![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/35115929/rectangle_large_type_2_55ccea0e725512361963a4f02647ca72.png?width=1200)
Minecraftとモンテッソーリ教育
■リアルクラフトとモンテッソーリ教育
つっつクラフトでは「目指せスティーブ! リアルクラフト」という、マインクラフト内のアイテムを実際に作ってみるという体験を行なっています。
マインクラフトでは、牛乳3つ、砂糖2つ、卵1つ、小麦3つを集めてボタンを押すとケーキになります。
ゲームの世界ではボタンひとつで作れてしまいますが、それを現実世界で作ってみるのはかなり大変です。
小麦の穂から取り出した実を石臼で挽いて小麦粉にするところから始まり、牛乳瓶3本を勢いよく振ることで油分を分離させ白いクリーム部分を再現していきます。
その他にも、畑でジャガイモを育ててかまどで焼いて食べたり、大自然の中で羊の毛を刈って羊毛ブロックを作ったり、巨大なカボチャをくり抜いてジャックオランタンを作ってみたり、さらにはサバンナ地帯を実感するためにケニアまで行って野生動物の生の姿も体験しています。
味や大きさなど実際に作ってみることで発見できること、刃物や動物の危険性、広々とした草原だからこそ目にすることが出来るものなど、ゲームをきっかけに実際の世界で体験することを楽しんでいます。
そのような活動をしていると、「これはモンテッソーリ教育ですか?」と質問する方がいらっしゃいます。
まさにその通りです。
マインクラフトをプレイし、YouTubeで配信している「つっつクラフト」という活動の根本は、モンテッソーリ教育の理念に沿って行なっている体験学習なのです。
■モンテッソーリ教育とは
2016年に史上最年少の中学生でプロ棋士となり、さらには2020年に最年少二冠を達成し、日本中を沸き上がらせた若き天才棋士が誕生しましたが、その彼が幼少時に受けていた教育がモンテッソーリ教育であったということで、その時に初めて耳にした方もいるかと思います。
モンテッソーリ教育の歴史は長く、1906年に女性医師マリア・モンテッソーリがローマで保育施設を開設したことから始まり、その後、欧米を中心に高い支持を得ている歴史ある幼児教育法です。
特徴としては、自由な環境の中で子どもの「やってみたい」という自発性を尊重し、自ら学ぶことを教師が最大限伸ばしていく教育法で、様々な色・質感のある専用の玩具を揃え、音楽、ダンス、美術といった五感に訴えかける環境を用意することで、発達段階や興味に応じた子どもの知性の覚醒を促します。
また、植物に水をあげたり食器を並べるといった日常の動作や遊ぶこと自体を「おしごと」と称し、物事を途中で中断させず、やり切ることで集中力を高めます。
そんな独特な教育法であるモンテッソーリ教育ですが、つっつ君がハマっているマインクラフトはモンテッソーリ教育との相性が良いと私たちは考えています。
マインクラフトにはゲームをクリアするという概念がなく、終わりがありません。
その世界で何をするのか、何をして楽しむのかは、プレイヤー次第という主体性に委ねられたゲームです。
クリエイティブモードで制限もなくブロック遊びの延長線上として遊ぶも良し、サバイバルモードで木を伐採し岩を採掘し計画を立てながら建築や冒険するのも良し、レッドストーンと呼ばれる回路を作るブロックで様々なギミックを作るのも良し、自由な環境の中で「やってみたい」という自発性がゲームを面白いものにします。
そもそもマインクラフトは子ども専用に作られたゲームではなく、大人が遊んで楽しいゲームだからこそ、子どもの発達状況に応じて遊び方を変化させていくことができる懐の大きいゲームです。
例えば、つっつ君が作った世界を歩かせてもらうだけで、「オブジェ作り(色・形への興味)→トロッコ遊び(動きへの興味)→街作り(住環境への興味)→ゲームフィールド作り(他のプレイヤーとの交流への興味)」と、つっつ君の興味が移り変わっていく様子がよく分かります。
そして、ゲームだからこそ、そこそこ簡略化されていてそこそこリアルに近いという、子どもの興味のきっかけになりやすく、親が物事への深い理解を促しやすくあるため、私たちはマインクラフトで遊ばせると同時にリアルクラフトという形で五感に訴えかける環境を効率的に与えることができたのです。
■モンテッソーリ教育で得たもの
モンテッソーリ教育の施された園に通ってまず圧倒されるのは『やりたいことをやる』というエネルギーを持つ子どもたちの姿です。
「あの子はあれが好き、この子はこれが好き、そして僕はマイクラが好き」
それが否定されない環境は素晴らしく、つっつ君がマインクラフトの他に宇宙や生物について興味を持っているのも、回りの子どもたちがそれぞれ持っている『好き』が影響しています。
お互いの好きなことを尊重して一緒になって好きになれる。興味を広げ、知識を深めることが当たり前の世界。
その環境がどれだけ素晴らしい成果を見せたかは語りつくせないほどです。
そして、宇宙に興味を持ったつっつ君に対し、私たちはマインクラフトのMODと呼ばれる拡張システムを使いながら、宇宙の勉強を始める事にしました。
つっつ君は当時5歳、2016年頃はマインクラフトユーザー達が独自に開発し様々な物事をテーマに作られたMODが豊富で、それらMODのひとつである「Galacticraft」に目を向けました。
「Galacticraft」ではマインクラフトをさらに発展させ、ロケットをクラフトして月や火星に行く事ができます。
そしてそれぞれの惑星では重力の違いもシミュレートされており、宇宙での活動に必要な、電力・燃料・酸素といった概念がプラスされ、残量を管理する計画性が求められるように作られています。
もちろんこれだけでも十分にやりごたえのあるゲームとなっていますが、私たちはそこからさらに踏み込んで、リアルクラフト同様、MODの中で火力発電機を作ったら火力発電所に行き、ソーラー発電機を作ったら実際にソーラーパネルで発電させる実験をし、宇宙科学館でエンジンの実物を見たり、JAXAで実際のロケット開発者と会話することもしました。
このようにMODの中で出てきたものと現実の技術をリンクさせながら学習としてゲームを進めていくことで、つっつ君は宇宙へのリアリティを高めていき「安全なロケットを設計する人になるために、早く大学に通えるようになりたい」と言うようになりました。
現在では小学校へ通い毎日授業をしていく中で、その夢は幼児期の一過性の夢にしか過ぎなくなってしまいましたが、「安全なロケットを設計する人になる」という目標を自ら立て、何のために進学して、何のために学ぶのかを明確に理解したことは、その後の人生において必ず力になると信じています。
マインクラフトを通して、子どもに『何のために学ぶのか』を教える事ができたことは最高の教育だったと、私たちは思っています。