まさに電車内で眠りにつこうとしていました。 ローカル線ということもあり、乗客の人数もポツリポツリといるだけでした。 車内アナウンスが、終着駅を告げるころ、サラリーマンはとうとう眠ってしまいました。朝から晩まで働いた体は休むことを選択したのでした。 サラリーマンの体は左に傾き、右に傾きと絶妙なバランスを保ちながら気持ちよさそうに眠っていました。 そして、体は左右の傾きから正面の倒れていきました。 サラリーマンが、正面に倒れそう

          リフレッシュかばん

          お殿様の草履

          むかし、あるえらいお殿様がいました。 お殿様は一年中お城で過ごしていたのでだんだんとあきてきました。 食べるものや寝るところ、欲しいものはなんでも手に入ったのですが、つまらなくなってしまったのです。 そこで、お殿様はお城を抜け出して城下町に出かけることにしました。 しかし、家来たちはお殿様が城下町に行くことに大反対でした。なので、家来たちはお殿様がお城を抜け出さないように寝る時以外はつきっきりでした。 ある夜、お殿様はどうにかお城を抜け出せないか考えました。 そこ

          お殿様の草履

          お礼

          今日は物語ではなく、日頃のお礼を書こうかとおもいます。 日頃からT & Y creationsの作品を読んでくださるみなさま、本当にありがとうございます。 まだまだ始めたばかりで試行錯誤の段階ですが、読んでくれる方いることがこんなにありがたく、そして本当に嬉しい限りです。ありがとうございます。 今後も少しずつ小さなお話を作っていきたいとおもっていますので、お付き合いをいただけたら嬉しいです。 これからも創作を楽しみながら少しでもほっこりしてもらえる作品を作っていきたい

          博士の枕

          ある有名な博士が、夢の中で自由に動ける枕を発明しました。 さっそく博士は、お昼寝をして夢の世界に入っていきました。この枕は横になると十秒で眠れるという優れものなのです。 博士が目を開けると、そこにはなんとの不思議な世界が広がっていました。 人間やロボットがともに暮らしていて、多くの人が空を飛んで移動していました。 「すごい世界じゃの!あっ、でもこれわしの夢の中か」 そう、この不思議な世界は、博士が作り出した世界なのです。その世界の中で博士は自由に動くことができるので

          大根収穫

          むかしもむかし、遠いむかし。 ある少年がいました。 少年は、家のお手伝いで庭にある野菜をとってくることになりました。 小さな庭ですが、たくさんの野菜が育ててあり、少年の家は毎日野菜を食べていました。 少年は、大きく育った大根を抜くことにしました。 少年は、土から出た大根の葉をつかみ、力いっぱい引っこ抜きました。 ところが、大根はなかなか抜けません。それどころか、どこまでも大根は伸びていて土から出る気配がありません。 「これきっとこの町で一番大きい大根なんだ。こう

          本の紹介

          今夜は本の紹介をしたいとおもいます。 紹介する本は、児童文学作家の岡田淳さんの『不思議の時間割』です。 岡田さんはもともと小学校の図工の先生をしながら児童書の創作活動を続けていました。そのためか、岡田さんの作品のほとんどが、小学校を舞台に描かれています。小学校を舞台に子どもたちが活躍するファンタジー系のお話が多いです。 今回、紹介する『不思議な時間割』は、短編集となっていて、こちらも学校が舞台となっています。子どもたちが、授業や休み時間に不思議な体験をすることにこの作品