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【詩の森】一対一

一対一
 
君が知っていることを
相手が知らないと分かった途端に
ちょっとバカにして
こんな風にいったことは
ないだろうか
へえ、そんなことも知らないの?
みんな知ってるよ
 
みんなって誰だろう
自分を大きく見せるために
君が勝手に味方に引き入れた
架空のみんなじゃ
ないだろうか
素直にいえばいいのだ
へえ、そんなことも知らないの?
僕は知ってるよ
 
すると相手は
こう切り返すだろう
じゃ、君はこのことを知ってるかい
君は返答に困って
正直に知らないと答える
すると相手も
こういうのだ
へえ、そんなことも知らないの?
僕は知ってるよ
 
これで、おあいこだ
それから
君たちは時々会って
自分が知ったことを
互いにシェアし続けるだろう
一人のときよりも倍のスピードで
君たちの世界が
広がってゆくだろう
 
そしていつか気づくのだ
いくら勉強ができたって
ほんの一部にすぎない
世の中は
僕の知らないことだらけだ
君に会えて
ほんとうによかったと―――
そうさ
架空のみんななんて
始めから要らなかったんだ
一対一でよかったんだ
 
君はいつだって
等身大の君でいいんだよ
自分が知らないことを
わきまえていれば
初めて知ったことに
すぐに気づくだろう
そうやって
君の世界を自覚できたら
毎日がわくわくしてくるだろう
 
だから
先人たちもいっている
賢い人は
自分の愚かさを知っていると―――
それを
無知の知というのだそうだ
そうさ
一対一で
始めからよかったのさ
 
 

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