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別に、憎くて怒った訳ではないのです
先週のnoteに、「フリスクドリンクはX上で大勢の人達からまずいまずいと糾弾されている。しかし、自分はおいしいと思う」と書いた。そして、それからいよいよ本気で手放せなくなってしまった。今では一日に一本は確実に飲んでいる。
自分は訳あって6〜7年前から飲酒をきっぱり止めた。これ以上飲み続けると誇張無く人生が崩壊すると判断したが為だ。普通の人だったら酒くらい好きなだけ飲めばいい。だが俺はだめだ。資格が無い、そう考えての苦渋の決断だった。そしてこの数週間、自分は酒が飲みたくて狂いそうになっている。おかしい。酒と縁を切ってから数年の間、こんな欲求が出て来た事すら無かったのに。恐らく、外気温が度を超えて高まり過ぎた為に脳が最終手段として飲酒を勧告しているのだと思う。もう判断力や認識力を低下させる以外にこの気温に人類が打ち勝つ手はありませんと。シラフで太刀打ちできる事態じゃないですと。
正直、自国の政治腐敗も勿論深刻な問題ではあると思うが、ここ数年の異常気象の方が自分にとっては恐ろしい。中年の体力でこの狂った天候をいつまでサバイヴできるのか?疑問だ。 先々週の水曜の夜とかマジで凄かった。この世の果てを思わせる様な土砂降りの中をカミナリがバコバコバコバコとご機嫌に鳴りまくっていた。夜勤の仕事行く為に仕方無く外を歩いてたら目の前が急激に白く光り出してさ、わしゃ死んだと本当に思ったね。物凄い爆音に慄きながら顔を上げたらちょうど目の前のビルに落雷してて、もう恐怖を通り越して怒りすら湧いたよ。なんでこんなバッドブレインズのジャケみたいな異常な天候下で死を覚悟しながらわざわざ一切行きたくない所に行かないといけない?普通の社会でしたらね、こんな暴風雨が来たらその地区の住民が集会所とかに寄り集まって、天候を司る神様に野菜や魚を奉納して怒りを鎮める様に願い、あとは解散して各々が自宅でゆっくりモエ・エ・シャンドンとか飲みながらVtuberのゲーム実況動画でも見て明日への英気を養いましょう、仕事なんかしてたまるかみたいなのがね、それが、それが普通の社会なの!!!!こんな日に経済とか回しちゃ駄目なの!!!!雷落ちて死んじゃうの!!!
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で、そういう遣る瀬無い現実に打ち拉がれた脳が白旗を揚げて、もう酒飲んで下さい、もう狂いましょうよ、それしか現実に対抗する方法ないですよみたいな伝令を切々と送り続けてきて。嫌だ〜飲みたくねえ〜と思いながらだらだらと日々を過ごし、で、先日自販機でフリスクドリンクを見かけて「ああ、Xでみんなから嫌われてるやつだ、どれだけおいしくないのか知りたい」と 何の気無しに飲んだら、まあびっくりしたね!! 酒やん!!これ酒の味やん!!うわ〜懐かし〜昔良く飲んでたわこれってなって。飲みながらm-floのcome againを聴いて本当に泣いたもん。俺の青春が完全に戻ってきたって。
m-flo/come again
「美味しんぼ」に出てくる話で、人生に希望を見出だせなくなってほぼ引き籠もりと化した画家を山岡さんが元気付ける回があるんだけど、その画家は子供の頃にブリ漁を手伝っていたんですよ。で、山岡さんはその画家を鬱蒼とした廃ビルに連れ込んで、あえてブリでは無く、ブリと一緒に煮た大根だけを食べさせるんですね。その大根が"ブリのおいしさの特徴"を完全に捉えている訳。ブリよりも更にブリ。それで画家は感動して、ああ、あの夏の暑い太陽が俺の心に戻って来た〜っ!てなって、で、廃ビルの殺伐とした空気も、その暗い抑圧に抵抗せんとする画家の妄想に益々の拍車をかける為のバネ的な役割を担っていて、それでもって完全に忘我の境地に達してしまった画家が、俺は今少年だ!!みんな、今日はブリ漁だァ〜!! ブリをガツガツむさぼり食うぞ〜!!ってなって、こうしちゃいられん、今すぐ絵筆を握りたくなった、これで失敬ってなって、彼が廃ビルを飛び出した後に残された人達が「成程、具象(ブリ)より抽象(大根)の方が、よりブリの生命力を際立たせるという事なのか・・・」ってなった、みたいな話があったんですけど、フリスクドリンクを飲んで自分も完全にそれになって。