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フジリュー「封神演義」申公豹の思い出がノベライズによって甦った回
飲食をする申公豹がいる、とだけ聞いて速攻で「封神演義」のノベライズを入手した。藤崎竜先生の「封神演義」である。
※以下、藤崎竜「封神演義」・吉上亮「封神演義 導なき道へ」(小説版)のネタバレあり。コミックスが手元になく、〇十年前の記憶を頼りに書いているため正確性は皆無の思い出語りです。
「封神演義」の連載時、私は中高時代を過ごしていた。おりしもインターネット黎明期、掲示板で毎週ファンが吠えたけっていたのを覚えている。みんな漢字変換に苦労していた。楊戩とか。今パッと変換できたことに感動している。
ジャンプを購読していなかった私は、フジリュー版「封神演義」と本屋で出会った。忘れもしない、第3巻。申公豹の表紙。https://amzn.asia/d/dNzVGK8
「このマンガは読まねばならない」。雷に打たれたように感じた。既に雷公鞭の餌食となっていた。
「ハーメルンのバイオリン弾き」のリュートのキャラデザがめちゃくちゃ刺さった、という話は以前した。
もう一人、キャラデザで衝撃を受けたのが、この申公豹である。なんだこのピエロは。あからさまに道化だが、ただものではない…表紙の1枚絵だけで、どれほどすごい世界が広がっているのかを想像させてくれた。
フジリュー封神は非凡な見た目のキャラばかりだったが、申公豹は別格だったように思う。一度見たら忘れられないあのピエロ衣装。アイスクリームみたいな雷公鞭。でっかいにゃんこ、黒点虎に乗って、物語のしょっぱなに太公望にぶつかってくる、「封神計画」中最大最強の道士。
そしてあの特徴的すぎる目。寄るな危険!っていうのがビシビシ伝わってくる。何かに似ている、と長年思ってきたが、このほどようやくわかった。エジプトのミイラの棺だ。ツタンカーメンだ。道理で、呪術的な何かがあると思った。
役割的には、自称・主人公のライバルであるものの、積極的にぶつかってくるというよりは傍観者。ときどきちょっかいをかけてくる謎の存在。意外と能弁だが、底を見せない……
(アニメ化の際は大方の予想通り、石田彰が担当。その事実を作っただけでも評価されてよい。アニメキャラには「石田彰キャラ」という一大ジャンルが存在するが、その中で申公豹は「スレイヤーズ」のゼロスに近い位置にいるだろう。)
この「何考えてるのかわからん」感は、キャラデザで見事に演出されていた。極端に露出度が低いのだ。手袋に帽子。体型を想像させない、ぶかぶかの衣装。肌が顔以外、一切見えない。その顔だってアレである。意外と表情豊かなのだが、仮面感はぬぐえない。「ふしぎ遊戯」の井宿と同じタイプのフレキシブルな仮面であってもおかしくない。(あれは厚化粧なのか?どーなんですか!?)
そして基本黒点虎に騎乗しているので、まともに地面に立ってる描写すらレアであり、誰かと並んだりもほぼしないので、背丈もはっきりしない。飲み食いや、寝るなどの生命維持活動をしている姿が想像できない。第1話で一筋の血を流すが、あれはむしろ「このひとメカじゃないよ生き物だよ」アピールでしかなかった気がする。フジリュー先生は意識的にそのへん描写をコントロールしたのだろうか。天才の所業である。
最初は描かれていたでかい靴(封神演義みんな靴が巨大)も、途中から描かれなくなり、ズボンの裾が垂れ下がるのみとなる。地に足をつけない描写が徹底している。「浮世離れ」の例示イラストとして用いるべきだ。
(なお、序盤で太公望を雨の中迎えたシーンは珍しく地面に足をつけているが、トトロ感が強く、謎のかわいげがある)
物語の最初と最後が、申公豹と太公望が対峙するシーンとなっており、一種の円環構造をなしている。様式美とでもいうのか。私はとっても好きです。
吉上亮氏によるノベライズを読んだ。おお、確かに申公豹が飲食している…!! なんてこった列車に乗っているだと……!? 内容については、昔読んだけどあんま覚えてねえ、という適当ファンが読むとよい復習となった。機会があれば再履修したいマンガの一つである。
ちなみに、私は申公豹から入って、終盤は楊戩によろめいた。ギャップのあるキャラが好きなんだな、やっぱり。ノベライズには楊戩も重要な役で出てくるので未チェックの楊戩ファンがいたらおすすめしておきたい。