note40本目 Bible Gatewayが英語学習にうってつけな件
教会で礼拝通訳をしている、と以前お話ししました。
通訳の参考にBible Gatewayを使っているよ、とも。
このnoteでは、クリスチャンでなくても、聖書に抵抗さえなければBible Gatewayはめちゃくちゃ英語の勉強によい、という話をします。
聖書の文章は多くの人(十億単位)に長く読まれる(数百年)ことを前提として翻訳されており、したがって極めて質が高い。
その高品質な英文を何十種類も、無料で読むことができるBible Gatewayはたいへん優れた英語学習教材になりえるのです。
なお、他にも類似のオンライン聖書サイト・アプリは多数あるので、ここでは私が使っているからというだけでBible Gatewayのお話しをします。
https://note.com/tyabudou/n/n1b9b25c5e319
noteに投稿しはじめてから3カ月がたとうとしています。
そこで気づいたのは、
「私ってなんでも横に並べて読むのが好きなんだ!?」ということでした……
「聖闘士星矢」は文庫版・ジャンプコミックスを並べて比較し、さらには連載時のジャンプを求めて国会図書館にまで足を運ぶ始末。
ミヒャエル・エンデの「鏡のなかの鏡」は日本語・英語・ドイツ語3冊を並べて(ドイツ語はほんの一部ですが)読む。
そしてBible Gateway。礼拝通訳の事前準備のために、聖書朗読の箇所を複数の英語版で読むという……
なんというわかりやすい性癖。横に並べて読む。わかりやすくも謎の習性。
Bible Gatewayとはなんぞや
茶ぶどうの謎の習性はともかく。本題に入りましょう。
Bible Gatewayとは、70か国語以上による200以上のバージョンの聖書を無料で読めるサイトです。特に英語は豊富で、60種類以上あります。音声つきバージョンも多数あり。
つまり、同じ内容を表す違った言い回しをたくさん参照できるんです!!
こんな贅沢ができるのは聖書くらいのものではないでしょうか。
英語を学びたい人はもちろん、他言語・多言語を学びたい人はぜひBible Gatewayをのぞいてみてください。
英文の言い換え問題はめっちゃ実用的
そもそも、「同じ内容を表す違った言い回し」を知ることがそんなに大事か? 一つ知ってりゃいいじゃん? という話もあるかなと思います。
受験勉強で「言い換えなさい」という問題に苦しめられてきた方もいらっしゃるでしょう。授業でのリテリング活動とか。テキストの英文を別の言い方で表しなさい、という。知るか!
でも、アレ実はめちゃくちゃ大事。実用的。
礼拝通訳やりはじめて痛感したことの一つは、「私、同じ言葉ばかり使ってるやん!?」でした。
英語は言い換えが好きな言語なんです。同じ語彙・フレーズばかり言ってると、なんかね……貧しいというか幼稚に響いて、自分で悲しくなってきます。
礼拝通訳なんかしない人が大半でしょうが、英検はいかがでしょうか。二次試験スピーキング、話すときに同じ語・フレーズの繰り返しより、言い換えができた方が絶対高評価です。
試験はともかく、英会話などでも頭に浮かんできた日本語に相当する英語がぱっと出てこないときがありますよね。そういうときに「言い換え力」がものを言います。
言い換えは語彙単位のこともあれば、文章単位だったり、1文で考えていたものを2文以上に分割したり、いろんなパターンがあります。様々な例にふれて「その手もあったか!」と学ぶことで、自分でもうまいこと言い換えられるようになったりします。
私の礼拝通訳の場合、聖書朗読の箇所をBible Gatewayで検索し、5種類以上読みます。同じ内容のはずなのに、こんなに色々な言い方があるんだ! と毎回驚かされます。
文章例~マタイ18章より(問題つき)
では試しに、マタイ18章1~5節を複数の英語版で見てみましょう。
「子どものようにならなければ天国には入れません」という箇所です。
せっかくなので問題を出します(悪癖)。よろしければ考えてみてください。
なお、Bible Gatewayには日本語版が現状(2023年2月)1つだけ、Japanese Living Bibleのみです……
私が通っている教会がつかっている聖書「新改訳2017」の訳の方が英語各種訳に近いので、日本語はそちらを使用します。
マタイ18:1
NKJVは「欽定訳聖書」King James Versionの「現代語」版です。とはいえ1979年のものらしい…… “then”の使い方になんとなく時代が感じられる気もします。でも2020年代に生きる私たちにもわかりやすい英語ですよね。
では他の訳はいかに?
