ワインレッドのランドセル
この季節になると、小学生の頃お世話になったランドセルを思い出す。
わたしが小学生の頃は、変わった色のランドセルは少なくて。その頃から人と同じが嫌だったわたしのランドセルの色は、当時珍しいワインレッドだった。深い赤のような、少しピンクっぽいような色がお気に入りだった。
背負わなくなっても、ずっと勉強机の横にぶらさがっていた。おじいちゃんに買ってもらったものだったから、捨てにくかったというのもある。愛着はたっぷりあった。
でも、そのランドセルはもう家にはない。
8年前の東日本大震災。関西の我が家も揺れた。テレビで慌ただしく報道される現実に、同じ日本だとは思えなかった。
報道が落ち着いた数ヶ月後。母がランドセルを寄付できることをテレビで見て、わたしと弟のランドセルを寄付しようと言った。
少し、迷った。
おじいちゃんが買ってくれた、お気に入りのランドセル。身長が大きいから、背負うことを恥ずかしく思ったこともあった。それでもいつもわたしの側にあった。
母からすれば「置いといてどうするん?」ということなんだろうけど、思い出までなくなってしまいそうで寂しかった。
でも、こうも思った。
もう背負うことはないランドセル。また、誰かのお気に入りになるかもしれない。また、いつも誰かのそばに寄り添えるかもしれない。
それって、なんだか嬉しいなあ。
いま、あのランドセルは誰の家にあるんだろう。
誰かのお気に入りになっていてくれたら、嬉しい。
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