船出の色
ふらっと立ち寄った資生堂で、母が「これいいなあ」と指差したのはピコシリーズの限定品だった。
新作が出てるのは久しぶり(のはず)。わたしも去年いくつか口紅を購入していた。
使い切れた試しのない化粧品を小さいサイズで出してくれるのは、とてもありがたい。しかも資生堂なので品質は保証されたも同然。お値段も可愛らしい。最高。(去年の口紅まだ使い切ってないけど。)
母がタッチアップしてもらっている側で並んだ商品を見つめていると、ふと一つに目が止まった。ブルーシルバーのような色のネイルエナメル。やっぱりわたしはブルーがすきらしい。だけど、こんなブルーはネイルといえど、挑戦したことのない色だった。
「もしよかったら塗ってみてください、すぐに乾きますので」
美容部員さんにそう言われ、遠慮なく色を爪に滑らせた。「わ、一回塗りで発色めっちゃいい」あっという間に左手薬指の爪がブルーシルバーに染まった。
思っていたよりいいかもしれない。持っていない色だし、ちょっと欲しくなってきた。
「色の名前、かわいいなあ」
ピコは色の名前が可愛い。そういえばこのネイルエナメルの色はなんだろう。見つけた時に、はっとした。
“船出”
もう、買わないといけない気がした。単純だけど、わたしのためにあるような色だと思った。
あまり日常的に使える色ではないけれど、この色を爪に纏って、わたしはこの春、船出を迎えよう。
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