映画『ピンチランナー』について
モーニング娘。25周年企画として今回は2000年に公開された映画『ピンチランナー』について振り返っていく。「LOVEマシーン」や「恋のダンスサイト」で大ヒットを飛ばしていたモーニング娘。が実際に駅伝大会に挑むという前代未聞の映画として話題になった。1998年に公開された映画『モーニング刑事。』と同様に演技が拙く、内容に関してもツッコミどころもあったり?なかったり?と面白かったのでネタバレ全開で紹介していく。
はじめに
映画『ピンチランナー』は、「ハッピーサマーウェディング」がリリースされた直後の2000年5月20日に公開され、4期メンバーの石川梨華・吉澤ひとみ・辻希美・加護亜依の4人はエンドロール中のおまけ枠で出演している。
中澤裕子:増田郁恵
飯田圭織:仙道麗子
安倍なつみ:峰岸あゆみ
保田圭:松本道子
矢口真里:神崎知子
市井紗耶香:林原真穂
後藤真希:長谷川さなえ
押尾学:後藤俊也
JR池袋駅には盗難の恐れがあるとして警備員を配置した上で各メンバーの広告ポスターが貼り出されたが、早々と市井紗耶香と後藤真希のポスターが盗まれたエピソードがある。
2000年12月1日のBSデジタル開局日にBSジャパン(現・BSテレ東)で21時台に放送され、地上波でも翌年4月11日に『モー娘。走る! ピンチランナー特別編』として19時台にテレビ東京で放送された。
孤独な安倍と暗示していた押尾学
“たった一人の陸上部、何のために走っているんだろう…”
品行方正をモットーとする女子高等学校・朝比奈学園唯一の陸上部員、峰岸あゆみ(安倍なつみ)はいつも一人で黙々と走っていた。そんな存在を学園一の問題児・長谷川さなえ(後藤真希)と隣の男子校に通うサーファーの後藤俊也(押尾学)は気になっていた。周りと別行動を取る峰岸の姿は、どこかモーニング娘。のセンターとして孤高のポジションにいた安倍の姿と重なるが、そういうのも計算した上で作られたのだろうか。今回のお相手役(?)である押尾学は幼馴染の神崎知子(矢口真里)が駆け寄ってくる場面で仲間から冷やかしを受けると「お前もう一回言ったら◯すぞ」と発言。その後の事件のことがついつい思い出してしまう。長谷川さなえ(後藤)は末っ子気質満載の天真爛漫なキャラでとにかくカワイイ。
そんな中、陸上部の部室が落雷によって火事となり、あゆみ(安倍)は炎の中で気を失って倒れてしまう。校庭にはクラスメイトや他校の男子高校生たちが集まり、さなえ(後藤)は周囲に峰岸を助けるように促すが、知子(矢口)は「え?陸上部なんてあったの?」、バスケ部のキャプテンの仙道麗子(飯田圭織)に至っては「それ、同じクラスの峰岸あゆみよ!誰とも話さない変わり者!」と人が死にかけているのに皆でディスりまくっている。先生や警備員は誰一人とも駆けつけてこないし、ここの学校はどうなっているんだ…。そこで俊也(押尾)が周囲からの制止を振り切り、グラウンドネットを折りたたみナイフで切って勇敢にも炎の中へと向かい、あゆみを助け出した。そもそも高校生で折りたたみナイフを常備しているのが怖いのとなぜあの時は助けなかったんだってなる…(存じ上げない方はWikipediaをご確認ください)。
ガチで大怪我を負った後藤の演技に注目
この火事をきっかけに娘。達の間で友情が芽生えるようになり、バスケ部で買い出しのパシリをやらされていた林原真穂(市井紗耶香)が陸上部に加わり、これまで誰にも話していなかった父親(斉藤洋介)からの家庭内DVを打ち明け、あゆみ(安倍)と親交を深めていく。その後はさなえ(後藤)、あゆみを俊也のライバル相手と察知した知子(矢口)が加わり、陸上部は4人となった。
そんなある日、バスケ部のキャプテンでエースだった麗子(飯田)が自己中心的な振る舞いを行なったことで他の部員たちから反感を喰らい、試合のスタメンから外される事件が起こった。失望した麗子(飯田)は女子トイレで自殺未遂を起こし、学校近くでパン屋を営む増田郁恵(中澤裕子)を除いた6人が授業中にもかかわらず保健室へと集まるが、バスケ部のみんなに相手にされなかったとの理由で自作自演を行なったことが発覚(単なる構ってちゃん?)。ここで不治の病に冒されていることを初告白した松本道子(保田圭)の立場は一体…。圭ちゃんっていつも損な役回り…。そんな自殺未遂騒動を乗り越えて麗子(飯田)も陸上部に加わり、部員は5人となった。
