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法律とは何なのか?

ポコ♪とマゲの憲法夜話其の一

では質問です♪憲法とは誰のために書かれた法律ですか?

マゲ 『誰のために?それはやっぱり日本の憲法なんだから日本人に対して書かれたものでは?』

残念♪不合格♪この質問はちょっと難しいからな♪(笑)では、もう一問♪刑法とは誰のために書かれた法律ですか?

マゲ『ポコ♪さん、なめちゃいけませんぜ。殺人をするな。泥棒をするな。と書いてあるのが刑法でしょ。これも国民のために書いてあるに決まっているじゃないですか。』

これも不合格だな♪

まず、第一に知ってもらいたいのは法律とはそもそも何なのか?ってことだ♪

法ってのは誰かに対して書かれた強制的な命令である♪

法律の定義は色々あるんだけど、まずはこの事を覚えよう♪だから、守ってもいいし、守らなくてもいい、なんて法律は存在しない♪法律で定めたことは必ず守らなければいけないし、守らなかったら法律違反だし、場合によっては罰せられるのだ♪

マゲ『わかってますよ。そんなことは。』

さて、そこで問題なのは『誰が誰に対して命令するか?』ってことなんだ♪

『誰が』ってのは、比較的わかりやすい♪

法律の場合は国家権力だよな♪チャカポコが命令するとか、チョンマゲが命令するとかでは法律にはならんわな♪これ常識ね♪

『誰に』命令するか?ってのは法律によって違うんだ♪

マゲ『ふむ。ふむ。』

広く国民一般に対して命令する場合もあれば、限定された対象に対しての命令もある♪ケースバイケースなんだ♪

そこで、その法律が誰に対する命令なのかを判別する、いちばん手っ取り早い方法は『その法を違反できるのは誰か?』を考えることなんだ♪

マゲ『ふむ。ふむ。』

たとえば、銀行法という法律がある♪これは銀行の業務について定めた法律だけれども、この銀行法をやぶれるのは誰だ?

マゲ『銀行員じゃないですか?』

そうだな、銀行法をやぶれるのは銀行そのものなんだよな♪

俺やマゲのような一般の預金者がどんなことをやろうと銀行法に触れることはない♪例えばマゲが銀行から借金しててそれを返さなくても銀行法違反にはならない♪つまり、このことから銀行法は銀行に対する命令であるという答えが出てくるのだ♪

では、民法はどうだ?

マゲ『民法?契約者?ですか?』

民法は条文を見たら答えは簡単だ♪

『男は、満18歳に、女は、満16歳にならなければ、婚姻をすることはできない。』(第731条)

コレはみてのとおり、日本国民全体に対する命令だよな♪ある人は15歳でも結婚できるけど、ある人は民法の規定どおりに結婚しなければならないというのではない♪日本国民なら、誰でもこの法律を守らなければ、民法違反である♪つまり、民法とは国民全体に対して書かれた法律なのである♪

マゲ『ポコ♪さん、わかってますよ。(笑)』

では、刑法とは誰のために書かれたものか?

結論を先に言えば、刑法は民法とは違って、国民のために書かれた法律ではないんだよ♪ましてや犯罪者や犯罪者予備軍をいましめるために書かれたものでもない♪

マゲ『?』

そのことは条文を見ればわかる♪刑法の条文のどこを読んでも、『人を殺してはいけない』とか、『人のものを盗んではいけない』とは一行も書いてない♪

マゲ『??』

例えば殺人の項を見てみよう♪

『人を殺した者は、死刑または無期もしくは3年以上の懲役に処する』(第199条)

さらに窃盗に関する条文はこうだ♪

『他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし10年以下の懲役に処する』(第235条)

どうだ?どこにも殺すなとか盗むなとかって書いてないだろう。ということは、論理的に考えれば、人を殺そうが人の物を盗もうが、その人間は刑法に違反したことにならないと言う結論が出てくる。つまり、刑法は国民を対象とはしていないのだ。

マゲ『確かに理屈から言えば、そうかもしれません。でも、殺人罪には死刑または懲役に処すと書いてあるのだから、それが脅しになっているわけですよね。』

結果的にはそう読めるかもしれんけど、それは刑法の規定ではないのです♪

ココがポイントなんだけど、近代刑法は殺人や窃盗を禁じてはいないのだ♪

マゲ『なんか物騒な話になってきましたね。』

では、刑法は本来、誰を縛るためのものか…それを考えるには、先ほども述べたように『どうすれば刑法違反になるのか』ということを考えてみるのが簡単なのだ♪

正解を先に言っちゃうと、刑法は裁判官を縛るためのものなんだ♪刑法を破ることができるのは裁判官だけなんだ♪

つまり、裁判官がもし殺人を犯した人に対して有罪判決を下して『懲役2年に処す』としたら、その裁判官はまさに刑法違反をしたことになる♪

殺人罪に対しては、死刑か無期あるいは3年以上の懲役を与えよと言うのが刑法の規定なのだから、それより軽い刑を与えてはいけない♪それとは逆に、窃盗罪に対して死刑を宣告するのも、また刑法違反ってことになる♪