まず炭酸の刺激があり、その後に僅かな何ともいえない甘さがあり、最後に茫洋とした後味が残って途方に暮れるしかないっていう、酒の”栄枯衰勢感”がもう完全に再現されていて。酒以上に酒。ウオ〜!!おじさんは若い頃何回これを飲んだことか!と感激して。こうしちゃいられねえ!! 青春だァ〜!さあ祭りの始まりだ!!今すぐ恵比寿のみるくに行って宇川直宏のVJ見ながら踊り狂うぞ!!牛井太郎の牛丼をガツガツ貪り食うぞ!!みたいな気持ちになりまして。みるくはもう移転しましたが…
大体そんなに昔を懐かしむんなら、ごちゃごちゃ言わずに今からクラブに行って踊ればいいんだよな。昔から音楽を作っていて、まだ現役で素晴らしい表現を手掛けてる人なんて大勢いるんだから(勿論、続けるには並々ならぬ苦労が多々あるのでしょうが…)。若くして革新的な音楽活動をしているクリエイターも当たり前だが多数いて、現場でその様な人達が作った素晴らしい音楽と出会って涙するなんて事もあるだろう。クラブに行ってフリスクドリンク飲めばいいんだよ。今度そうしますわ。スギウラムの新譜、本当に感動しました。
SUGIURUMN/Midnight Club (Japanese Version)
あと、今思い出したんだけど、昔恵比寿のみるくでまだトリオバンド形態だった頃のcicadaのライブ見た事があって、で小川裕史がMCで、「えー、最後の曲、ハードコアです」みたいな事言って凄い激しい曲を始めて、でその時宇川直宏がVJ担当してたんだけど、その曲の間中、延々とアニメの「なにわ遊侠伝」をメチャクチャな早回しで再生してるのね。もうバカ過ぎて泣く程大興奮したね。宇川直宏に纏わるそんな話なんて幾らでもあるんでしょうが、まあ忘れられないですね。って言っておきながらさっきまで忘れてたけど、記憶にこびり付いていて離れない。いまcicadaで検索して” GIG GIGGER GIGGEST”のジャケ見てうわ〜って声出たよ。思い出したわ〜、塗り絵帳から拾ってきた昔のアイドルのイラストに勝手にP16.D4とかハナタラシとかのバッジを付けたジャケ。ちょっと昔、女性をテーマに絵を描いてる(というか「あっ、女子しか描けません。すてきな人しか描けません」と本人が明言していた)イラストレーターが、作品を他の写真からトレースしてる事が分かって大事になってて、自分はなんか「へ〜、ふ〜ん」くらいしか思えなかったんだけど、そりゃ青春時代の多感な時期に、こんな著作権という概念を大砲で吹っ飛ばす様な異常な作品に触れまくってたらそういうリアクションしか取れなくなるわな。感覚が壊れてしまった。
cicada/Pure Poor Live Rally
本当に最高の曲。本当に凄い。
自分なりにさっき書いたイラストレーターのトレース騒動について適当な意見を述べると、その人が描いたイラストを見た人が普通思う事って「わあ、こういう人って素敵!」とか、「こういう人と付き合いたい」とかになると思うんですが、そういう感覚というのは、社会という鋳型に填められたいが故に出てくる、自らのオリジナリティを軽視した意見だと思うんですね。「どうすれば幸せになれるのか」を、「社会という規範」に則した存在になる事で解決しようとする試み。それは結局「自分のオリジナリティは二の次にして、まずは典型的な幸せを手にしたい」という願望な訳で、その願望を否定する気は一切無い、というか自分も本当にそういう感じで幸せになりたいと昼夜を問わず渇望しているのですが、そういう「オリジナリティは二の次でいい」という欲望を換気させる様な表現に対して、過剰なオリジナリティを求めるのはどうだろうと私は思います。いや、法律的には良くないよ!でも、「社会の中で誰もが素敵な印象を持つであろう人物」を描いたイラストが人に与える印象って、大多数がとどのつまり「自分もこの人の様に幸せになりたい、つまり、この人のトレースになりたい」だと思う(し、繰り返すけど自分はその様な渇望を極めて真っ当な物だとも思う)ので、そんな個人的に「おい!この作品トレースかよ!!」