Day2 メキシコレポート
重い体
テントの壁をライトの明かりが照らす。光の筋は一点に集中するのではなく、あちこちを移動していた。時刻は午前5時をすぎたばかりで外は真っ暗だ。1時間後には2日目のレースが始まる。同じテントで一夜を明かした選手たちがヘッドライトの明かりを頼りにスタートに向けて準備を整えていた。せわしなく動き回るライトを見ながら、僕は寝袋の中でじっとしている。 寝起きから体の調子がよくなかった。キャンプ地は標高2500m近くだったが、夜間も寒さを感じることなく、ぐっすりと眠ることができた。前夜まではしっかり食事も取れていたのに、起きてからは胃が重い。カロリーメイトを水で流し込んで、そのまま1時間ほど横になって今に至っている。それでもよくなる気配はない。
しっかりとした朝食を取ることはあきらめ、重い上体を起こして荷物をまとめる。
荷物を持ってテントの外へ。歩いて体を暖めようとしても、倦怠感が薄れることなく残っている。ふらふらしているところに「おはようございます」と日本語で声をかけられた。振り向いた先にいたのは、日本から来たテレビの撮影チームのひとりだった。体調を聞かれ、走り出さないとなんとも言えないと、あいまいな答えに終始する。よくなる気配はないものの、望みは捨てたくない。だからといって、普段通りに走ることも怪しい。
白でもなく、黒でもない、もやもやとした気持ちは不安の塊なのだろうか。会話は上の空で、集中力も欠いている。白黒はっきりしない思考は、コーヒーに牛乳を注いで、できあがったあいまいな色のカフェオレとして、頭の中に映像が浮かんでいた。
飲みたいと思ったわけでもないのに、カフェオレを想像していただけで胃がまた重く感じられた。この状態で數十分後にはスタートを切ることになる。弱気になるまいとするも、胃も、頭も痛くなってきた。
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