刑を与えることができるのは裁判官なのですから、したがって刑法とは裁判官に対する命令である♪裁判官を縛るためのものであると言う結論になるのだ♪

マゲ『なるほど。』

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さらに付け加えて言えば、裁判官は法律に定められていないような罪を作ってはいけない。たとえ、どんなに不道徳な行為であっても刑法に書かれていないのであれば、裁いてはいけないのだ♪

また裁判官は『事後法』、すなわち後からできた法律で人を裁いてもいけない♪問題となっている行為がその当時、法に触れていなければ、今の法律をさかのぼって適用してはいけないと言うことなのだ♪

この事を

罪刑法定主義

という♪

罪刑法定主義は近代裁判制度の根幹とも言うべき考えなんだ♪日本国憲法で第31条に『何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命もしくは自由を奪われ、またはその他の刑罰を科せられない』と書かれているのが、まさにこのことを言っているんだよね♪

今言った刑法が裁判官を縛るものであると言う事実は、憲法を理解する上でも大切な話だから、ココはぜひ頭に入れておくように♪

マゲ『ハイ。わかりました。』

さて、刑法の根本意義がわかったところで、さらに問題を出しましょう♪

刑事訴訟法は誰に対する命令か? 

マゲ『これは簡単でやんす。刑事事件の訴訟に関する法律なんですからズバリ検察官ですね。』

う〜ん、さっきよりはだんだんマシになってきたけれど、まだまだ不合格♪答えは行政権力に対する命令です♪

検察官ばかりではなくて、行政府全体に対する命令が書かれているのが刑事訴訟法だと理解するのが正しいのだ♪

だから、下は現場の警察官から上は法務大臣、総理大臣に至るまで、すべて刑事訴訟法に従わなければならないのだ♪

ここで念のために述べておけば、裁判官は司法権に属するけれども、検察官は行政権に属する。日本では両方とも同じ司法試験を合格しなければならないわけですが、属するところが全く違うわけです。検察官は政府の一員であって、かつての左翼の言い方を借りれば『権力の走狗(そうく)』と言うことになるのだ♪

ところが、どういうわけか日本人はその権力の走狗たる検察官を信頼してやみません♪なかでもマスコミ、特に新聞やテレビは検察が調べて発表したことを最初から真実だと決めてかかる。これもまた民主主義を理解していない証拠なんだよね♪

ちょうどいい機会だから、さらに質問しよう♪

刑事裁判とは誰を裁くためのものか?

マゲ『それは言うまでもない、容疑者、つまり被告でしょう・・といった素直な答えでは不正解なんでしょう。ポコ♪さんの質問ですからね。』

ふふふ・・だいぶ勘が鋭くなってきたなぁ♪

その通りで刑事裁判とは被告を裁くためのものではないんだよ♪ましてや『犯罪者を裁くためのもの』など、とんでもないぞ♪

そもそも、刑事裁判においては、被告は有罪が確定するまでは無罪とみなされるというのが近代デモクラシー裁判の鉄則なんだよ♪たとえどれだけ物的証拠があろうと、心証が真っ黒であろうとも、その人は無実であるとして扱わねばならないんだ♪

判決が確定するまでは、どこにも犯罪者は存在しないわけだから、『犯罪者を裁く』という表現は本来、ありえないん話なんだよね♪では、いったい刑事裁判は誰を裁くためのものなのか?

それは検察官であり、行政権力を裁くためのもの♪裁判で裁かれるのは、被告なんかではありません♪行政権力の代理人たる検察官が裁かれるんだよ♪

マゲ『へッ??』

『刑事裁判とは、検察、すなわち行政権力を裁く場である』というのは近代裁判の大前提なんだけど、これもまた日本人がよく理解できていないところなんだよな♪

日本人と言うのは、裁判を『真実を明らかにする場』と考えているんだ♪裁判にかければ、どんな悪事も暴かれて、真実が満天下に暴露されると純情にも信じこんでいるんだよね♪

しかし、そんなのは近代裁判では通用しない♪そもそも近代裁判では『真実の探求』なんて、本来の目的では無いんだよ♪極論すれば真実なんてどうだっていい♪事実の真相など知ったこっちゃ無いってことなんだよ♪

