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草原に持っていったもの
前回に続き、NHK BS「GREAT RACE」の放送に合わせて、モンゴルでの話題を再びこする。1週間のステージレースで、どんなものを持っていくのか。ザックの中身を大放出。日常で使えるライフハックも盛りだくさんのはず。知らんけど。
出場したレース「GOBI MARCH」では、1週間分の食料、ウェア、寝袋など大会期間中に必要なものをすべて背負って走る。距離は250km、毎日スタートとゴールを繰り返し、6ステージを走破する。
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当然のことながら、軽量であるほど疲労は少なく、スピードが上がる。早くゴールできれば、体を休められる時間が長くなる。完走を目指す上で、「速さは武器、軽量化は選手のたしなみ」と言われる所以である。格言めいた言い回しだが、思いつきで書いただけだ。
やや脱線した。話を戻そう。
今回は軽量化して、装備を6.25kgまで絞った。受付時の測定で5kg台は皆無だったので、かなり軽い部類だろう。
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装備の中でもっともウエイトが大きいのは食料だ。大会側からの提供はなく、スタート地点に14,000kcal以上を携行していくことが義務になっている。それ以外は自由なので、食料はもっとも工夫しやすい装備でもある。
食料を選ぶうえで重視するのは4点。重さ、入手しやすさ、食べやすさ、栄養だ。
重さに関しては、1g当たりのカロリーが多いものを選んでいく。基本的に水分量の少ないものだ。主食はカレー飯とチキンラーメン、補食にカロリーメイトとソイジョイ、柿の種。食事は朝夕の2食で、走っている間は、10~20kmごとにカロリーメイトを1本食べたり、食べなかったり。
固形物だけでなく、粉物も各種取りそろえた。
粉末スープ、ポカリスエットの粉末、プロテイン、青汁だ。青汁を除けば、軽さの割にそれなりのカロリーが取れる。日清食品と大塚製薬に偏っているのは個人的な好みのためだ。提供されているわけではない。
朝はチキンラーメン。消化しやすく、寝坊してもお湯で戻さずに食べられる。カレー飯は走った後、香辛料のおかげで疲れていても口にしやすい。
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軽量化する工夫として、個包装をバラして、ジップロックにまとめる。主食にしていたカレー飯は、3種類の味をブレンド。カレールーは混ぜた方がおいしいこともあるから、問題ないだろう。
地道な作業を終えると100gほど軽くなった。重さにほとんど影響なさそうに見えるが、これがバカにならない。たかだか100gとはいえ、カロリーメイトだと5本分、500kcalになるのだ。これだけで、少なくとも50kmは走れる計算である。
軽量化の一環で、ザックのヒモ類や、レース中に使わないパーツをカットした。寝具にいたっては、自動で軽量化されていた。10年近く使っている寝袋はたえず羽毛が抜け落ちてくるのだ。日々進化するウルトラライトな寝袋である。保温性も日々失われているのだろうが、体が慣れていけば、プラマイゼロのはずだ。
就寝時に敷くマットは100円ショップで仕入れた銀色マット。本来は車の遮光用に使うやつだ。いささか薄いが寝心地には問題ない。冷え込みが厳しい夜についても事前に想定しておく。そんな時は、食料の入ったジップロックをマットに転用する。カロリーメイトが粉砕されるが、消化しやすくなって好都合だ。
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価格で勝負する100円ショップは軽量化の強い味方。安さを実現するために、シンプルな機能にしたり、ギリギリまで強度を落としてくれたりと、企業努力に余念がない。多機能や頑強であるなどの付加価値は重さにつながるため、軽量化とは相性が悪いとも言える。
ささいな重量のために、アレコレと考え、頭を悩ませる。滑稽といえばそれまでだけれど、それが面白い。
大会が始まってしまえば、できることは何もない。あとはやれることをやるだけ。スタート前までに自分がやってきたことの積み重ねしか結果につながらないのだ。ほとんど無意味に思えることでも、ベストを尽くすしかない。