余談だが、保健室のシーンでさなえ(後藤)が血糊を浴びたことで滑って顔面を強打するところがあるが、実は救急車に運ばれて緊急手術を行うほどの大事故が起きていたことを後にYouTubeで明かした【→ 「【ゴマキ年表vol.2】モー娘。デビュー後の1年が濃厚すぎました🙆♂️」】。
場面は打って変わって、ケニア出身で陸上選手のエスタ・ワンジロが登場する。どういった経緯でキャスティングされたのかは定かではないが、大人の事情も絡んでいると思われる。公開後に行われたシドニーオリンピックでは女子マラソンにおいて4位という成績を収めた彼女だが、演技は終始棒読み状態で長距離を走る上でのアドバイスも説得力がゼロだった。普通に現役の日本人選手をキャスティングすればよかったのにって感じだが…。
その後は陸上部の5人にマネージャーとして道子(保田)と見守り人の郁恵(中澤)が加わって駅伝大会に向けて練習を行うが、真穂の父親からのDV問題やあゆみと聴覚障害を持つ母親(松坂慶子)との親子関係、家族の離婚、中学時代のトラウマによる自信喪失などさまざまな問題が生じて陸上部は分裂の危機に直面してしまう。知子(矢口)もライバルのあゆみが離脱したことでやる気を失くし、気づけば駅伝大会の前日までメンバーが揃わない状態になっていた。あゆみは俊也(押尾学)からの後押しもあって自信を取り戻し、熱海駅前商店街での「遅れてごめん!私、走る!もう絶対に逃げない!」という名言が生まれた。
パニック状態となった駅伝大会
2000年4月16日(日)に茨城県のひたちなか市総合運動公園陸上競技場で行われた「ひたちなか全国少女駅伝大会」は、モーニング娘。が実際の駅伝大会に参加するとあって沿道を含めて約41,500人が集結するほどの大パニックに陥った。公式によると、取材に訪れたメディアは40媒体、カメラの台数は39台にも及び、こういった話題性もあって第24回 日本アカデミー賞において新人俳優賞及び話題賞を受賞した。
同大会には一般のチーム以外にもハロー!プロジェクトのメンバーを中心に編成された3チームも出場した。劇中ではセリフがなく、見切れる程度しか映っていないが、ハロプロ総出演のバラエティ番組『アイドルをさがせ!』にて裏側が密着されている。
メンバー構成は以下の通り。
第1走者のさなえ(後藤)がトラックを数周して道路に出てくると、周囲はパニック状態となり、並走するファンが続出した。映画の撮影もしているのに、「真希ちゃーん!」と声援を飛ばしているファンや第3走者の麗子(飯田)に至ってはファンに手を振っていたりと映画としては全く成立していない。あゆみ(安倍)がゴールしたクライマックスのシーンでは「あゆみーぃぃぃ!!」と絶叫する男性ファンがいたりとモヤモヤする場面が多々あった。
ゴール直後は膝から崩れ落ちるように倒れ込んだあゆみだったが、すぐさま観客席にいる母親(松坂慶子)に対して手話で思いを伝えるシーンの撮影に入り、走り終えたばかりだというのに容赦ない。さらに本編では使用されなかったものの、閉会式では各メンバーの挨拶、さらに集まってくれたファンへの感謝として「恋のダンスサイト」をジャージ姿で披露するサプライズもあったという。凄すぎる。
本編が終了し、エンドロールの一部が流れると加入したてのモーニング娘。4期メンバー(石川梨華・吉澤ひとみ・辻希美・加護亜依)が登場。「もしもーし!失礼しまーす!」という甲高い辻のセリフから始まったが、時間がない中での撮影と初の演技とあって滑舌も含めて雑さが目立った。特に石川の演技が凄まじく、「わかんないけどー、きっと走りたいからだよー!私たちとおんなじ!」や「だって青春だもん!今しかないものね!」という棒読みのセリフには圧倒されてしまう。きっと映画館で見ていた人も呆気にとられたことだろう。
拙い演技などがありながらも、第24回 日本アカデミー賞において新人俳優賞および話題賞を受賞したのだから、当時のモーニング娘。への注目度の高さが伺える。ぜひ時間ができたら見てほしい作品の一つだ。
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