マゲ『ポコ♪さん、それは問題発言ですよ。」

こんなことぐらいで問題発言呼ばわりされたのではかなわないぞ♪マゲようなセンスの人が多いから、日本はいつまでたっても良くならないのだ♪

ワシに言わせれば、もし日本で悪書追放運動をするとしたら真っ先にあげたいのは『遠山の金さん』の話なんだよ♪金さんの時代劇は、テレビでもずいぶん人気があるらしいけど、これこそ近代裁判を否定する問題ドラマなのだ♪

マゲ『?』

だって、そうだろう♪遠山の金さんは、自分で犯罪捜査をして、証拠を集めて容疑者をお白州に引きずり出しておいて、それでもって自分で判決を下してしまう♪場合によっては無実の市民の弁護までするのだから、刑事、検事、裁判官、弁護士の四役兼任です。こんなべらぼうな話があるかってんだ♪

遠山の金さんは、物語の主人公だから悪い事はしない♪神様のように全知全能で、悪事は必ず見通すことができると言うわけなんだけど、実際にはそんな立派な人はいるわけない♪

もし、極悪非道な金さんがいて、何の罪もない無実の人を片っ端から逮捕、告訴をして、おまけに裁いてしまったら、どうなりますか?これこそ暗黒裁判中の暗黒裁判♪だから、東山の金さんのような人がいてもらっては困るのです♪

マゲ『(笑)』

ところが日本人は、よほど『お上』を尊敬していると見えて、今でも検察官は悪を追求する善玉だと信じて疑わない♪遠山の金さんと検察官は一緒だと思っている♪

時代劇では、遠山の金さんも銭形平次も根っからの正義感で、間違った事は1つもしないことになっていますが、近代の裁判では要するに『検察官や刑事にろくなヤツはいない。国家権力を背中にしょっている連中は何をしでかすかわからない』と考えるんだ♪

国家権力を持ってすれば、どんな証拠でもでっちあげられるし、拷問にかけて嘘の自白を引き出すことだって簡単にできる♪そこまで意図的でないにしろ、誤認逮捕等はしょっちゅう行われているに違いないと考えるのが近代裁判なのだ♪

言うなれば検察=性悪説が近代刑事裁判の大前提♪国家は非常に強大な権力を持っているのだから、その権力の横暴から被告を守らなければならないと言うわけなのだ♪

だから刑事裁判では検察側に一点でも落ち度があれば直ちにアウトです。少しでも法に触れる操作をしたり、手続き上のミスが1つでもあったり、真実の証明が少しでも理前ならば、検察はおまけ、被告が勝つ。鵜の目鷹の目で検察官側の落ち度がないかを調べるのが、裁判官の本来の仕事というわけだ♪

つまり、裁判官と言うのはあたかも中立で公平な存在のように思われているけれども、本質的には被告の味方であって、検事の敵なのだ♪このことがどうやら日本人には分かっていなんだな♪私が『裁判で裁かれるのは、検察官。真実を探求するなんて二の次』と言ったのは、こういう意味だったんだ♪

マゲ『なるほど。マゲが思っていた裁判のイメージとは全然違いますね。』

さて、そこで刑事訴訟法の話に戻るのだけれども、おそらくマゲは刑事訴訟法というのは刑法の付属品みたいなものだと思っているだろう♪しかしそれは大変な誤解なのだ♪

刑事訴訟法は刑法よりも大切な法律なのだ♪なぜなら、この法律は刑事裁判において検事を始めとする、すべての行政権力を縛るルールになるからなのだ♪。この刑事訴訟法にいささかでも触れる行為を検事などが行えば、直ちに被告は無罪になる。そう考えてもらいたい♪

もちろん検察側が守らなければならない法律は、このほかにもたくさんある♪法律はいろんな形で検察側を縛りに縛っているから、その法律の上に少しでも触れることがないように検察側は行動しなければならない♪これを法律の言葉で・・

『デュー・プロセス』の原則

という♪

日本語に訳すと『適法手続き』と言う意味です♪行政権力は徹底的に法律を守らなければならないのだ♪それが少しでもできていなければ裁判では被告が無罪放免になるのです♪

このデュー・プロセスの原則が徹底しているのが、アメリカだ♪アメリカの法廷小説が面白いのも、検事や警察があくまでも適法手続きで行動しなければならないという制約があるからなんだな♪刑事や検察官がスーパー・マンにならないからかえって小説も面白くなるんだ♪そこが日本の遠山の金さんと全然違うところなんだよ♪

※現在執筆途中です

【参考文献】『痛快!憲法学』小室直樹著 (集英社)

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