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初めて出逢った時からピンときて、この人が運命の人……と感じる人がいると聞く。
しかし、私は本当に最初の出逢いから恋愛的な何かを全く感じなかった。
ただ、安心して話ができる人だと感じただけ…。
毎日顔を合わせる中でも、何か特別の感情が働く訳ではなく、何気ない会話をするだけの存在だった、彼。
…しかし、出逢って1ヶ月半を過ぎた頃からであろうか。
相手が好意的な言動を滲ませるようになってきた。
しかし、それが嫌悪ではなく、むしろ、嬉しい感情に浸る自分がいた。
「……まさか、だったな…」
もう、"恋" なんてするとは思っていなかった。
他にも毎日顔を合わせて話をする存在はたくさんいるのに…、なぜ、彼をそのように想ってしまったのか、わからない。
外見が好みだったか?
…いや、全く好みではない。
しかし、今では格好いいな…と思ってしまっている。
声が好みか?
…いや、これも該当しない。
むしろ、苦手な声色。
しかし、今は好きになっている。
服装はどうか?
……あまりにも個性が強くて、私好みではなかった、が、今では彼に似合っているから素敵だと感じる。
言葉使いは?
…とても丁寧で、親切で優しい。
しかし、言葉使いだけで私の恋愛感情は動かない。
私の好みとは、だいぶかけはなれている彼。でも、好きになってしまった。
今では、私に会うと、頬を少し染めて話す姿が何とも微笑ましく、かわいい。
先日控えめに、
「あの…、次のお休みに一緒にお出かけしませんか?
……あっ、せっかくの休日でお出かけなんてしたら疲れてしまいますよね……すみません…!!」
そう言ってあたふたしている彼を見ると、とても愛おしくなってしまう。
私よりも8つも年下であるからであろうか。
身長は私より16cmも高いのに、小動物のように見えてしまう。
私は、一度離婚を経験している。
もう、"恋" なんてするとは思っていなかった。心のどこかで、独りで残りの生涯を生きていこう…と、決めていた。
この先、彼とどんな未来が待っているかなんて、まだわからない。
焦らずゆっくり、流れに身を任せていくのも悪くない…そう思えた。
(終)