ミッションは、経営により近い立場から技術力で事業成長を牽引すること / 執行役員 サービスプロダクト本部長 穗坂インタビュー
2023年10月、株式会社TVerでは新たに「サービスプロダクト本部」が設置されました。「プロダクトの開発・運用・保守から価値を提供し続け事業成長を牽引する」というミッションを掲げ、TVerの事業成長にプロダクトの側面から貢献する組織です。
プロダクト組織、エンジニア組織は技術力向上が重要であることは前提ですが、時に「技術のための技術」を追い求めてしまうことがあります。しかしTVerでは、事業を成長させるための技術である点にこだわりを持ちたいと考え、技術組織を「サービスプロダクト本部」と名づけました。
今回は、どのようにして本部が新設がされたのか。その背景から今後の展望について、執行役員 サービスプロダクト本部 本部長の穗坂に話を聞きました。
■プロフィール
執行役員 サービスプロダクト本部 本部長:穗坂 怜
2007年、日本テレビ放送網株式会社へ入社。放送技術部門を経験後、放送・動画配信連携システムの構築・保守、放送番組の見逃し配信・ライブ配信サービスの技術を担当。2020年7月より株式会社TVerへ参画し、プロダクト戦略・エンジニア組織のマネージャーを担当。2023年10月より現職。
こだわり続けてきた、地上波番組のインターネット配信
──これまでの経歴と、TVer参画の経緯を教えてください。
私のキャリアは、2007年に日本テレビへ新卒入社したことから始まりました。テレビが好きで、学生時代の研究室でインターネットの高速化に関する研究をしていたこともあり、地上波番組をインターネットで配信するような技術を担当したいと考えたのが入社動機です。
ただ、当時はシステム開発を外部に委託していた関係もあり、私はまず放送技術部門に配属されることになりました。例えば、サッカースタジアムで行われている試合をお茶の間に届けるテレビ中継を実現するシステムを構築・運用する回線関連の仕事です。
ここでは、機器メンテナンスのために重たい計測機器を背負って雪山を登ったり、命綱をつけて東京タワーに設置された無線機器を交換したり、想像もしなかった仕事もありましたが、システム構築と運用の基礎を学ぶことができました。
その後、2014年頃からでしょうか。地上波放送と通信を連動させるインターネット配信に向き合うべきでは、という機運が日本テレビ内で高まり始めていました。これには、「入社時に思い描いていた希望を叶えるタイミングが来た」と感じ、2015年にインターネット配信に関する部門への異動を申し出ました。
そこでまず担当したのが、放送と動画配信のシステムを連動させるシステムの構築です。例えば、それまではTVer向けの動画配信用素材を物理メディアで搬入していましたが、このシステムにより物理メディアを介すことなく放送用素材から動画配信用素材への編集・搬入が可能になり、運用効率を改善することができました。
また、初めて箱根駅伝をインターネット上でライブ配信するシステムを構築したことも印象深く覚えています。
そして、2020年7月に株式会社TVerが設立されたタイミングで、日本テレビからTVerへ参画し現在に至ります。
──TVerへ移ってからは、どのようなお仕事を担当してきたのでしょうか。
TVerアプリやCMSの開発ディレクターや、放送局とのシステム連携をまず担当するようになり、2022年からは開発部門のタスクマネージャー、いわゆる部長職のような立場になりました。
2023年10月にサービスプロダクト本部が立ち上がって以降は、本部長と執行役員それぞれの立場を任せてもらっています。
サービスプロダクト本部の新設で、意思決定のスピードを加速
──サービスプロダクト本部は、どのような背景で立ち上がったのでしょうか?
もともと開発組織は、ビジネス色の強いサービス事業本部内に「プロダクトタスク」として内包されていました。それを今回、プロダクト開発に特化したサービスプロダクト本部として独立させた形です。
背景にあったのは、TVerの中長期計画の事業目標を達成するために、いかに生産性を向上させながら開発組織をスケールさせるかという課題でした。
サービス事業本部を立ち上げた際は、TVerサービスの方向性についてサービス側と技術側でしっかり目線を合わせるため、同じ本部の部門としてスタートしました。それがある程度、互いに連携しながら事業を進めてきた中で、価値観や考え方の共有が一定できたことから開発組織を切り出した流れになります。
──開発組織を独立させたことの狙いは何でしょうか。
サービス戦略と連動することを前提に、事業成長ための技術的な意思決定スピードを上げたい、という目的が大きかったです。開発組織を独立させてサービスプロダクト本部とすることで、より経営に近いところで技術的な意思決定にも影響力を持たせる狙いがありました。
また執行役員の立場から経営に対して進言する機会が生まれたことで、経営の技術的な理解がより高まってきていることを肌で感じています。
──サービスプロダクト本部は、どのようなタスクに分かれていますか?
