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いつか来ると思ってたけど…… ありがとう。デイヴィッド・リンチ監督作「マルホランド・ドライブ」見た

2025.1.17、アメリカのデイヴィッド・リンチ監督が亡くなられました。
体調を崩していたのを知らなかったので驚きました。
映画表現を悠々と打ち拡げてゆく唯一無二の表現者でした。
感謝しかありません。
ちょうど今年初めに見た感想をそのまま掲載します。
それにしても、なんてこった。

 年越し映画に4Kレストアされた「マルホランドドライブ」を発見したので鑑賞。なんか撮るよー、みたいな声も聞こえてきてるし。

 マルホランド・ドライブは劇場で見たきり。当時はわけはわかんないけど何かすごいものを見せられた感想。何も覚えてなかった。
目眩くイメージと重厚な音楽に包まれる。ストーリーはあってないようなもので、映像と音楽に打ちのめされる映画の枠を超えた体験として覚えてた。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ネタバレアリ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 今見てみると全然違った見え方で面白い。そして、劇場鑑賞時のことをやはり何も覚えていない。
 見直してみると「イレーザーヘッド」に関してリンチは「子供が生まれてくるのが嫌でしょうがなかった」という話をどこか(多分「デヴィッド・リンチ:アートライフ」)で聞いた気がするけど、今作はこれのハリウッド版に見えた。冒頭、マルホランド・ドライブの看板のあとすぐにサンセット・ブルーバードの看板が映るけど、サンセット・ブルーバードは邦題「サンセット大通り」というビリー・ワイルダー監督作。内容は、依頼を受けたハリウッドの脚本家のお話で映画制作の内幕モノ。なので、今作はリンチ版「サンセット大通り」ですよーな宣言かな。ライティングなんかのルックもハリウッド黄金時代のテイストを意識してるように見えて来る。と思ったら、すでにwikiでオマージュだと言及がありました。

 解釈としては、自身が体験したハリウッド映画業界の理不尽さや滑稽さ、恐ろしさが主題じゃないだろうか。
どこからか現れてキャスティングを指示してゆく権力を持ってそうな得体の知れない男たち。浮気をしておきながら罵倒してくる妻。田舎者の純真な心を弄ぶように魅力的なミステリー。溺れ蝕む愛欲と嫉妬。
 当時はただただ圧倒されただけだったけど、思ったよりもおもしろ要素も多く笑えるシーンが盛りだくさん。アダム監督のシーンでは笑うしかない理不尽だけで繋げたのかってくらい理不尽ネタが盛りだくさん。いちいち楽しい。
 テイストがツイン・ピークスのようなミステリーを追いかけて行くようなノリなので、シリアスに受け取っちゃうと今作もミステリーものだとミスリードされるんじゃないだろうか。多分、謎解きがテーマではあるけど、ジャンルとしては謎解きではない。もちろんリンチはツイン・ピークスがミステリーではなく「面白要素でしかできてない」コメディだと思ってる可能性はどこまでもあるけど。

 大きなお話はあんまり見えなくて、ネタを適時つなげたような感じに思えた。ハリウッド魔宮を彷徨うお話ということかもしれない。強いて言えばゲームの「サイレント・ヒル」は近い気はする。過去作でいうと、見やすい『イレーザーヘッド』、ストーリーをばらけさせた『ブルーベルベット』。ツイン・ピークスっぽいノリも感じて、リンチ作品の美味しいとこどりな感じもある。キャリア的にはデイヴィッド・リンチ監督の集大成にも思える。
 嫌なことを作品に昇華する人(カフカとかH.P.Lとか)はたまにいるけど、リンチ監督にもこれからどんどん嫌な目に遭っていただきたい。


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