商標弁理士と振り返るファミコンソフトのタイトルネーミング ~その10 「伝説・冒険」編~
こんにちは、横浜市の商標弁理士Nです。
さて、商標弁理士である私が、ファミコンソフトのタイトルを総チェックし、それらのネーミングについて独自に分類をした上で、商標実務の話にも少しだけ触れながらコメントしていこうという本企画。
いよいよ終盤、第10回目となりました。
前回は、「ファミリー〇〇〇」からなるタイトルについて考察しました。
今回は、「伝説・冒険」を含むタイトルを見ていきましょう!
物語性を強く表す「伝説・冒険」ネーミング
「〇〇〇の伝説」とか、「〇〇〇の冒険」というワードを、我々日本人であれば人生において一度は見聞きしたことがあるのではないでしょうか。
一般的には「〇〇〇物語」の方が多いかもしれませんが、このような「〇〇〇の伝説」、「〇〇〇の冒険」といったワードは、言い伝えや架空の世界を題材とした「創作物のタイトル」に多い印象があります。いわば、物語性を強く表すネーミングだと考えられます。ですから、小説、アニメ、漫画、映画などの分野では、特に親和性が高いと言えるでしょう。
もちろん、テレビゲームの分野でも、相性は抜群と言えます。
特に、物語性のあるRPGにはピッタリのネーミングとなるでしょう。
では、ファミコンソフトのタイトルには、このようなネーミングのものはどれくらいあるのでしょうか?
実際に調べてみると、「伝説・冒険」を含むタイトルは、これまた「思っていたよりも少ない」ことがわかりました。個人的には、昔、ファミコンソフトでよく見かけたイメージがありましたので、この結果は意外でした。
「伝説・冒険」ネーミングのファミコンソフトタイトルの一例
では実際に、「伝説・冒険」ネーミングのファミコンソフトのタイトルの一例を見てみましょう。
まずは、「〇〇〇伝説」のタイトルからです。
やはりRPG多めの印象ですが、意外にもアクションゲームの方が少し多いでしょうか。
以前の記事にも書いた気がしますが、「桃太郎伝説」は、私が昔から特に好きなソフトの一つです。今遊んでも、絶対に面白いと思います。また、ドラクエ風のゲームシステムなのに何だかクセの強い(笑)「ホワイトライオン伝説」も、個人的にはお気に入りのソフトです。
ちなみに、「ダブルムーン伝説」はプレイしたことがないのですが、現在では中古市場でかなりのプレミアが付いているようです。
そして、「ゼルダの伝説1」といえば、ディスクシステムで発売されたゲームというイメージが強いですが、実はファミコン後期に、カセットでも移植されて発売されました。この頃は、もうとっくに「スーパーファミコン」が発売されていましたので、プレイした人はかなり少ないのではないでしょうか。私も、実際には遊んだことはありません。
なお、「〇〇〇伝説」というタイトルではなく、「〇〇〇伝」などの派生的なネーミングのものや、サブタイトルに「伝説」が含まれるものとしては、以下のように結構な数が見受けられました。
そういえば、小さい頃、なんとなく「月風魔伝」と「源平討魔伝」の区別がつかなかったのは私だけでしょうか(苦笑)?
では次に、「〇〇〇冒険」のタイトルです。
わりと、有名どころが揃っているという印象がありますね。
この中でも個人的に思い出深いのが、「元祖西遊記 スーパーモンキー大冒険」です。ご存知のように、このソフトは「伝説のクソゲー」のように言われている代物です(苦笑)。
しかし、このゲーム・・・。
箱のパッケージイラストは、いかにも子供が好きそうなものになっているのです。これだけ見ると、めちゃくちゃ面白そうなゲームに感じられる気がします。発売当時、小児だった私もまんまと騙され(?笑)、親にねだって買ってもらったものの、あまりのつまらなさ(というか理不尽さ)に号泣したのでした(笑)。
最後に、おまけとして、「〇〇〇物語」のタイトルも紹介しておきます。
商標実務的にはどうか?
上述のように、「〇〇〇伝説」や「〇〇〇冒険」は、物語性を強く表すネーミングと言えます。よって、普通に考えれば、一般的な商品やサービスの商標としては、その性質上、採用されにくいように思われます。
ただ、それこそゲームや、小説、アニメ、漫画、映画に関する商品・サービスの分野では、このような商標が採用されていても全くおかしくはありません。
そこで、特許庁のデータベース(J-PlatPat)で、「?伝説」をキーワードとして「商標(検索用)」で検索すると408件、「?冒険」をキーワードとして同様の検索をすると88件がヒットしました。
「伝説」ネーミングの商標の方が多かったのは、予想通りでしょうか。ただ、思っていたよりも、数は多い気がします。実際に商標の一覧を見てみると、やはりゲーム関連のものが多い印象です。意外だったのが、日本酒などの「お酒」の商品分野でも、「〇〇〇伝説」というネーミングの商標が多く見られた点ですね。
なお、「商標が似ているかどうか」が判断される際には、「〇〇〇伝説」や「〇〇〇冒険」といった商標は全体からの観念が出やすいと考えられることから、基本的には商標全体で比較されるということになるでしょう。
ただ、これまでにも何度か述べていますが、この「〇〇〇」の具体的な内容と指定商品・指定役務の関係によっては、「伝説」だけ、「冒険」だけが要部と判断される可能性もあり得ることに留意が必要です(※ただ、最近の実務傾向では、このように判断される可能性は低いとは思います。)
ちなみに、もう約20年前になりますが、「大魔神伝説」の商標と、「だいまじん」の文字及び「大魔神」の文字を二段で表した商標が似ているかどうかが特許庁で争われた事件(無効2004-89006)がありました。ここでは、両商標は「似ていない」と判断されています。
また、約15年前には、「ししゃも伝説」の商標(指定商品は「素干しのししゃも」など)と、「伝説」の商標が似ているかどうかが争われた事件(不服2007-19406)もありましたが、こちらも「似ていない」と判断されました。
やはり、「〇〇〇伝説」のような構成の商標は、あくまで全体として把握・認識されるというのが、特許庁の考え方だということになりそうです。
という感じで、今回はここまでとなります。
残すところあと数回。次回は、「子供は読めない!」ネーミングについて見ていきましょう!
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