05 頭と体
頭と体がまったく別物だと思い込んだのは、一体いつからだったのだろう。思うに、脳に筋肉はない、と知ったとき、または「頭脳労働と肉体労働」という区分け言葉を知ったときだ。
脳に筋肉はない。
この事実を知ったとき、わたしは脳を哀れんだ。
一人ではどこにも行けないんだね、可哀そう、じゃあわたしが連れていってあげるよ。
そんな気分で脳を頭に載せて、歩きだす。
可哀そうって、可哀そうと思っているのも思われているのも、脳なのに。
しかし脳に憐憫は不要。
脳は、イメージを食ってボディーを生み、そして歩きだす。
走りだす。歌いだす。踊りだす。
ずっと座って本を読んでいても、もの凄くお腹が空くのは、脳内の肉体が、本の中の南極や火星やパラレルワールドに行っているからだ。
ニューヨークも、脳内のニューヨークと脳外のニューヨークと実は二つあって、我々は体を動かしても、動かさなくても、ニューヨークに行ける。
そして、どちらのニューヨークに行っても、同じだけ、疲れる。
体より頭のほうが距離を稼ぐから、次第に頭は重くなる。
目が開かなくなったら、それが睡眠のタイミング。
我々は目を閉じ夢を見て、脳内の超過分を雲散霧消して、起きるまでに無かったことにするのだ。
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