放送業界に携わって30年。今、TVerで向き合う「正解のない」挑戦/取締役 コミュニケーション統括 兼 コンテンツ企画担当役員 瓜生インタビュー
TVerが目指すのは、テレビをアップデートし、新たな視聴体験を届けることです。このミッションに対して、新卒で日本テレビに入社し、長く制作現場に携わってきた取締役の瓜生は「視聴者の方へテレビ番組を、より広く届けられる、楽しくも大変な仕事」と語ります。
テレビ番組を制作する立場から、プラットフォームを通じて届ける立場へ。同じ放送業界でありながら担う役割が変わる中で、瓜生はTVerの事業にどのような意義と魅力を感じているのでしょうか。事業において大切にしていることや、今後の展望も含めて詳しく聞きました。
■プロフィール
取締役 コミュニケーション統括 兼 コンテンツ企画担当 :瓜生 健
1992年、日本テレビ放送網株式会社入社。『マジカル頭脳パワー!!』『速報!歌の大辞テン』『エンタの神様』、24時間テレビ『愛は地球を救う』など数々のバラエティ番組の制作・演出・企画に携わる。営業局やICTビジネス本部を経て、2023年6月にTVerへ出向し現職。
「デジタルの力で、より多くの人に番組を届けられる」期待を胸にTVerへ
——これまでの経歴を教えてください。
私は1992年に日本テレビへ入社しました。入社後すぐに制作局へ配属となり、最初の20年間はバラエティ番組の制作を中心に担当しました。
これまでにお笑い番組や音楽番組など多くの制作に関わりましたが、中でも思い出深いのは1990年から1999年まで放送された『マジカル頭脳パワー!!』ですね。番組開始当時はAD(アシスタントディレクター)だった私は、放映終了時にはディレクターとなり、まさにこの番組に育ててもらったと言っても過言ではありません。
番組内で名物企画となった連想ゲーム「マジカルバナナ」は、オフィス内での制作スタッフ同士の雑談がきっかけとなって生まれました。「わらべうたって言葉遊びが含まれていて楽しいよね」といった本当に軽い問いかけから、話が広がっていったんです。
それがまたたく間にお茶の間に広がり、電車の中で子どもたちが「マジカルバナナ」で遊ぶ様子を目にするほどになって驚きましたね。同時に、自分たちが制作したコンテンツが世の中の知らない人たちにまで届く、テレビという媒体の可能性や番組制作のおもしろさも実感しました。
テレビの先にいる視聴者の方が笑ったり泣いたりして、心から喜んでくれるような番組を作りたい。当時の体験からそう思ったことは、今でもこの仕事を続けるモチベーションになっています。
——瓜生さんは、その後さまざまな部門での仕事も経験していますよね。
2012年に営業局への異動を経て、再び制作現場へ戻り番組のプロデューサー業務を経験しました。2018年からは、デジタル領域でコンテンツを広く届ける配信事業を担当し、ICTビジネスに携わるようになりました。
2010年代後半というタイミングは、動画配信プラットフォームが急激に伸びてきた一方、地上波のテレビ放送は、持続的な成長が難しい局面を迎えていた頃だったんです。そのような状況だからこそ、私は放送局がデジタル領域に参入することに大きな期待感を抱いていました。視聴者にテレビ番組を届ける手段が広がることが、純粋に嬉しかったからです。
——「放送業界にとって大きな危機が訪れた」とネガティブに捉えるのではなく、だからこそデジタル領域で異なる届け方ができるかもしれないと考えたんですね。
そうですね。テレビ番組を制作してきた者として、むしろ制作側と視聴者がつながる接点が増えることは大歓迎でした。地上波放送をテレビ受像機を通じて見るだけでなく、これからはスマートフォンでもPCでもタブレットでも、多様な媒体による視聴方法があっていいのではないかと。
だからこそ、TVerへの出向が決まったときは胸が躍りましたね。TVerのサービス立ち上げ時に放送局の立場として関わった経験から、アサインにつながったのかもしれません。そんな「ご縁」もあって、2023年6月にTVerへやってまいりました。
さまざまなステークホルダーと協業し、サービスの成長を目指す
——現在、役員としてどのような業務範囲を担当しているのでしょうか?
