かつてない5局コラボドラマを実現!より多くの人々にテレビ番組との“新たな出会い”を届ける、TVerのコンテンツ戦略とは 〜/コンテンツ編成タスク 小原インタビュー
TVerでは、2023年9月に初のオリジナルドラマとなる「潜入捜査官 松下洸平」を制作・配信。在京民放5局の人気バラエティ番組が局の垣根を超えて、ひとつのドラマとコラボレーションするという、TVerならではの番組制作が実現しました。
各局のテレビ番組が集まったプラットフォームである私たちは今、さらにテレビの世界を盛り上げるべく、新たな試みにも積極的にチャレンジしている最中です。
今回は、このドラマの企画・制作をリードしたコンテンツ編成タスクの小原にインタビュー。フジテレビで数々のヒットドラマを手掛けてきた彼は、TVerでのコンテンツ企画の仕事にどのように向き合っているのでしょうか?
■プロフィール
サービス事業本部 コンテンツ編成タスク タスクマネージャー補佐:小原 一隆
2000年 、株式会社フジテレビジョン入社。連続ドラマ『鍵のかかった部屋』『失恋ショコラティエ』などの制作に携わった後、映画制作部門へ異動し『とんかつDJアゲ太郎』『ラジエーションハウス』などをプロデュース。2021年7月から株式会社TVerへ出向し現職。
ドラマ・映画制作部門からのTVer出向は「まるで異なる業界への転職」
——小原さんは、新卒で入社したフジテレビから、2021年7月にTVerへと出向しています。そもそも、なぜ放送業界を目指したのでしょうか?
学生時代から好きだったテレビドラマを「自分も作ってみたい」と思ったのが最初のきっかけです。
トレンディドラマ時代だったので、フジテレビが目立っていたというのもありますが、『古畑任三郎』や『振り返れば奴がいる』、また『踊る大捜査線』など、王道路線を狙わず、ひねりを効かせた作品の魅力に惹かれ、フジテレビへ入社したいと思いました。
入社から4年ほどは報道局に在籍し、それ以降は念願のドラマの制作部門へと異動しています。プロデューサーとして『鍵のかかった部屋』『失恋ショコラティエ』などの番組に携わり、2016年からは映画制作部門へと移りました。
このように私は制作現場にずっといたので、動画配信のことはまったく知らない状態でTVerへ出向したんです。同じテレビ番組を扱う仕事ではあるものの、まったく異なる業界へ転職したくらいのインパクトがありました。
これまでの制作現場で培ってきた考え方や慣習から頭を切り替える必要があり、最初は戸惑うことも多かったですね。
——放送局での仕事とTVerでの仕事は、どのような点に違いがあるのでしょうか?
テレビ番組を放送・配信するという点では同じように感じられるかもしれません。しかし、地上波放送の視聴者とTVerユーザーは、層が似ているようで全然違うんです。その理由は、視聴スタイルが異なることにあります。
地上波放送は、テレビを介して「ながら見」で視聴する方が多く、チャンネルを切り替えることで、偶発的にいろいろな番組に出会いやすいことが特徴です。とくに目的がなくテレビをつけている方も視聴者に含まれます。
一方TVerは、あらかじめ見たい番組が決まっていてアクセスいただくケースが大半を占める、積極視聴層を多く抱えるサービスなんです。
私自身、TVerはもちろん知っていましたし、いちユーザーとしても利用していました。ですが、いざ事業を手がける立場になると、こうしたユーザー性質の違いを正しく理解しないと、魅力的な企画をお届けできないと痛感しました。
——改めて、現在の業務内容について教えてください。
私はタスク内で、コンテンツの調達や特集企画を手がける企画チームに所属しています。
仕事の流れとしては、まず放送局各社とリレーションを取って、今後の放送内容やスケジュールなどの情報を収集します。その上で、ドラマ・バラエティ・アニメ・スポーツなど各ジャンルの様々な特集企画を立ち上げています。
TVerは、各局に提供いただいた多数のテレビ番組を抱えるプラットフォームです。それゆえ、コンテンツを調達するだけではなく、その一つひとつを埋もれさせずユーザーの方々に“出会っていただく”ための仕掛けも考えていく必要があるんです。
そのほか、TVer内で配信されている各コンテンツのアクセス数や再生回数を上げるため、タスク内の戦略チーム・編成チームと連携しながら、サービス出面上の調整も行っています。
放送局とユーザーの双方をつなぎ、テレビ番組というコンテンツの新たな楽しみ方を提供することが、私たちの役割です。
放送局が作り上げた優良なコンテンツを、いかに多くのユーザーへと届けるかが企画チームの腕の見せどころ
——企画チームが手がける具体的な施策についても教えてください。
まず、テレビの番組編成に変化のある年4回の端境期を狙って配信する、特集企画の立ち上げ・実行が大きな仕事となります。この時期は、毎週視聴していた連続ドラマやバラエティ番組の終了に伴って、ユーザーの方がTVerから離れやすくなる傾向にあります。
そこでお届けしているのが「新ドラマ特集」「俳優特集」「名作ドラマ特集」など、様々な作品を一挙にまとめた特集企画です。ユーザーの方に新たな番組を視聴するきっかけを作れたらと考えています。
また、各クールの最中には「キャンプ特集」や「ホラー特集」など、社会的に旬なトピックや季節性のある番組を集めた企画も実施しました。バラエティやアニメなど他ジャンルの番組も含め、バランスよくコンテンツを見せることを意識しています。
さらにこの2023年は、大盛り上がりをみせたバスケットボールやラグビー、バレーボールのワールドカップなど、スポーツの国際大会が目白押しの1年です。TVerでも複数の大会をライブ中継するとともに、連動した特集企画も配信しました。
——様々な企画が常に動いているんですね。先ほど「TVerサービス出面の調整」も業務のひとつだと聞きましたが、こちらはどのようなことに取り組んでいるのでしょうか?
