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【和訳】Jello Biafra and the melvins/Dawn of the Locusts

 自分は、語学力の向上を目的として洋楽の歌詞を和訳した文を週に一度noteで発表している者です。今週はJello Biafra and the melvinsの"Dawn of the Locusts"を訳しました。2004年にジェロ・ビアフラが主催しているレーベル"Alternative Tentacles"から発表されたアルバム、"Never Breathe What You Can't See"、その最後を飾る曲になります。
 自分は過去にもこのアルバムの収録曲を翻訳を試みた事が二回あるのですが、その度にビアフラの歌詞の難解さに悲鳴を上げたものでした。今回の歌詞も張り倒したい程に難しかったです。

 メルヴィンズが関わったという、その割にはシンプルな構成の曲が殆どを占めているのがアルバム"Never Breathe〜"の特徴です。これは恐らく、ビアフラが自らの"パンクロック"という表現に於いて「楽曲の構成を複雑化させて、演奏それ自体で混沌を表現する」事よりも、「演奏に乗せて自分の作ったフレーズを歌い、聴衆に訴えかける」点に重きを置いているからだろう(そうじゃなきゃあれだけ多くのスポークン・アルバムをリリースしない筈です)と思うのですが、その中においてこの"Dawn of the Locusts"は、「ああ、バズー・オズボーンが作った曲だなあ」と即座に楽しい気分になる、把握するだけでもひと苦労なギターリフが力強く全体を牽引していく、メルヴィンズ側が主導権を握っている楽曲となっています。

 自分はこの曲の冒頭の「俺達はイナゴだ〜 今こそ大量発生の時〜」というフレーズを聴いて以来、何となく「この曲は、新自由主義に毒された最悪なミリオネアの群れが(イナゴの様に)大挙し民主主義を喰い荒らす様子を描いているのであろう」と考えていたのですが、実際にきちんと訳してみたら、意外にもそれとは真逆の状況、虐げられた民衆がさながらイナゴの様に集い、悪政に抵抗して崩壊させる様を歌っている曲でした。自分は今までビアフラに対し、「一般大衆を真正面から勇気付ける曲を発表しているイメージ」を持った事が無い為、個人的にはとても驚きました。ろくでもない金持ちとか政治家を戯画的に誇張した悪口を言い続けている人のイメージしか無かったです。"Dawn of〜"で書かれている余りにも過激な物言いに若干の戸惑いは感じましたが、それでも、「熱い曲を書いているなあ…」と素直に感動しました。

 という訳で今から訳文を書きますが、毎回こういう注釈を入れざるを得ないのですが、本当に(自分にとっては)難しい内容の歌詞であり、「間違った訳にならない様に、全力は尽くしました」以上の事は正直、言えません。その事を念頭に入れて読んで下さい。俺は頑張った。あとタイトルは「イナゴ達の夜明け」という意味です。

Jello Biafra and the melvins/Dawn of the Locusts

俺達はイナゴだ
そして 今こそ大量発生の時が来た
チック・トラクツ(※1)と兵器マニア達が
お前達へ警告していた物が来たのだ

厄介者のレッテルを貼られた
文字が読める様になるより ずっと以前から
世界秩序を攪乱させて妨害する
それが俺達の集まり方だ

赤色の警告 橙色の警告
"フルーツ・ループス(※2)"の全ての色の警告だ
あんたのご立派な人生は
攻撃されてんだよ 内側からな

俺達は買いたくないし そして俺達は試みる
お前達の脆弱な豪邸(※3)を腐らせてブチ壊すのを
一切の妥協無く腐らせてブチ壊す事を

神聖なる一流企業のロゴの数々
それらは新しいカギ十字でしかない
歪んだ愛国者の群れである事を
誇りに思っている証としての

深く疲弊した社会は
オオカミの群れへとその姿を変えていった
俺達が 内側から
喰い荒らしている間に

ムシャムシャ… ガツガツ…
グチャグチャ… チューチュー…
あいつらは俺達が誰かを知っている…
ただただ最悪になればいいじゃないか…?