5つのタスクに分かれて業務を推進しています。組織図を見ながら、簡単に説明したいと思います。
1. プロダクトマネジメントタスク
プロダクトマネージャーが所属し、サービス戦略に沿ってユーザに提供する価値や解決する課題を中長期的に定義し、そこに到達するまでの戦略と計画の策定、推進を担うタスクです。
2. プロダクトディレクションタスク
TVerアプリや社内用の内部的な仕組みであるCMS、リアルタイム配信やスペシャルライブ配信などの開発ディレクションや運用を担うタスクです。プロダクトマネジメントタスクとともに策定した開発項目について、優先順位付けや要件定義を行い、タスク内外の実装におけるコミュニケーションをリード、プロダクト計画の実行をする役割があります。
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3. エンジニアリングタスク
TVerのサービスを支えるバックエンド・インフラ・セキュリティエンジニアに加え、データエンジニア・データサイエンティストが所属するタスクです。タスク内外と連携をして、サービスやデータ分析基盤の安定運用とコスト最適化の面から開発・保守運用を担い、サービスの成長に必要なデータ分析も担っています。
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4. フロントエンドタスク
TVerアプリを開発するフロントエンドエンジニアが所属するタスクです。アプリ開発のスピード、品質向上を目的に内製化を推進するため2023年4月に立ち上げた部門で、iOS・Android・Web向けのフロント開発を担っています。
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5. コネクテッドTVタスク
インターネットにつながるテレビ「コネクテッドTV」向けアプリの開発及びプロモーション、アライアンスなどを担当するタスクです。注力領域でもあるコネクテッドTVにおける価値向上施策の計画と実行を担っている部門です。
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──サービスプロダクト本部は、現在何名ほどの組織なのでしょうか。
タスクごとの内訳は下記の図のとおりで、現在(2024年2月時点)では、ここに出ている数字よりも少し増えており50名弱の組織となっています。
また、TVerにはサービスプロダクト本部のほか、広告事業本部やメディアソリューション事業本部にもエンジニアがいます。本部をまたいだエンジニア組織の方針・文化形成、技術選定などの戦略については、CTOの田中が主体となった「CTO会」という場で、エンジニア部門のマネージャーやリードエンジニアが中心となりコミュニケーションを取っています。
事業成長の先にある「社会インフラ」としてのTVer
──サービスプロダクト本部の、今後の展開について教えてください。
本部で掲げるミッション「プロダクトの開発・運用・保守から価値を提供し続け事業成長を牽引する」に沿い、事業成長のための技術組織であると強く意識をしながら、メンバー全員で成果を出していける組織を目指していきたいと考えています。
そのためには「価値」という言葉が、TVerサービスにおいて何を指しているのか?ということが鍵となるでしょう。
開発ではQCD(品質・コスト・納期)やユーザー体験の向上など、様々な形の価値が存在する中で、我々は「事業成長につながっているかどうか」を軸に価値というものを捉えていきたいと思っています。
TVerの中長期目標を達成するためには非連続な事業成長が必要ですが、私たちがその推進力になるためには技術組織がスケールする仕組みを整えることが不可欠です。競争力を持つべき領域と、外部と協調して進めるべき領域を明確にし、採用や育成、外部連携により組織を強化していきたいと考えています。
──本部長として、今後TVerのあるべき姿をどう考えていますか?
中長期の事業計画を達成すべく、手段としての技術を活用することは前提にしつつ、加えて私は、TVerは今後エンタメだけではなく「情報の社会インフラ」になっていくべきではないかと考えています。
具体的には例えば、国民的に大きな関心事や国民の生命・財産に関わるような事態に対して、予定外の報道番組をリアルタイム配信する緊急対応などが挙げられます。
最近の出来事では、2024年元日の能登半島地震による災害情報配信がありました。地上波放送が番組編成を変更し報道番組を流したタイミングで、TVerも急遽配信を切り替えました。
運用としては想定外の対応になるため、その時に対応できるエンジニアがサーバーを増強したり、放送局と切り替えのタイミングを連携したり、元日で多くのメンバーが休みを取っていた中で各人が自発的に動いてくれました。
今回はベストエフォート(最善の努力を尽くす)の状況でしたが、よりスムーズに対応できるような体制・仕組みづくりを目指していきたいと考えています。
ただ、これは簡単なことではありません。これまでのTVerのサービス設計、システム設計、運用設計は「インフラ」となることを前提としていないからです。会社として目指すべき姿を明確に定義した上で、どんな手段が必要なのか、メンバーと議論し推進したいです。
「正解」を疑問視し、突破力をもってチームを動かす
──TVerの事業成長を考えた時、どのような人材がフィットすると思いますか?
TVerが掲げるミッション「テレビを開放して、もっとワクワクする未来を TVerと新しい世界を、一緒に。」に共感できることに加え、国民のインフラを目指すような社会的意義についても働くモチベーションになる方だといいですね。
また、TVerは事業的にも伸びしろが大きく、開発組織としても成長の余地がまだまだあると思っています。そのため、既存の考え方や意見を「正解」とせず、そこに対して疑問をもって突破していける力がTVerの仕事では役立つはずです。
その時に仲間を尊重し、信頼し、コミュニケーションを取りながらより良い形をチームで目指し、動かす力があるといいですよね。変化の余白が大きい組織を楽しめる方にとっては、本当に楽しい世界が待っています。
自身で苦労をしながら何かしらの変化を起こした経験や、困難な状況を突破してきた経験を持つ方には、活躍の場が待っています。そういった経験やスキルを活かし、TVerの事業成長に貢献してくださる方と一緒に働けたら嬉しいです。
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