例えば最近では、放送開始したドラマを見続けてもらうために、大きく2つの施策を行っています。
1つ目が、ドラマの第1~3話を最終回まで視聴できるように置いておくこと。通常、TVerでは見逃し配信の期間は1週間となっていますが、途中の回を視聴できなかった方にも最新話に追い付いてもらえるようにする狙いがあります。
さらに、TVer画面上で表示されるサムネイルには「1~3話&最新話を配信中!」と、わかりやすく文字を入れるのも工夫のひとつです。
それから、ドラマの放映中には、放送局各社に各話のダイジェスト動画も制作していただき、クールごとにまとめて特集配信しています。ユーザー行動を分析すると、ダイジェストを配信しておくと継続視聴につながるという結果が出たため、力を入れるようになりました。
ドラマの1~3話の配信期間延長も、ダイジェスト動画制作も、TVerにテレビ番組を提供いただく放送局各社の協力の上に成り立っています。今後も連携を深めながら、ユーザーの方に「もう1本プラス」で視聴いただくための施策を打っていけたらと考えています。
——2023年9月5日には、TVer初のオリジナルドラマとなる「潜入捜査官 松下洸平」が配信開始。在京民放5局とのコラボという新たな試みも話題を呼びました。
TVerがオリジナルドラマを制作することは放送局からすると、視聴者の可処分時間を奪われる懸念もあると思います。ですが、むしろこのドラマは「放送局各社とのコラボレーションによって、テレビ番組をさらに多くの方に届ける機会を作り出したい」と考えて企画したものです。
具体的には、ドラマ視聴者の方々に今まで見ていなかったバラエティ番組へ興味を持っていただくことを狙いとして、ドラマ×バラエティ番組のコラボレーションを実現させました。
ドラマ制作にあたっては、5局の人気バラエティ番組に制作協力を依頼しました。主演の松下さんが各番組にゲスト出演し、ドラマのストーリーに番組出演の様子が組み込まれています。
またTVerの出面には、これまで社内で蓄積してきた知見も詰め込んでいます。
サムネイルに注目を引きやすい黒と黄色をキーカラーにして枠線をつけたほか、右下部分には「約20分」と明記しました。短い時間で再生できることがわかると、視聴のハードルも下がるのではないかと考えたんです。
TVer自体は独立した会社ではあるものの、放送局および放送局が作っているコンテンツがなければ事業が成り立ちません。「TVerの再生回数が伸びれば、放送局にとってのメリットも大きい」という良い循環を作り、お互いに成長できる仕組みを確立していきたいですね。
テレビ業界とユーザーにどのような役割を果たせるか?その問いに向き合うTVerならではの仕事の醍醐味
——小原さんがTVerに出向して2年が経ちました。TVerで働くやりがいや意義について、今どのように感じていますか?
これまでTVerは、見逃し配信サービスの提供によって、地上波放送を補完する形で機能していました。ですがここ数年で、テレビの視聴スタイルはますます多様化し、動画配信の存在感が高まり続けています。
その中でTVerは、ユーザーに対して、そしてテレビ業界全体に対して、どのような役割を果たせるのだろうか。この問いに、真正面から向き合うおもしろさと難しさを感じています。
テレビ番組の制作側は「作品を通じて、このようなことを伝えたい」という思いを込めて作品を生み出します。
一方で、制作されたコンテンツをもとに「ユーザーは何を求めているのか」「どのようなコンテンツに興味を持ってくれるか」を考えながら、マーケティング視点で両者をつなぐ存在を目指すのが私たちTVerです。
配信する時間帯や、サムネイルのデザイン、画面上の文言。一つひとつを分単位で細かく調整しながら、ユーザーを惹きつけるための工夫を凝らしています。
決まった正解がなく試行錯誤の連続ですが、ユーザーからリアルタイムな反応を得られるのは、Webサービスならではの楽しさだと感じます。
——最後に、今後の展望を聞かせてください!
現在、TVerのユーザー数は全テレビ視聴者数と比較するとまだまだ少ない状況です。つまり「テレビはよく見るけど、TVerは利用していない」方々がまだまだ多いということ。より多くの人々にTVerを広め、新しい視聴体験を浸透させていきたいと思います。
TVerが、社名変更して現在の体制になってからまだ3年。事業運営も組織づくりも手探りで進めている部分が多く、それゆえ今はいろいろなことにチャレンジできるフェーズです。テレビコンテンツを活用して実現してみたい、と意欲を持つ仲間も募集しています。
とりわけコンテンツ編成タスクは「テレビが好き」という思いが仕事の原動力になっているメンバーばかり。企画会議の場でも「あの番組がおもしろかったよ!」とランチタイム中の雑談をするような雰囲気で、楽しく仕事をしています。
業務中にあらゆる放送局のテレビ番組を見ていても怒られない職場なんて、TVerくらいではないでしょうか(笑)。ぜひ一緒に、好きなコンテンツに触れながら、放送局各社やユーザーの方々にTVerの魅力を伝えていきましょう。
株式会社TVerでは、一緒に働く仲間を募集しています。興味のある方は、こちらからエントリーください。
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※「潜入捜査官 松下洸平」は期間限定配信です。配信終了日については番組ページでご確認ください。