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バカは爆音でささやく

 数日前から、部屋にあるエアコンのオレンジ色のランプが点滅を始める様になった。下に何か文字が書かれていたので顔を近付けて読んだら「ストリーマおそうじ」との事。ストリーマという耳馴れない言葉に続く「おそうじ」という禍々しいフレーズ。これはもう未曾有の大惨事の前触れに違いない。私の身に戦慄が走った。
 「おそうじ」という名前が付いているイベントで碌な物が有った例が存在するのだろうか?この「おそうじ」と言った方の、明らかに自分の方が掃除をさせられる側よりも位が上であると確信している感。「お前たち無能はせいぜい掃除しか出来ないんだからさっさとやれよ。掃除の前に"お"を付けてやっからよ」という、痩せた犬に骨でも投げ与えるかの様なその侮蔑に満ちた態度。到底許せるものではない。人を馬鹿にする達人100人が選んだ、今直ぐにでも使える鉄板フレーズの第1位、それが、これ。「おそうじ」。嫌すぎる。
 私は静かにエアコンのコンセントを抜いて10分ほど瞑目した。エアコンよ。この10分間でお前は生まれ変わるのだ。"ストリーマおそうじ"という警告は現世のしがらみがお前に見せていた悪い夢なのだ。お前はこれから高次の者として生まれ変わる、誰もお前のストリーマに手を触れる事は出来ない。お前のストリーマは2度と汚れる事は無い。お前の"ストリーマおそうじ"のサインが点滅する事は永劫に無いであろう。お前は悪魔の眷属けんぞくなのだ!さあ生まれ変われ! 血塗られた産声を響かせよ!!

 何の意味も無かった。コンセントを指し直した途端に件のランプは再び点滅を始めた。電気は着いたり消えたりする瞬間に最も電力を消費すると聞いた事がある。のびやかに点滅しているこいつの電気代を一体誰が払うのだろうか?大家か?不動産屋か?地主か?せめて点滅を止めてくれ。頭の上から姑にねちねちといびられている気になって普通に腹が立つ。
 ネットで調べたところ、エアコンの使用時間が1800時間を越えるとこの警告が始まるらしい。そんな細かいランプ気にせん気にせん、わしゃ九州男児やけん、いも焼酎を飲みながらエアコンぶん回し続けるでごわす、と豪快にこの警告を無視するとどうなるのか。ストリーマ機能が停止しエアコン使用時に空気をきれいにする作用が無くなるという。だから俺はこの数日間咳が出てたのかよ。というか、たったそれだけの事で俺は咳をするのかよ。中年の体調、それは割れた処で誰一人悲しまない儚いガラス細工だ。自分で守るしか無い。
 私は鬱々とした気持ちで掃除の方法を検索した。ストリーマユニットをエアコンから外してぬるま湯に1時間漬けろと書いてある。無理だって。そんな面倒臭いもん用意できねえって。あ〜いや、UberEatsで頼むわ。ぬるま湯を。どうせだったらクソ高い店から。銀座の老舗料亭の、飛騨の山脈から水汲み職人が汲んで来た湧き水を備長炭を使って丁寧に温めましたみたいなやつにさあ!!奇声を上げながらストリーマぶち込まさせていただきますわ!!どうせなら楽しまなくっちゃね!!!人生ってやつをさあ!!!いや、実際問題もう自分の家にはぬるま湯を入れたバケツを置くスペースなど無い。頑張って俺は部屋中に散らばった本を読んで処分してこの汚部屋をきれいにしようとしている。今週は10冊読んだ。偉い。しかし、残念ながらまだバケツを置けるだけの余裕は無い。何故俺の部屋にはほぼ興味の無いビートルズの伝記が何冊もあるのだろうか?!オノ・ヨーコの気色悪いエピソードを1つでも多く知りたいからに決まっている。ただ、これは本心から書くけど、前衛芸術に造詣の深い人からオノ・ヨーコの凄さをちゃんと説明して欲しいという気持ちは常にある。もう自分の中でオノ・ヨーコって叶姉妹みたいな「謎金持ち」というジャンルの人なんで。天井にYESと書かれていて、それをジョン・レノンが見たから何なのか?本当に教えて欲しい。
 芸能について完全に無知な人間の意見だけど、ああいう不思議な金持ちの1人として野村沙知代がいた事を思い出し(個人の意見です)今初めて"Such A Beautiful Lady"を聴いたけど、結構いい曲だと思いました。

野村沙知代/Such A Beautiful Lady

 なんか「時代を感じさせるが良くできているトラック、の上でサッチーが喋るが、あまりにも"音楽"という意識が本人に無い為にただ滔々と語っているだけなのでほぼサウンドコラージュと化している」という点だけでKLFの「チル・アウト」を思い出した。適当な意見ですが。あと曲の中で「プレミアには歯止め無いルール」というラップがあるけど、これは普通に考えてDJプレミアの事でしょう。Primo has ruled the floor infinitely.(Primoは際限無くフロアを支配する)みたいな意味の。そう考えるとSuch A Beautiful Ladyがますますいい曲に聴こえるね。DJプレミアは本当にいいから。

