キラキラ・ピーターと原作に忠実そうな本格感が楽しみな「ピーター・パン」見た
PETER PAN / 2003
鑑賞:2024.8.9、記事公開:2024.8.28
監督:P・J・ホーガン 脚本:P・J・ホーガン、マイケル・ゴールデンバーグ
そういえばどんな話かと思って手元にあった本を読んだら、どこまで読んでもウェンディが出てこずお話がなかなかはじまらない。おや?と思ったら、ピーター・パンの戯曲はいくつか種類があるみたい。スピルバーグの『フック』はジェームス・マシュー・バリーのピーターパンとは違うし。前から気になってた原作に沿ってそうなソニー・ピクチャーズ版を鑑賞。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ネタバレアリ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
見終わった感想としては映画は心がざわつく辛い内容だった。
ファミリー作品としては申し分なし
子供向け映画としては面白いと思う。ルックもロマンティックで綺麗だし、おとぎ話感とシリアスの匙加減が程よく興醒めせずに同居してたと思う。妖精のキラキラはキラキラしてて欲しいし、フック船長の海賊船はやっぱりリアルの方がテンションが上がる。かといって完全に子供向けではなく、大人が見ても楽しめるように配慮しているみたい。
2003年とマトリック以後の作品ではあるけど、CG一辺倒ではなくマペットやブルーバック合成などが使われてて、特撮特有の質感が出ててよかった。
キャストもよかった。ピーターの美しさは写真だけではなく、ムービーでも美しかった。フック船長も見た目では勝負せず。人物像がキャラっぽくなくてかなりいい感じ。その分手下たちはキャラっぽかった。今作は子供むけに入って来そうなドタバタした笑いはあんまりなくて、そんな世界観にフック船長がしっかりハマってた。なぜか鸚鵡がすごくボロボロな設定だったけど、この映画で唯一海賊的な狂気を体現しててよかった。
おじさんとしての思わぬ問題
問題は展開。初めの方から、ピーターパンがあまりにもスイートなイケメンすぎて、絵面が色気付いたばかりの女の子を甘いフェイスのホストが店に来いよと誘ってるようにしか見えなくて、心がざわざわとする。つい、そんな男についてっちゃダメだと何度も心の中で叫んでしまう。他のピーターパンはよく知らないが、今作は割とウェンディが異性を意識した感じを出してくるし、ピーターがまた、そうなるのも無理はないほどキッラキラなので冷静ではいられない。娘さんがいるお父さんは見ない方がいいじゃないだろうか。口車に乗せられてノコノコ店までっていうかネバーランドまでついてったウェンディに、今度は見た目を気にするITでちょっと成功したイケオジみたいのが絡んでくる。このイケフックおじさんは、美味しいものとかちょっと悪い海賊ごっこみたいな遊びに誘ってウェンディの気を引こうとするけど、それもこれもみんな若いピーターパンに対抗するため。そんな策略にまんまとかかり血塗れジルだとかいって遊んでいたけど、ピーターが責任をとる男ではないとバレてしまい家に帰ると言い出すウェンディ。しかも、店のホストを全員更生させると言い出す。どうしても真っ当に働きたくないピーターは拗ねたまま。そこへ、若い奴にだけは負けたくないおじさんがみんなを攫って「あいつは人を愛せないやつだ」とかなんとかピーターの悪口を吹き込む。みんなに去られて拗ねてはみたもののみんなの不幸は逆に俺のチャンスとばかりに祭りに向かうピーター。ここで、イケオジとピーターの悪口合戦。お前は働く気のない愛のない男だとか女は最後は夫を選ぶとかお前は年老いた孤独なジジイだとか言い合い、映画を見ている歳をとったおじさんの心をズタズタにし始める。流れ弾が全部こっちに飛んでくる感じ。結局ピーターとフックの二人はお互いに言われたくないこと言い合って、巨大な爬虫類に呑まれて死んだり、みんなを助けた英雄感を出してるけど店のキャスト全員抜けて一人ぼっちになっちゃったりといいことがない。ピーターは頑なに大人になりたくない会社勤めをしたくないと、ろくでなしでももうちょっとオブラートに包むだろうというような言動をやめない。ウェンディたちや迷子たちはハッピーエンドかもしれないけど、こっちは心がボロボロでとてもハッピーエンドとは思えない。
少年の夢を実現させるとこんなことになるなんて、なんて話だピーターパン。
フックもピーターパンもちょっと思いやりを持って人と接し、将来の人生設計に目を向けるべきだ!