ホラクラシー流「戦略」を策定した
みなさま、お疲れ様です!組織改善に努めるのんにゃんです。
今回は、ホラクラシー流「戦略」を策定したので共有したいと思います。ホラクラシーの導入を進めるにあたり、戦略の策定は後回しにすることも多いかもしれませんが、非常に大切なものなので、まだ作っていない方はぜひ参考にしてみてください。
はじめに
弊社では「ロール」の概念だけ全社導入しており、その他のホラクラシーのルールに関しては、私が所属する組織改善チームという小さなチームでのみ導入し、テスト的に運用しております。
ロールだけは全社で導入しているので、チームをまたがってロールを担っているパートナー(社員)もおり、「Aチームに所属するロールとしての仕事と、Bチームに所属するロールとしての仕事、どちらを優先させるべきだろう?」という課題をもつ人が徐々に増えてきました。
このタイミングで戦略の重要性に気がつき、今回まずは組織改善チームのみですが戦略を作成することにしました。
1. ホラクラシー流「戦略」とは?
一般的に「戦略」と聞くと、未来に対する目標を明確にし、それを実現するための手段を緻密に練ることを想像する方は多いと思います。しかし、ホラクラシー流「戦略」とは、それとはまったく異なる概念です。
ホラクラシー流「戦略」とは、刻一刻と行われる意思決定や優先順位の決定に役立つ、覚えやすい経験則(=発見的問題解決法 "heuristic" )のことです。
目的に向かって仕事を進めていく際に、AとBの方法があるがどちらの道に進むべきか、その選択をサポートするためのものなのです。
具体的な形式としては、「AよりもBを重視せよ」といった文章をいくつか作ることが推奨されています。ここで大事なのが、AとBは両者ともポジティブな内容にすることです。
片方がネガティブなもの、例えば「雑な対応はせず、丁寧に対応せよ」といった文章だと当たり前すぎて大事なものが見えてきません。そうではなくて「一人でも多くの顧客を対応するよりも、一人の顧客の満足を重視せよ」というような内容であれば、大事にすべきことがより明確になります。
このように、自分で判断する際の軸となるものが「戦略」なのです。
ここで、私が所属する組織改善チームで作った戦略をご紹介します。ちなみに、戦略は一定期間で何度も見直すことが推奨されており、弊社でも3ヶ月〜半年間くらいを目処にこの戦略を使おうと思っています。
・一律的な平等よりも、全体最適につながる個別最適を重視する
・効率さを追い求めるよりも、丁寧な正確さを重視する
・社外に向けた取り組みよりも、社内を整える
・主観的な情報よりも、客観的な仕組みやデータを収集・採用する
・急いで人を増やすよりも、仕事の自動化を優先して検討する
組織改善につながる施策を検討する時や、ツールを選定する時などに、この戦略を判断基準として使用していくことで、大きく間違った方向に進んでしまうことを防ぐことができると思います。
2. なぜ「戦略」が必要なのか
ホラクラシー流の戦略が理解されれば、なぜ必要なのかお分かりいただけたかもしれませんが、改めてご説明したいと思います。
前提として、ホラクラシーではロールに権限委譲されています。つまり、上司やリーダーに最終的な判断を仰ぐことなく、決める権利がそれぞれにあるということです。
同じ目的を有するサークル内のロールだとしても、ロール毎に異なる目的が存在しているので、達成方法の価値観がズレてしまう可能性が大いにあります。
そのズレのせいで、サークルとしての方向性がバラバラになってしまうのです(上図真ん中)。それを合わせるために、「戦略」は存在します。まとめると、サークルとロールが向かう方向の整合性を保つために「戦略」は必要なのです。
また、今回は組織戦略チーム(サークル)でのみ戦略を作成しましたが、全てのサークルで戦略ができれば、サークル間のプロジェクトの優先順位も自ずと決まってくるのです。
3. 従来の"戦略"は不要なのか
ホラクラシー流の「戦略」の重要性が分かったところで、従来の"戦略"は不要なのか説明したいと思います。
ホラクラシーの理念としては、不要だと考えられています。
理由は非常にシンプルで、未来は予測できないからです。予測できない未来について考え、緻密に計画を立てる時間があるのであれば、今の一瞬一瞬を正しい方向に導くことで目的を達成していく方が大事だ、といった考え方です。
未来のことはわからないので、本来の意味で計画することは不可能だ。
だが、これは必ずしも悪い知らせではない。
それなら、そういう限界があることを肝に命じて計画すればいいのだ。
ただし、これには度胸が要る。
ナシーム・ニコラス・タレブ(金融業界の名人)
企業のリーダーに期待されているのは、勇敢な将軍として未来を予測し、
壮大なる戦略を立案し、部隊を栄光の勝利へと導くことであり、
ただの小競り合いでも負けた途端クビになる。
よほど勇気のある経営者でない限り、この考え方に異を唱え、
未来はそもそも不確かであることを認め、予測と計画よりも
学習と適応を重視することはできない。
エリック・バインホッカー(経済学者)
例えば、会社のみんなで宝の山を目指して船旅をするとしましょう。緻密に計画を立てたとしても、現実はほとんどの確率でその通りに進むことはないでしょう。
ただ、未来を予想することが悪いということではありません。展望として未来を予測することは時に大事ですが、必ずそれを実現するのだと固執することは良くないのではないか、というホラクラシーからの提案だと思ってください。
4. ホラクラシー流「戦略」の作り方
ホラクラシーのルール通り、戦略ミーティングを行いました。2週に渡り1時間ずつかけたので、合計2時間で作成しました。
戦略ミーティングプロセスはこちら。
そのままDeepLに翻訳をお願いしたのがこちらです。
少し分かりづらく、私自身も解釈が難しかったのですが、Retrospective-c)できちんとひずみを洗い出すこと、そして戦略を作る際には抽象度を高くしすぎないことがポイントだと感じました。
例えば、「一人でも多くの顧客を対応するよりも、一人の顧客の満足を重視せよ」という戦略は「量より質」と言い換えることもできると思います。しかし、「量より質」だけだと、実際に何かを判断する際に、立ち返りづらいものになってしまうと思います。すべての判断や選択において、使えるようで使えない、ふわっとしたものに留まってしまうのです。
おわりに
ホラクラシー流の戦略とは何で、どうして必要なのかお分かりいただけましたか?実際に私のチームでも戦略ができて間もないですが、迷いが生じた時に頼りにできるものとしてすごく大切な役割を担ってくれているなと感じています。
みなさんもぜひ、ホラクラシー流「戦略」作ってみてくださいね!
それでは!