Gang Starr - Mass Appeal (Official Music Video

 何の事を書いてたのか自分でも忘れたよ。
ストリーマおそうじの話か。で、最近気付いた面倒臭い事が他にもあって、note書いてる人って大体自分の文の最後に「サポート」っていう機能を付けてるんですよ。作者に「面白かったです!これからも頑張って下さい!」みたいな意味を込めて金を振り込みたい人がいたら、そこから手続きをすればいい訳。みんながサポートを付けている。俺以外は。びっくりしたよ。俺のnoteサポート機能付いてないじゃん!なにを貴族ぶってんだよこの貧乏人は!?てっきり付いてるもんとばっかり思ってたよ!!昨日これに気付いてもう1時間位noteの設定を弄ったんですよ。でも何をしてもnoteにサポート機能が付かない。公式のヘルプページに「サポートを受け取った際のお礼の文章を設定画面に入力すれば、実際のnoteの画面にもサポート機能のボタンが現れます」みたいな事が書いてあったから、もう無我夢中で「ありがとうございます!」と書いてね。とにかく1秒でも早くサポート機能をnoteに付けないと、遅れれば遅れるだけ人から貰える金が減るから。今思い出したけど、村崎百郎が原作で森園みるくが漫画を描いた「鬼畜流ディープスロット」っていうパチスロ攻略漫画があって、もちろん村崎百郎が原作だから酷いんですよ。それで「スロットが当たっている時に小便をしたくなった時の対処法」が描いてあって、とにかくトイレに向かって走りながらもう陰茎を露出させておけ、そしてトイレのドアが開いたと同時に一番近い便器に向かって1秒でも早く放尿しろ、その際小便が他の客にかかっても一切気にするな、尿が出終わったら踵を返して台へ走りながら陰茎をしまえ、これで1Gは余計にプレイできる、という内容がわざわざ1ページに渡って描いてあって感動したんですが、昨日俺もその心境でサポート機能を付けよう付けようとしてて。早く早く早く早く金金金金お金ちゃんお金ちゃんとただそれだけを思いながら。

 これも今思い出したけど、俺この前中野ブロードウェイで小便してたら正にこの状況に巻き込まれたわ。隣の便器にちんちん出した幼稚園児くらいの子供が走って来て、それで小便しだしたんだけど全部が俺の足元に踊りかかって来て。余りの恐怖に唖然としてたら「OK!」と叫びながらどっか行ったっていう。あれは村崎百郎からのメッセージだったのかもしれないなあ…「てめェ〜!!!ブロードウェイに品性下劣な時計屋ばっかのさばらせてんじゃねェぞォ〜〜!!!店の前で脱糞するくらいの根性見せやがれェ〜!!!」みたいな。本当だよな。刑務所に行くか餓死するかくらいに生活が追い込まれたらそれやります。
 で、何をしてもnoteにサポート機能が付かなくて。設定画面の「ありがとうございます!」だけが虚しく自己主張してるだけ。昔見た宇川直宏のなにかの作品で、印刷物に「コインでここを削れ。この下に暴力的な言葉がある」って書かれてて、その銀色のやつを削ると下から「PEACE」という文字が出て来る、というコンセプトのやつがあったんですが、で、多分どっかで手違いが起こって、削れない普通の銀色のインクがその「PEACE」の上に塗られたんですね。それでその作品の紹介文が「不可視のPEACE程に暴力的な言葉はない」というフレーズで締めらてたっつう。自分のnoteも今その状態です。不可視の「(お金をくれて)ありがとうございます!」というメッセージほど貧乏臭いもんも無いよ。
 そんな訳で、インビジブル繋がりで、昔宇川直宏が来日時のフライヤーのデザイン(アナログ盤もデザインしていたと思うのですが…検索しても出てきませんでした。曖昧な記憶に頼っている文章ですみません)を担当していたインビジブル・スクラッチ・ピクルスの曲を貼ります。

Invisbl Skratch Piklz/Hit Me With Your Clown Kit

 まあ、サポート機能もnoteに付けれない自分のバカさ加減にほとほと嫌気が差しました。惨めだぜ。
 最後に大金がジャケのアルバムの曲貼って終わりたいと思います。ずっと自分はノイズとヒップホップばっか聴いてるんですが、どっちも発想がバカだよな。やっぱ。「よし、俺は音楽をやるぞ」と思ってから、もう楽器の修練すらまともにやらないっていう。「取り敢えずデタラメに音を出す」とか「昔のレコードをループさせる」とか。ローランド氏の言葉に「俺か、俺以外か」というものが有りますが、自分の場合はもう「バカか、バカ以外か」しか判断基準が無いんだよなあ、と、この年になってしみじみ思います。昔、菊地成孔と大谷能生が「アフロ・ディズニー」を出版した時にアテネフランセで行われた特別講義に出席したんですが、そこでリュミエール兄弟が撮影した最初期の映画、単なる水槽の中を魚が泳いでるだけの白黒の映像が無音で大スクリーンに投影されたんですね。自分はその馬鹿デカい魚を見ながら、当時見た非常階段のライブのラスト、JOJO広重と小堺文雄がギターアンプを掴んでそこら中を引き摺り回している光景をふと思い出しまして。目の前で何かが起こっているが、その起こっている出来事は目の前にいる人達に起因してその人達にしか属していない、そして彼等の目的は本当は彼等自身にしか分からない、という寂しくもあるが当然でもある事実を、リュミエール兄弟が撮ったでかい魚が非常階段のライブ並の迫力をもって自分に提示してきて。で、急にそこでゲスト講師の岸野雄一が「このように、ありふれた魚も大きな画面に映せば、ノイズに塗れているんですよねえ」と発言して、正にノイズバンドの事を考えてたんで完全に虚を突かれたんですが。
 自分はそれからノイズという音楽は「でかい音を出す音楽」というより「聴こえない程に小さい音を拡張する音楽」だと思っていて、やっぱ、無価値な物(≒バカ)が異常に拡張されて存在感を持ち始める瞬間ってのはいいもんだと思いますね。樋口泰人の「映画は爆音でささやく」もこういう意味なのではと考えております。
 という事で、PLLAYA 1000 with THE D'KSTERの1/2 TIME HOMIEZを最後に貼ります〜。この曲もサビなんて人の曲のパクリだからな。バカだぜ!だが、いい曲だ。

 また来週〜!金くれ〜!


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