デザインはアートとは別物

こちらの記事を音声で聞きたい方はこちら

デザインは『作品』ではない

先日、ニュースか何かで高級トマトジュースのクラウドファンディングを見たんです。ああ、なるほど、こういう思いで作っててこういう商品なのかぁと見てくうちに、ちょっと違和感を感じたんです。それがボトルのラベルデザイン。他にもパンフレットみたいなのも載ってて、それを見て余計に違和感。それらのデザインの出来が悪いわけじゃなく、むしろ出来はいいんです。でもなんか違和感。
で、よくよく読んでいくと、「デザインは東京の美術学生にしてもらった」って書いてあったんです。
なるほど、違和感の正体です。
私はよく、「自分のしたデザインは自分の『作品』ではない」と言ってるんですが(おそらく世のデザイナーさんはこれ分かってくれますよね!)、このトマトジュースのデザインは『作品』として作られてる感があるんです。
あくまで、デザイナーが作るデザインは『制作事例』であって『作品』じゃないんです。ここには、アートとデザインの違いっていうのがあります。
アートっていうのは、それこそ自分が思うがまま、自分が作りたいように創り出すもので、デザインは(ここでのデザインは商業デザインのこと)、自分の知識や経験や技術をフル稼働させてクライアントの思いを形にすることです。同じクリエイティブってくくりにされがちですが全く別物です。
このトマトジュースはまさにアートで作られていて、見た目は洗練されてるけど、造り手の思いよりデザインした人の思いが勝っちゃってるなぁって感じなんです。ラベルやパンフレットで言いたいことは書いてあるんだけど、デザインだけが乖離しちゃってるって感じです。私はこのトマトジュースを開発した人間じゃないんで、実際のところ「こういう感じで出したかったら正解なんだよ」かも知れませんが、少なくとも私はそこに違和感を感じたし、あ〜こういう意図があってこうか〜、分かるけどもちょっとこういう感じの方が良かったかもな〜じゃなくて、“別物”感があるんです。デザインだけが。言ってること分かりますかね笑

絵が上手い=デザイナーではない

実はこういうことって世の中にいっぱいあって、先日「デザイン経営」について話しましたけど、デザインを良くしようと思ってデザインに疎い人が見た目だけ良くしようと、こういう自分の感性でやっちゃうアートに走る傾向がある。「知り合いに絵の上手いやつがいるから、そいつにロゴ作ってもらおう」とかはまさにそれ。発注側の感性と絵の上手いやつの感性だけでつくるヘンテコなロゴの出来上がり方がこうです。たまに奇跡的にすげーやつがあったりしますが笑
ただ、このトマトジュースをデザインした学生はおそらく優秀だと思います。アートとしてみたらめちゃめちゃいいデザインなんで。
だけど、もう一度言いますがアートとデザインは違うんです。
デザインに重要なのはクライアントの思いとそれをちゃんと形にすること。なのでデザインを発注する場合はやっぱりそれ相応の思いを持っておいた方がいいですし、デザイナーはそれを聞き出す能力が無いといいデザインは出来ないと思っています。
なので、いろんなデザインものを作ろうと考えている方、とくに事業主の方はこのあたりも踏まえてデザイナーを選んだり発注したりするといいと思います。

というわけで今日は、デザインはアートとは別物。というお話でした。

ブランド・プランナー/採用ブランディング認定ディレクター 下野

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?