俺達は買いたくないし そして俺達は試みる
お前達が大事に抱えている全てを燃やす事を
一切の妥協無く燃やし尽くす事を

お前達の子供の為にここに来た
お前達の友達の為にここに来た
そいつらが 一流の市民様ってやつに
なってしまう事を防ぐ為にここに来た

くだらない毎日
犬用の鎖には近付かない
新しいボストン茶会(※4)へと参加するのだ

お前達は俺達を所有できない
お前達は俺達を所有できない
お前達は俺達の金を所有できない
お前達は俺達の時間を所有できない
お前達は俺達の魂を所有できない
お前達は俺達の人生を所有できないんだ

シロアリは あの脆弱な豪邸へと解き放たれた
蜂起せよ!蜂起せよ!
魔術的大量発生に万歳を!!


※1 Chick tracts 
1960年代に、アメリカの漫画家Jack Chickによって編まれた、福音伝道の為の漫画形式の小冊子。聖書の内容について紹介している本なので、恐らくその中にイナゴの大量発生が厄災として描かれているのではないか、と思います(ウィキペディア参照)。

※2 Fruit Loops

fruit loopが「変わり者」を意味するスラングなのですが、それとは別にケロッグ社が販売している"Froot Loops"というシリアルがあり、「"フルーツ・ループス"の全ての色の警告」とは、この「お菓子の色の警告灯」と「変わり者」とをかけている洒落、であると思います。

※3 house of cards(脆弱な豪邸)
元の意味は「トランプで作った家の様に壊れやすい物」の意。砂上の楼閣。

※4 ボストン茶会事件
1773年、当時植民地下にあったアメリカに対し、イギリス東インド会社が中国産の茶葉の販売独占権を得て更に免税までされる事が制定された。その事への抗議として同地の急進派「自由の息子達(サンズ・オブ・リバティ)」は、停泊していたイギリス東インド会社の船舶に夜間忍び込んで積荷の茶葉を一つ残らず海へと投げ捨てる。この事件は「ボストン茶会」と呼ばれ、後のアメリカ独立戦争への転機への役割を果たした。と、涼しい顔をして概要をつらつらと書きましたが、お恥ずかしい話、「ボストン茶会」とは一体何か?翻訳中はさっぱり分からなかった為に、ウィキペディアを参照させて頂きました。

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 という内容の歌詞でした。過激な内容であります。私個人としての感想を言うなら、新自由主義に則って社会でやりたい放題しているミリオネア達の根源的な行動欲求に"悲惨な幼少期のトラウマに対する歪んだ復讐心"がありありと見えている、もうほぼ丸見えになっている現状からすると、彼等に対するプロテストとして「弱者としての復讐心」を煽る事は、結果的には上流市民、下流市民間での対立をエスカレートさせる事になり、この社会をまともにする為の根本的な解決にはならないと思いますが、そもそもここまでブッ壊れた社会に於いて"根本的な解決"とか贅沢言ってる余裕も、もう無いのかもしれません。居酒屋で焼酎でも煽りながらこの曲を鼻歌で口ずさむ位の気軽な楽しみ方でいいのかもね。この曲を訳しながら自分が楽しい気分になったのは事実です。大量発生、万歳!!

 という事で、Jello Biafra and the melvinsの"Dawn of the Locusts"の翻訳でした。最後にこのサウンドの立役者、メルヴィンズの自分の好きな曲を貼ってこの文を終わります。

Melvins/The Smiling Cobra

 それではまた〜!

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つやつやと実っている稲穂
なあ、頼む……たったの5ドルでいいんだって… 確かに昨夜はツキが無かったよな、ベニーがヘマ打っちまって…いや、イカサマじゃねえ、生まれ故郷のアリゾナに誓えるぜ、ただ必勝法があるのさ…次は負けねえよ…なあ、ハニー、5ドルでいいんだ…マンハッタンの夜景の様に俺を愛してくれよ…