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黄色に惚れた夜

祭が終わった。怒涛の祭りだった。
楽しみで楽しかった本祭が終わった。

幸いにも天候に恵まれた。
綺麗な冬空のもと響かせた笑い声、仕事に走る姿、屋台の香り。そのどれもが間違いなく「64th本祭」だった。

3年生は反省や引き継ぎを終えて引退しちゃうけど、本祭が終わった今はただ第65回本祭成功を祈ってる。
また皆で創る文化祭。
そんな日がちかいと良いな。
そんなことを思いながら。

振り返れば、一瞬一瞬が素敵な瞬間だった。
澄んだ空気を胸いっぱいに吸ったとき。
お客さんを全力で誘導するみんなといるとき。
ステージの音を背に受けながら校内を歩き回ったとき。
小さい子が私の作ったわたあめを笑顔で受け取ってくれたとき。

眠い体に染み渡る、香り高いジャスミン茶の味。
青と白の色たちが眩しく目に刺すあの光。
心臓に呼応する音。
隣で笑うみんな。
声、音、色、香り、表情、どれも私の心の網膜に刻みついて離れない。
離さないように、一瞬一瞬を噛み締めてみてた。
一瞬は一生だと言うけれど、私の中で一瞬は一瞬であってずっと鮮明に覚えてることはきっと難しい。でも私には言葉がある。

みんなが好きだと言ってくれた私の言葉は、適所で生きてくれたのかな。
私が私の感動を忘れないように、ここに言葉を閉じ込めよう。

終わってしまった寂しさはまだ消えないけれど、築き上げた人たちはずっと残ってる。
周りを見渡せば、私の近くにいてくれた。

今日はいい日だった。
みんなは私が想像しているよりもずっと、たくましくて優しくて、同じ「人間」だった。

花束をもらった。
人からお花をもらうのはいつぶりだろう。

帰り道、心をぽかぽかさせながらお花とプレゼントを抱きかかえる。
ちらりと下を向くと、黄色とオレンジのお花たちが笑ってる。
私をイメージして黄色とオレンジでオーダーしてくれたんだって。

黄色い花に街灯が灯る。
その瞬間、視界が全て黄色に包まれた。
私は好きな色と聞かれたら「青」と答えてきたけれど
その瞬間、黄色に惚れてしまった。
眩しさに心奪われてしまった。

家に帰る。
お花の前でみんなにもらったお手紙を読む。
もう泣かないと思ってたけど、言葉ひとつひとつが嬉しくて、愛おしくて、儚く寂しくて。
こぼれた涙は、前のお花を映してて。
その雫が黄色いといいな。
そう思った夜だった。

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