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水底のスピカ
偶然手に取った本だけれど、読んで「良かった」と思える本だった。
これを読んでわかるのは一体いつの頃だろうか。主人公と同じ高校生世代だろうか、それともその時代を過ぎた人たちだろうか。どんな本もどんな話も受け止め方はそれぞれそのタイミングごとであると思う。けれど、この題材でこの話が成り立つのは、高校生の世代でなければダメなんだろうと思う。中学生では視野が狭く、大学生、社会人になると、こうした感情は成り立たない。
子供の頃に覚えたような幼い気後れが頭をもたげたが、それを気力で組み伏せ、彼らに言った。
学校というところは何かのイベントが必ずある、運動会だったり、学園祭だったり、修学旅行だったり。なので話としてメリハリをつけやすい。そしてそのタイミングで何かが起こる。この本では五人の男女がそれぞれ色々なことを抱えている。それは普通のことであり、皆違っているのが普通であること、それを比較することに意味がないことに気が付くことを描いている。
出来事があるたび、人と関わり合うことでそこに本人が気がつき、それまでの行動が変わってゆく。この世代ならではの、目に見える成長が描かれている。五人いて、さまざまな内容を盛り込んでいるにも関わらず、読みやすくとっ散らかっていないのは、作者の力量か。
だから今、自分が一人でいないのは、奇跡なのだ。
この辺りからグッとくるところが増えてくる。
学校ってチーム戦仕様だもの。一人きりで戦うのは戦略上不利にできてる
確かにそうだと思う。
人の秘密は借金みたいなものだよ。連帯保証人になる覚悟はある?
人の秘密を聞くことはそんなに簡単なことではない。話す側にも聞く側にも覚悟がいる。
他者の感情を察知して自分も同様の感情になることを、情動伝染と言います
モブのような自分が嫌で、目に見えて何かを持っている二人を常に羨ましく思っている彼女。しかし、自身が変わるために行動する。それは歳をとるほど大きな勇気とエネルギーが必要となる。しかし、その体験をこの年齢で行うこと、気がつける人はそれから先の長い道のりにおいても大きな引き出しになると思う。
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