メインとなるのは、2023年10月にTVer内で新設されたメディアソリューション事業本部の統括です。この事業部は、地上波放送データとTVerの配信データの両方を活用して、TVerや放送局にとっての「新しい価値」を生み出していく役割を担っています。
そのほか、放送局時代の制作経験を活かして、TVerのコンテンツ編成業務におけるアドバイスや戦略立てのサポートも行っています。
また、社外のさまざまな立場の方とのアライアンスや連携を推進するコミュニケーション戦略にも携わっています。放送局や広告会社など付き合いの長いステークホルダーだけでなく、日本各地のローカル局や総務省、官公庁とも関係性を深めていくことが大きなミッションです。同時に、サービスのさらなる成長に向けた各民間企業との事業提携なども進めています。
——担当する業務範囲もそうですが、向き合っている社外の方々も非常に幅広いのですね。
おかげさまで、TVerは大きなプラットフォームへと成長しました。今後、さらに進化するためには、パートナーの皆さまとも力を合わせて新たな試みに挑戦していく必要があります。
ただ事業提携パートナーとTVer間で利益を生み出すだけでは、意味がありません。なぜなら、TVerはコンテンツを届けるサービスであり、最終的に価値を提供したい先は配信コンテンツを見てくださる視聴者の方々だからです。このベクトルを合わせてこそ、事業提携の相乗効果が生まれると思っています。
とはいえ、協業においては様々な視点から検討するべき要素が多くあり、決して一筋縄にはいきません。現在進めている話も含めて「エンドユーザーである視聴者に対して、どのような価値を提供できるか」を軸に、関わる全員が幸せになれるような良い着地点を探っていきたいと考えています。
「テレビはオワコン」とは言わせない。コンテンツの価値を届けるために私たちができること
——TVerで、今後取り組みたいことや成し遂げたいことについて聞かせてください。
TVerのサービスをさらに大きく育てることは大前提ですが、もう少し概念的な話をすると、テレビ番組というコンテンツの価値を今までよりもさらに高めていきたいと思っています。
放送局各社では、制作現場の皆さんが日々頭を悩ませ、汗水たらしながら作品としての質を日々追求しています。
では、私たちTVerはコンテンツの価値向上にどのように貢献できるのか。それは、インターネット配信による新たな視聴体験で、まだそのテレビ番組に出会っていない人をはじめ、より多くの人々にコンテンツを届けることだと思います。
今、世間では「テレビはオワコンだ」なんて声も聞かれます。しかし、自分自身がテレビ番組の制作に長く携わってきたからこそ、このままで終わらせたくはありません。実際に、TVer上でテレビ番組を配信することで、良い影響も生まれてきているのを感じます。
——たとえば、どのような影響があったのでしょうか?
ここ数年で、ドラマ番組への注目度が高まっています。TVerの2023年10-12月期における番組再生数ランキングでも、TOP5は全てドラマ作品が占めています。
連動して、各作品がメディアで取り上げられたり、SNSなどで口コミが広がったりする様子を目にする機会も多くなりました。ドラマ番組を地上波放送だけでなく動画配信で視聴する人が増えた流れを受けて、ここ数年、民放キー局におけるドラマ放送枠も増えつつあります。
TVerでは、時間と場所を問わずに多くのテレビ番組をご覧いただけます。視聴者とテレビ番組との出会いの機会を広げることで、コンテンツをより多くの方に知ってもらい、実際に視聴していただく。そして、コンテンツの価値を実感いただく方々がどんどん増えていく。このような良い循環をますます生み出していけたら嬉しいですね。
——成長を続けるTVerでは、どのような方が活躍できると思いますか?
繰り返しになりますが、TVerはコンテンツを届けるプラットフォームです。それゆえ、やはり「テレビやエンタメが好き」という思いを持っている方は絶対に楽しめる環境だと思いますよ。
その上で、自分だけが楽しんで満足するのではなく、そのコンテンツを周りの人たちにも広めて、豊かさや幸せを伝播しようとする意欲も必要です。
私はコンテンツに携わる人間にとって大事なのは、二つの「そうぞう力」だと思っています。一つは、サービスを成長させるために何ができるかを考え、あらゆる施策・企画・機能・商品をゼロから生み出す“創造力”、つまり”クリエイティビティ”です。
もう一つは「この施策は、多くの人に楽しんでもらえるのか」「コンテンツをこのように配置にしたら、ユーザーはどう感じるか?」と、ユーザーの立場に寄り添って思いをめぐらせる“想像力”、つまり”イマジネーション”です。
TVerは、まだまだ未完成のサービスです。さらに、テクノロジーの進化に伴ってユーザーのニーズや外的環境もどんどん変化するため、一つの正解に固執しても意味がないのです。
私も「もっとテレビ番組の価値を高めるには」という問いに、30年近く向き合っています。正解がないからこそ、おもしろいとも言えますよね。一緒にベストな答えを作っていける人と出会えることを願っています。
株式会社TVerでは、一緒に働く仲間を募集しています。興味のある方は、こちらからエントリーください。
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