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『林遣都作品集 THREE TALES』レビュー:30歳を迎えた林遣都が示した、役者の矜持

見目麗しい俳優さんについては一家言も二家言もあるライターの横川良明氏。ご自身のnoteでも、俳優写真集についてアツく語ること早幾年……。

俳優写真集へなみなみならぬ思いを持つ横川氏の本棚にある写真集のレビューをしていただこう、という不定期連載企画。1回目は岡田健史『鼓動』をピックアップしましたが、今回は『林遣都作品集 THREE TALES』をテーマに、冷静と情熱の狭間を高速で行ったり来たりしながら、レビューしていただきました。

文/横川良明

よこがわ・よしあき●演劇とテレビドラマを得意とするライター。初のエッセイ『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』(サンマーク出版)が発売中! インタビュー本『役者たちの現在地』(KADOKAWA)、電子書籍『俳優の原点』(ライブドアニュース編集部)も発売中。

昨秋放送された『姉ちゃんの恋人』。悲しい過去を抱え、社会の片隅で、息をひそめるように生きる吉岡真人を演じる林遣都を見て、改めて林遣都という俳優の、役を体に馴染ませる力に感嘆したのでした。

話題をさらった観覧車のシーンはもちろんですが、見入ってしまったのは日常の何気ない場面。ホームセンターに転職してきたばかりの、誰のことも信じられないような怯えた目とか、桃子(有村架純)を相手にドギマギしている様子とか、想いが通じ合ってからの隠しきれないうれしさとか。感情の発露が生っぽくて、切りたての果実のように気持ちが溢れてくる。

「瑞々しい」という表現は若い俳優の演技を評するときによく用いるものですが、林遣都の演技は30代を迎えてなお「瑞々しい」。それは、初々しいという意味ではなく、嘘や作為が感じられないということ。台本というものがある以上、俳優は次に何が起こるかわかっています。それゆえ、人によってはリアクションが自然すぎるときがあるのです。でも、林遣都はいい意味でちゃんとぎこちない。つくりもの感がまるでない。だから、林遣都の演技にはしばしば「役を生きる」という形容を使いたくなるのです。

そして、彼が役を生きるのは、ドラマや映画、舞台だけではありません。記念すべき30歳の誕生日に発売した『林遣都作品集 THREE TALES』でも、物語の世界に身を供する林遣都の力がおさめられています。

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(横川氏私物)


林遣都が生きた、3つの物語


『林遣都作品集 THREE TALES』は、タイトル通り3つの物語の中で佇む林遣都が活写されたもの。CHAPTER ONEは、ある週末の朝。久しぶりのオフに、少し寝坊でもしたのでしょうか。大あくびとともに目覚める林遣都から始まり、街を散歩したり、喫茶店で文庫本を読んだり、たゆたうように休日を楽しむ姿が綴られています。

文庫本のタイトルは、星野道夫の『旅をする木』。星野道夫とは、アラスカを拠点に活動した日本人写真家。アラスカといえば、2010年、『世界水紀行スペシャル 水と氷の大地 林遣都 アラスカを行く』という番組で林遣都が訪れた地でもあります。『旅をする木』を手に取っているのは、そんな縁もあるのでしょうか。

つまり、この3つの物語を生きる青年は、林遣都がそれぞれのキャラクターを演じるという設定で構成されていますが、どこか本人とリンクするところがあって、深読みの楽しさを提供してくれています。

そんな不思議な読み心地に誘われるまま、CHAPTER TWOへ。CHAPTER TWOは東京から海を目指す青年の記録。全編にわたってモノクロで描かれており、よりドラマティックな印象に。あえてピントを外したものや、シルエットのみの引きの画、逆光の強いカットなども多用されており、林遣都というよりも、作品全体の空気感や世界観を味わう仕上がりとなっています。

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