イギリスのランニング文化
主要な大会
日本以外でランニングが人気のある国はどこかと聞かれると、アメリカやケニアが思い浮かぶかもしれない。だが、案外イギリスも日本に負けず劣らずランニングが盛んに行われている。6大大会の一つであるロンドンマラソンを始めとして年中5KMからマラソンの大会が多く開催されている。そんな様々な大会の中でもイギリスらしさが一番反映されているのがクロスカントリーとPark run(https://www.parkrun.jp/)だ。
クロスカントリー
クロスカントリーランニングは日本だと不整地で走る、もしくは高低差があるランニングのことを示す場合が多い。しかしイギリスは前述の2つは前提条件として、泥道や滑りやすいところがコースの一部として使われる。これはイギリスの冬が雨の多い季節で、主要なクロスカントリーの大会の多くがこの時期に開催されることによる。もう少しイギリスのクロスカントリーの特異性を説明するために、一番ハイレベルな2つの大会のコースを見ていく。
Liverpool Cross Challenge
(https://www.youtube.com/watch?v=KrIsK-yQYok&t=847s&ab_channel=BritishAthleticsTV)
こちらは2023年11月25日に行われたリバプール・クロスチャレンジという大会だ。11歳以下の部門から成人の部門まで細かくレースが分けられている。この大会はヨーロピアンクロスカントリー(U20, U23, それ以上のカテゴリーがある)のイギリス代表選手を選考する大会としても使われており、例年1〜6位の選手が自動的に内定する。ただ、前述の大会が23歳以下の部門とそれ以上に分けられていることから、例えば全体の順位では14位でも、U23の中で4位に入っていればU23の代表選手に選ばれる。また、だれでも参加記録無しで12ポンド程の参加費を払えば出場できるので、下記の写真(2022のもの)のように大人数でのレースになる。
イギリスは欧州クロスカントリー選手権で例年優勝争いに絡み、2023年度の大会では女子が23歳以上、U23, U20全ての部門で団体優勝し、男子も23歳以上では4位、U23で優勝、U20 は2位につけている。このことからイギリスがヨーロッパで一番陸上長距離が強いと言っても過言ではないだろう。また、Liverpool cross country challenge は坂の上り下りが全くなかったが、欧州クロスカントリー選手権は例年開催場所が変わるものの、今年に限らず大きい坂がコースの何処かに必ずある。
BUCS (全英大学クロスカントリー選手権)
欧米の学生スポーツは基本的に年間3つほどのシーズンに分けられ、秋がクロスカントリー(5~10Km)、春が陸上競技(トラック&フィールド)となる。また大学になると冬は200mトラックでのインドアの試合が中心だ。この大学クロスカントリー選手権は毎年2月に開かれ、Long race (10Km)とShort race (8Km)に分けられる。Long race は各大学6人までしかエントリーできず、例年250人ほどが走る(40校ほど)。そしてチームの上位4人の個人順位の合計でチーム順位が決まる。
2023年度の1位は前述のMahamed Mahamed(12月にバレンシアマラソンを2:08:42),2位はMatthew Stoiner (1500m を7月に1500m を3:31.30)3位はJoe Wigfield (7・8月に1500mを3:37.54, 5000mを13:46.83)。昨年度はLoughborough大学が1位、Birmingham大学が2位、3位には2023年世界大学ランキング2位にも入ったCambridge大学が続いた。補足として、イギリスの大学で陸上長距離のために奨学金を出す大学の数は数校に限られ、優秀な高校生の一部は陸上競技のためにアメリカの大学に進学する。
Park run
大きな公園が地方のみならずロンドンなどの大都市にもいくつもあるイギリスでは毎週土曜日の朝九時にPark run という5Kmのレースが開催される。国内で1200箇所あり、ボランティアで全て運営されているので、申込みなしで毎週無料で参加できる。またタイムもしっかり秒単位で計測され、レース後に自身のバーコードをスキャンするだけでタイムが記録される。
全てのコースが実際に計測されているので、コミュニティイベントながらも「公認」の記録となる。ただ、コースは多岐にわたり Hampstead Heath(https://www.parkrun.org.uk/hampsteadheath/) のように登りがトータルで110mを超えるレースや、道の大部分が砂浜のコースもある。場所によってはレベルの高い大規模なレースにもなり、Dulwich (https://www.parkrun.org.uk/dulwich/results/549/) では600人ほどが参加して110人が20分以下、1位の人が15分13秒で走っている。(過去の最高記録は13分58秒)。ただ、数ある公園の中でもBushy parkがpark run 発祥の地として認識されており、2022世界陸上1500mチャンピオンのJake Wightmanもたまに練習の一貫として参加する。