と糾弾する気にはなれない。トレースっていうか、古典落語を延々と語り継いでいくみたいなもんなんじゃないですか?それは古典落語に失礼か……でもなんかポストモダンについての本を読むと、よくボルヘスの小説に出てくる、"「ドン・キホーテ」を一字一句違わずに書き直した(書き写したとも言う)作家の話"が紹介されてて、でもその作家が書いた「ドン・キホーテ」は元のセルバンテスが書いた「ドン・キホーテ」とは全く違う作品なのだ、なぜならその2つのドン・キホーテにおいて、読者は全く異なる2つの文脈をそれぞれに当て嵌めるからだ…みたいな話が本当に良く出てくるんですが、だから、皮肉でなく「あっ、素敵な写真しかトレースしません、"素敵"という概念は私の中では法律に勝ります、私は法律をかなぐり捨てて素敵な写真をトレースした上でその作品に自らの作家性を込めております」と件の作者が断言していたならば、それで丸く収まっていたんじゃないかなあ…という気がしますね。他人と同じ様な幸せを手に入れる為に法律を無視する人なんていくらでもいる事だし。
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あと、トレースとそこまで関係無い話でも無いと思うんですが、最近「清水ミチコの顔マネ塾」を読みました。顔マネだってトレースの一種だろ。で、その本で、顔マネしてる芸能人について書かれている文が、もう本当に惚れ惚れするくらい本人に対して失礼で。でも別に訴訟とか起こってはいないっていう、この鮮やかな遣り口。アメリカでこんな事を隣人に言われたら下手すればその場で銃撃戦が始まるぞっていう致死量の毒が入ってる文章の、そのノンシャランとした佇まい。これから先の失礼な文章はこの境地を目指すべきだと心底思ったね。漫画の「刃牙」で、宮本武蔵が現代に甦(させられ)るエピソードがあるんですが、で、その漫画に出てくる武蔵が言うには、刀というものは最終的には持たなくていいんだ、無刀でいい、それでも「刀」という物を強くイメージして斬りかかれば、例え無刀であっても「斬られた」というショックを相手に与える事が出来るのだ…みたいな事実に開眼していて、俺は清水ミチコに同じ物を感じたね。刀はわざわざ持たなくていい。本当に斬ったら訴訟になるから。無刀で斬り、そして周りでそれを見学してる感覚の鋭い人間だけに「い、今、斬った…さすが武蔵…」みたいな事を思わせとけばいい、名声も高まるし面倒臭いトラブルも起こらない、つまりそれが一番得なんだっていう心得。目から鱗でしたわ。やっぱり読書は為になりますね。
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という訳で最後に好きな曲を貼ってこの文を終わります。本当は、ラモーンズのそっくりさんみたいな存在のハンソン・ブラザーズってバンドの"duke it out"って曲を貼って「これも一種のトレースだ、だが…」みたいに言いたかったのですが、それが公式配信サービスに有りませんでした。のでハンソンと同じ編成で、ハンソンが大人気を博していた頃にデビューしてたnext of kinってバンドの"24 hours from you"って曲にしようかと思ったんですが、その曲も無いので、ベタですが、ハンソンの"save me"を貼って終わります〜。
Hanson/Save Me
いい曲っすよね。今週のnoteのタイトルは、はるかな昔、DMBQのリミックス盤の発売記念パーティーが恵比寿のみるくで開催された時、それに出演したとん平&ビショップが、とにかくインターネットを嫌悪している旨をMCでずっと言ってて。ネットでチケット予約してそこに来てた客を挙手させてその人達に説教とかして。で、最後の最後に、悲し〜いリフをバックにしてポロッと言ったんですよ。「別に、憎くて怒った訳ではないのです」って。本当にびっくりして。余りに忘れられなかったので今回noteのタイトルとしてトレースしました。
とん平&ビショップ/生き物ジャンケン
いい曲ですよね!また来週!!
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