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ついに開戦!戦国アウトレイジ!!楽しみだぎゃー「首」見た

首 / 2023年
鑑賞:2023.11.24、記事公開:2023.11.24
監督、脚本、編集:北野武

 話を聞いた時は時代劇でアウトレイジやんのか楽しみ過ぎるとワクワク。予告編の加瀬信長見て「やっぱり」インテリヤクザの石原だとワクワクワク。個人的見解で戦国武将はきっとヤクザみたいな人達だったんじゃ無いかと思ってたので、我が意を得たりと盛り上がってた。SNSでの感想もで始めたので、ネタバレの前に劇場へ。IMAXじゃなくても良かったけど、席が取れたのでIMAX。

映画はチョー面白いでござる。

 んでいざ見てみるとアウトレイジっぽいけどアウトレイジではなく、想像の何倍も面白かった。ビヨンド、最終章と面白いけど物足りなくなってきてたところに嬉しい誤算。
 やったー、やったよー。こういう戦国ものが見たかったんだよー。昔から農民や町民の服や肌や髪がやけに綺麗だったり、文字が読めない人も多いはずなのに理路整然と話してたりするのが嘘くさいと思ってたんです。江戸以降はわからないけど、それ以前なんて公家や武家、僧侶じゃなければ、ゴロツキや籠を編む(魚を獲る、とかとか)のは天才的だがその他に関しては「ケーキの切れない非行少年たち」みたいな人が主流だったんじゃないか?って思ってる。なんとなく。

 とにかく上から下まで出てくる人がみんな生き生きとしてて嬉しくなる。
下々の人はちゃんと汚いしいろんな立場の人たちがざわざわしてるし、上は上でイっちゃってる人もいるし、生真面目だったりサラリーマンぽかったり妖怪みたいだったりと虚実織り交ぜ多彩な人たちが溢れかえりなんとも言えない。どうゆう人か説明はないけどちゃんと伝わる流石の映画表現力。
 泥の中でもみ合ったりと整然としてない合戦シーンもホントっぽくてイイ。山中の襲撃シーンとかも面白い。
 時代劇や大河ドラマのフォーマットを踏んでいないので、これは時代劇ではなくヒューマンドラマというか群像劇という部類に入るんではないかしら。時代劇や大河はおそらく、大衆演劇の世界がちゃんとベースとしてあるのでかっちりとした様式があるのではないかと勘ぐっている。

 露骨に出世を目指している人達の生き様は熱かった。大将首を目にすると理性がぶっ飛びわけがわからなくなる茂助。合戦のどさくさを利用して一気に手柄を掻っ攫おうと画作する般若の左兵衛。
 無謀だし知恵は無いし、無いが故に、それでも上を目指して全てを賭ける感じが最近あんまり触れて無かったのかグッと来た。

 冒頭の河原の兵士に蟹がたかっているところで、今回はリアル方向に寄せますよという宣言に受け取ったけど、見ているうちにどうにも面白コントにしか見えなくて、最後に「俺が見ているリアルな世界はこれだ。コントに見えるとしたら、それはリアルな世界がコントだからだ」と言いたいのかと理解。忍者が出てきたり飛び上がったりはまあギャグとしても、人の在り方やその行き違いが主題だろうし、その点で面白くもあり哀れでも熱くなるところでもあり、それでもみんな一生懸命生きてるよね。って言われてる感じ。これほど多種多様な生き様が一息に見れるなんて贅沢極まりない。

おもしろコント!か?

 秀吉近辺がベタなコント調でそれに巻き込まれる浅野忠信の頑張りがいちいち笑える。
 服部半蔵が目立つゆえ陰ながらとお守りしますと言いながら、すぐ脇の草むらをガサガサ移動してるのも笑える。そもそもそんな忍者みたいな格好して目立たないわけないじゃん、という面白いやつ。そんなにしてまで守ってる家康も、影武者でもイイけど簡単にころされ過ぎじゃない?ホントに守る気あるのか?と思うような雑な守りで影武者死亡をあんなにしつこく重ねるもんだろうかというくらい重ねてくる。徹底していて面白い。と面白要素をいちいちあげたらキリがないくらいどのシーンも面白かった。

 このおもしろとホントっぽさが共存しているところが本作の旨味だと思う。そのホントっぽさを担保している合戦の様子やロケやセットなどなどはオフィス北野ではなくKADOKAWA制作になったのが良かったんじゃないかしら。ノウハウ持ってそうだし。
 音楽も今までと違う感じで、印象的なメロディとかはあんまなく素直に盛り上がる場面はちゃんとテンションの上がる曲がついてた。久石譲か鈴木慶一のイメージが強かったけど、固定ってわけでもないのね。

ビバ!石原改加瀬信長!!

 キャストはみんな良かったけど、加瀬亮と中村獅童がダントツで好きだった。遠藤憲一も終始面白かった。追い詰められたおじさんを哀れさを感じさせずあんなに面白く見せる役者が他にいるだろうか。
 岸辺一徳の存在感もやはりすごい。あのお肉タプタプ感とか。誰が監督でも岸辺一徳が岸辺一徳的おもしさを発揮しているの本当に凄い。岸辺利休と大竹まことのあのチームは何なのかな?大臣と官僚のパロディかしら。
 加瀬亮はアウトレイジの時とそんな変わんない気がするけど、アウトレイジの加瀬亮が大好きなので今回の信長も大変良かった。イっちゃってる感も良かったけど佇まいや馬上での見映えも良くて出てくるだけで嬉しい。信長が出て来るシーンだけ繋いだ(ついでに現代語訳字幕の入った)「首」のブルーレイは出ないだろうか。
 中村獅童は本当にそういう風な人に見えて凄かった。「七人の侍」の三船敏郎とはまた違った意味で野性味がすごい。リアルというよりは、自分の考える当時の人のあり方に凄く近くてビックリ。

 殺陣というかアクションは今作では全面には出ていないので、そういうのを期待する作品ではない。
 仕方ないとはいえ予告編はミスリードのような気はしないでもない。予告編を見て期待してきた人はこのトーンに気持ちを切り替えるのが大変そう。
 お話は説明も少ないし方言や早口や小さかったりで聞き取れないことも多い。「本能寺の変」で何が怒ったかお客が知ってることを前提に作ってあるので、全く知らない人はWikiで予習した方が映画に集中できてイイと思う。
 知らずに見て「本能寺の変」を楽しむのももちろん面白いと思う。

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