Easy-to-Read Versionは特に学習者におすすめです。元々、耳の聞こえない(日常、手話で会話をしている)人用に読みやすい聖書を、という趣旨で作られた聖書らしく、かなりシンプルな語彙で訳されています。
さて、空欄1は何が入りますか? disciplesの類義語です。fから始まります。(答えはちょい下)
こちらは異色の翻訳。この1文だけでは伝わらないかもしれませんが、伝統的な訳を大きく離れて、口語もガンガン用いていくスタイルです。どうも厳密には「翻訳」ではないらしい。聖書って古臭い、今の私たちには関係ない、というイメージを払拭する狙いがあるようです。
弟子たちの質問が他の訳にはない形になっています。
今回、9種類(中途半端だな)を見て、Living Bibleだけが「間接話法」でした。
答え
1: followers 2 rank
マタイ18:2
いいですねー、in the midst ofが光ってますね(笑)
分詞構文で来ましたか。「have A 原形」を使用。空欄3は中学校で習う英単語です。
6~12歳の子ども用に訳された聖書。Easy-to-Read Version同様、ぜひ参照したい訳です。
他が1文で訳したところを、2文に分けていますね。「1文だから1文で翻訳・通訳するものだ」という思い込みから解放してくれます。
なお、standは他動詞「立たせる」。意外とこの用法は日本では習わないかも?
ERVもICBも「弟子たち」がdisciplesではなくfollowersなのは興味深いです。単語の難易度的にfollowersの方が易しいんでしょうね。
答え
3:among
マタイ18:3
以前の新改訳では「向きを変えて」の部分は「悔い改めて」でした。オリジナルの直訳が「向きを変えて」だそうです。NKJVはconverted。
neverと同義のby no means もスッと出てくるといいですね。
おお、このバージョンは直訳調でturn your lives around「人生の向きを変えて」なんですね!
unlessはif~not。否定はdefinitely not、これも素敵です。
1文のセリフがなんと3文に分かれている(笑)
「向きを変えて、悔い改めて」はシンプルにchangeに。シンプルな訳を見ると、「あっ、この言い方でいいんだ!」とうれしくなります。与えられた日本語から考えると和英辞書を引くような思考になっちゃいがちですが、シンプルな表現を模索する習慣もつけたいところです。
来たー!! これですよThe Messsageは。なんか熱量高い。once and for allとまで言われちゃう。すごいね、天国を目にすることすらできない、とは。
return to square one!? なんやそれ、と驚きましたが、「振り出しに戻る、スタート地点に戻る」の意味のようですね。「おまえらみんな幼稚園から出直してこい」っておっしゃってますねー(やめろ)
ほかの訳では「まことに」をTrulyと訳していたりします。Trulyという語を見ると聖書っぽい、と感じます。
答え
4:assure
5:truth
マタイ18:4
簡にして要を得た英文。ピシッと決まってますね。多くのバージョンがこれに近い形になっていますが、Thereforeは抜いているものが多いようです。
なるほど、whoeverを使わない手があったか。動詞のhumbleを採用せず、make A humbleとしているのもなるほど。
The Messageは挿入句が多いんだな。難易度はだから低くない。口語の難しさもありますし。多様な表現に触れたい人向けでしょう。あとやっぱりイキイキして感じられますね。ここでは「子どものように」の中身を言ってくれてます。simple and elementalかー。
マタイ18:5
だいぶ長くなったので一つだけ引用。
「受け入れる」には3種あり、receiveのほかにacceptとwelcomeが見られました。
ERVもこの節はWhoeverを使用していて、Whoeverを使わないという縛りがあるわけではなさそうです。
雰囲気別 おすすめの英語版
マタイ18章1~5節をいくつかのバージョンで見てみました。
英語学習としては、まずはこのくらいの長さが適当かと思います。これ以上範囲を広げると、把握しづらいかもしれないので。
最後に、「英語の聖書多すぎ! どれとどれを選べばいいの?」というお話し。
私もまだ全部のバージョンを開いていないのですが、独断と偏見でおすすめするのは以下です。
伝統的:New King James Version・English Standard Version・New American Standard Bible
簡単:Easy-to-Read Bible ・International Children's Bible
口語的:Living Bible・New Living Translation
独自路線:The Message
各項目から1つずつ選んでいけば、けっこう違う言い方が見られるはずです。
こんなのもあります。
言い換え例つき:Amplified Bible・Expanded Bible
!?
「repent →っていうのはつまりchange your inner self(=your old way of thinking)とかlive changed livesってことだよ」
みたいに、言い換えがそこに書いてある、意味内容を解釈・詳述してくれてるんです。
慣れないと読みにくいですが、便利といえば便利ですね。
さて長々と失礼いたしました。
世の中にはeffectiveでefficientな英語学習法があふれかえっており、その中で聖書を教材にしたものなんて誰が顧みるのか、と思わなくもありませんが、これは英語学習法案内でありながら、あわよくばどなたかが聖書への扉を開くきっかけになるかも、という思いで書きました。
あと、Bible Gatewayをこの分量で(質はともかく)紹介している記事はnote広しといえど今のところこれだけだと思います(笑)