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消えた老猫を探せ!ばーちゃん決死の大捜索!

若くもない老いてもいない30代半ば。
こらからどう生きるか、そのな問いをする事が多くなった。
垂れた氷柱は鋭く、吐く息は白く、いつもの景色を歩く。

新年の挨拶をするため、友人に会った時の事だった。
『新日本風土記みた?猫と暮らすおばあちゃんの話がすごく良かった』と聞いた。TVをあまりみない友人がテンション高く話すのが気になって家に帰り観てみた。

テーマは『居場所』、オムニバス形式で一人一人が見つけた居場所を巡るという内容だった。そして、番組のオープニングとラストを飾ったのが『ばーちゃんとみーちゃんの家』友人が話していたやつだ。

能登半島地震の後、仮設住宅から猫を連れひとり自宅に帰るおばあちゃん。
老猫のミルクは糖尿病でインスリン注射が必要で、それを手際良く打ち込むばーちゃんとじっと耐えるミルクの深い信頼関係を感じさせる。
『みんなの分まで生きている、どうしようもねぇ』と言いながら、90度に曲がった腰で畑仕事をするばーちゃんの姿はたくましくて強い。

ばーちゃんには二人の息子さんがいたが、事故と病気でどちらも若くして亡くしていている。地震の影響で仏壇が歪んでしまい戸を開けなくなり『花を飾ってあげられなくて、なさけない』と言う。母の愛は男である自分には計り知れない。

ある朝に事件が起こる、ミルクが居なくなったのだ。
家中を探し名前を呼んでも、いっこうに見当たらない。不安げな顔で遠くを眺めるばーちゃん。
すると、遠くの方から怒気が混ざる微かな鳴き声が聞こえた。
わずかな手がかりを頼りに、ミルク大捜索がはじまった。事件はいつも現場で起きている。
シルバーカーを押し闊歩するばーちゃん、後ろ姿がやけにカッコいい。
迷いのない姿はロングコートを靡かせ走る青島刑事のようだ。
必死の捜索が実を結び、ついにミルクを発見する。
どうやら野良猫にいじめられているようだった。
『ミルいじめて、どうする!バカ!』とばーちゃんが叫ぶと、野良猫に向けて握りしめていた石を放り投げる。こんなシーン観たことがない、なんなんだこの愛憎劇は!決定的場面を収めたディレクター、カメラマンに感謝したい。
救出には成功したが、愛猫ミルクは極度の緊張とストレスの為か荒ぶっている。『バカやな、ウーじゃないわ』とミルクを叱り、両手で大事そうに抱え歩く姿はヒーローそのものであった。
『バカやねぇ』と呟き、頭を撫でる姿は、亡き息子さんに注ぎたかったはずの愛のようにもみえてジーンと来た。
向き合い、闘った人にあるのが居場所なんだなぁ。きっと。

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