【詩の森】星野文昭さんの絵
星野文昭さんの絵
ふと立ち寄った
イベント会場で
初めてその絵をみたとき
どんな人が書いたのか
とても興味を持ちました
花や人物や風景など
何の変哲もない
水彩画の小品なのですが
色が透き通っていて
どれも
輝いているように
見えたからです
それにしても
淡い絵です
近づいてよく見ると
細かいところまで
丁寧に描かれています
書きなぐったような絵など
一つもないのです
作者の性格なのでしょうか
いったいどうしたら
このような絵が
描けるのでしょう
作者の心根を
思わずには
いられませんでした
紹介記事をよんで
作者の星野文昭さんが
無実の罪で投獄され
再審請求はなんども棄却され
44年も服役したこと
癌を患い
2019年に73歳で
無念の死を遂げられたこと
を知りました
星野さんは
学生運動の闘士
だったのです
1972年
星野さんは
警察官殺害容疑で
全国に指名手配されます
3年後に逮捕監禁されると
あろうことか
そのまま一生を
獄中で過ごすことになるのです
一審の懲役20年は
二審では無期となり
最高裁の上告棄却によって
刑が確定します
まさに国家の手で
人生を奪われ続けるのです
彼は国家権力の
見せしめに
されたのでしょうか
星野さんは
1986年
支援者の暁子さんと
獄中結婚されました
星野さんの絵は
すべて暁子さんへの
愛の証だったのです
後から知ったのですが
支給された絵具が
あまりに少なかったため
おのずとあのような
淡いタッチになったそうです
しかしその絵具とて
闘争の結果
勝ち取ったものでした
もしどこかで
星野さんの絵に巡り合ったら
その絵のまえに
佇んでみてください
その絵がきっと
語り掛けてくるはずです
なぜなら
その絵は星野さんの
清らかな魂
そのものだからです
そうして
この人は無実だと
あなたも確信するでしょう
国家とは何でしょうか
個人の幸福とはなんでしょうか
心がたまらずに
泣き出すかもしれません
それが
星野文昭さんの
絵なのです