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メキシコレポート Day1

 メキシコでララムリと走ってきたわけですが、その模様がテレビで放送されるまで詳細を書くのは控えてほしいと言われていました。縛りがなくなったので出していきます。有料なのは読んでいただくことで応援していただき、遠征費の一部にできればいいなという思いからです。そのうち無料にするかもです。

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 池のほとり、霧が立ち込めている。午前8時のスタート、20分前からランナーは集まっているものの、まとまりはない。50人足らずしかいないが、好き勝手にやっている。何人かが集まっては熱心に話し込んでいたり、体をほぐしたり、スタートゲートの下ではララムリが記念撮影。逆側からは公式カメラマンが集合写真の撮影を呼びかけている。
 時間だけが無為に過ぎていく。池を覆っていた厚い霧がぼにゃりと晴れてきたころ、カメラマンの要望もようやく聞き入れられて、シャッターが切られた。
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 いよいよスタートかと思いきや、主催者がコースの説明を始めた。すでに8時を過ぎている。わりと時間に正確だろうと思われる英国人のサムだが、慌てる様子はない。メキシコに来たからには、メキシコ人のようにおおらかに構えているのだろうか。なかなかの強者だ。
 ゆったりと構えたサムの言葉に耳を傾ける。コースの目印となるのは、黄色のテープだという。そのほかに、矢印も設置されているから従ってほしい、色は黄、赤、緑など。口頭での説明だけで、具体的にどんな大きさのテープや矢印の看板なのかは伝えられなかった。事前に大会の概要や規則などと一緒に情報を与えられることが多いのだが、この大会ではまったくなかった。
 たかが目印ではあるが、走るにあたっては死活問題なので、あっさりとした説明に僕は多少の不安を抱いていた。コースの書かれた地図が与えられるわけでもなく、GPSが機能するかもわからないレースなのだ。仮にそうした情報を活かせるのであれば、道に多少迷ったところで、大きな問題は起きない。
 ところが目印だけ、それもどんな形のものかもわからないとなると、ひょっとすると進むことが困難になるのではないか。そんな危惧もあった。
 と言っても深刻なわけでもない。これがレースでタイムにこだわるということを除けば、道に迷って自力で戻ってくるのも楽しいものだ。なぜ間違えたのかを考えたり、どうやって傷を浅くして巻き返すのかと考えるのも、レースの醍醐味である。間違えない選手など存在しない。自分のミスをどうやって克復するか、あるいは最小限に留めるのかが大切になってくる。
 なおも説明は続く。コースの大まかな説明が終わるころには、霧がさらに薄くなり、池の輪郭がはっきりと認識できるようになっていた。視界がクリアになるのを見計らっていたかのように、スタートへのカウントダウンが始まる。
 減る数字、高まる鼓動。ゼロが告げられて一斉に飛び出した。

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