ブックレビュー『秘蔵古写真 江戸』(山川出版社)
いわゆる古写真本ですが、「史料」として使うことを意識して編集されている気がします。
有名写真家の作品に加えて、とある2冊の当時の「アルバム」に掲載されていた写真を集めているのですが、冒頭にそのアルバム原本の写真が載っています。古い本の外観とその中身であるページの様子を見てから本編の写真を見ると、そこに掲載されている写真が「時代を越えてきた尊いものなのだ」という感慨が、より感じられるというか、深みが増すというか。
本編の写真それぞれも、そのアルバム2冊『大日本東京寫眞名所一覧表』と『大日本全国名所一覧寫眞帖』のどちらに収録されている写真なのかが記載されていて、元本にあたれるようになっていますし、特に『大日本全国名所一覧寫眞帖』はその来歴から、撮影時期が「この年以前」というのがはっきりと分かるので、その意味からも貴重なのだそうです。
文献史学における絵画・写真史料として、研究に活用できる本でもあるのだろうなと思います。
本編の写真には、説明文もしっかりと掲載されていて、読み応えもあります。
当時(明治初期)の行政区分である「皇城」と「東京15区、6郡」の順で分類してあり、現在も面影を残している場所があったり、「当時は何も無いなー!」という印象の場所があったり、眺めていると時間を忘れてしまいます。
時々カラー彩色された写真もあり、説明文を読むと「手彩色」と書いてあります。最近、「白黒映像をカラー化」みたいな話をよくみかけるのでコレもそんなカンジかなと思ったら、いやいや、写真が撮られた時にすでに「写真に色を付ける」ということをしていた写真がいくつもあるんですね。当時の色がどんな雰囲気だったのかは、こういった資料を元にしているんだろうなと思ってみたり。
それと、各写真に「画像 鶏卵紙 55×85mm」のように付記してあり、「鶏卵紙ってなんだ?」と思って検索してみたら、紙に卵白を付けてから硫酸銀水溶液なるものを付けるようです。卵白を付けてから保存はできるけど、硫酸銀水溶液を付けたらわりとすぐに使用しないといけないようで、当時の写真撮影の手間のかかり具合に思いを馳せてしまいます。
貴重だな!寫眞!!
そんな貴重な当時の写真の数々を見られる古写真集。
現在、いろんな種類の本が出版されてますので、それぞれの本の特徴も、今後見比べてみたいと思います。