柱時計の音
外が暗くなり始めた頃、サトシとコウタは帰る支度をしました。
二人は、児童会の行事準備のために遅くまで残っていたのでした。
「早く児童総会終わらないかな。緊張するんだよね、あれ」
サトシは児童会長で全校生徒の前に立たなくてはいけないのでした。
「緊張してたんだ。知らなかったよ」
コウタは児童会の副会長をしており、いつもサトシを支えていました。
二人は昇降口で外ばきに履きかえて、帰ろうとした時です。
大きな音がボーンボーンとなりました。
「なんだ?」
サトシは驚いて、音のする方を確認しました。
「柱時計だよ。この音聞いたことなかった?もうかれこれ100年近くこの学校にあるらしいよ」
驚いているサトシにコウタは説明しました。
昇降口を入ってすぐ目の前に大きな柱時計がありました。その時計はかなり古いものでしたが、今でもいい音を出したいました。
サトシは、なぜかその柱時計が気になりました。入学以来、その柱時計の音を聞いたことがなかったのです。
サトシが柱時計に夢中になっていると、突然、柱時計が開いて中から作業着姿のおじいさんが出てきたのです。
「あー、腰痛えー!」
おじいさんは腰をおさえながらいいました。
突然のことにサトシとコウタは驚いて、目を丸くしました。
「い、いま柱時計から出てきなよな?」
サトシはコウタに聞きました。
「で、でてきたな」
コウタが答えました。
おじいさんは、二人がこっちをみていることに気がつきました。
「あら?まだこどもが残ってたか?いまみたことは内緒じゃぞ」
おじいさんは愉快そうに笑っていいました。
「あの、いま時計から出てきましたよね?」
サトシはおそるおそる聞きました。
「まあ、わしの仕事場だからの」
「いや、でもその柱時計に人が入れる隙間なんてないですよ?」
今度はコウタが質問をしました。
「確かに。さて、わしはいったい誰でしょう。おっといかん。仕事に戻る時間じゃ。少年たち、今日のことはいい思い出として、心にしまっておきなさい。それじゃ」
そういって、おじいさんは柱時計を開けて、吸い込まれるように時計の中に戻っていった。
二人はしばらく柱時計をみつめていました。
おじいさんにいわれたとおり、二人はこの不思議な出来事を、二人だけの秘密にすることにしたのでした。