倫理政経ポイント解説(倫理⑪)

こんにちは。今回は近代の自然観と民衆の権利について解説します。

近代科学

ルネサンスによって育まれた精神によって宗教的権威に縛られない態度が生まれた。それまではプトレマイオスなどの天動説が一般的だったがコペルニクスが地動説を唱えケプラーやガリレイがそれを継承した。

また、ニュートンは「万有引力の法則」を発見し、主著『プリンキピア』の中で精巧な機械のような存在として自然像を描き、機械論的自然観の土台を作った。

(イギリス)経験論

観察や経験に基づいて法則や原理を導く科学の側面に注目し、知識は後天的なものであるとした。

●帰納法

それぞれの事例を検証し、共通する一般法則を見つけ出す考え方。

   A   B   C
   ↘    ⇓     ↙ 
     ↘  ⇓  ↙ それぞれを検証、実験
     一般法則

●ベーコン

主著『ノヴム-オルガヌム(新機関)』
  『ニュー-アトランティス(新大陸)』

ベーコンによると学問はそれ自体が目的ではなく、自然に働きかけ人類に役立てるための手段であるとし、「知は力」とした。

日常生活における偏見や思い込みをイドラとよび、4つのイドラを規定した

①種族のイドラ

人間が生来持つ精神や感覚の誤り

②洞窟のイドラ

環境によって身につけた偏見

③市場のイドラ

人間同士の交わりにおける言葉の不適切な使用から生じる

④劇場のイドラ

権威を無批判に受容することで生じる

●ロック

著書『人間知性論』で心は最初は「白紙(タブラ・ラサ)」であるとしすべての知識は経験から始まるとした。

●バークリー

主著『人知原理論』で抽象観念を否定し、「存在することは知覚されることである」とした

●ヒューム

主著『人性論』

認識論より出発し人間の知覚(人間の心に表れるもの全て)を印象と観念に分け、全ての観念は印象から生まれるとした。

また、因果関係には蓋然性しかなく必然性はないとしたほか、人間の心をたんなる「知覚の束」ととらえた。

(大陸)合理論

万人に共通する生得観念を認めそれを前提に演繹的推理を行い結論へ達するという立場。

●デカルト

誰にとってもどのような場合でも確実で疑いようのない原理(明晰判明な原理)を探し求め、一切を疑い、そのように考える自己は確実に存在するという結論に至った。「我思う故に我在り」という言葉はそのことを表している

思考する自己の理性(良識)を第一原理として論証を積み重ねすべての知識を導き出す方法が演繹法とよばれる。デカルトは方法の具体的な運用規則として

①明晰判明なもののみを真と認める明証性の規則
②問題を小さな要素にまで分割する分析の規則
③単純なものから複雑なものへと認識を合成する総合の規則
④見落としがないように枚挙する枚挙の法則

をあげている。

デカルトは精神によって明らかに存在すると判断される限り外的事物を確実に実在すると考え、物体が精神と並ぶもうひとつの実体であるとする物心二元論を主張。

精神と物体は互いに独立して存在し、人間の身体は精神の認識の対象であるかぎり身体も機械的な物体だとした。(心身二元論)

一方でデカルトは精神と身体の結合も重視し、情念は身体から生起し、精神に影響を及ぼしているものであるとした。また、徳はそれらを統制することであるとし、それを可能にするのは「高邁の精神」にほかならないとした。

●スピノザ

デカルトの影響を受け、主著『エチカ』では自然そのものを神と捉える汎神論(神即自然)を唱える。

●ライプニッツ

ライプニッツはロックの『人間知性論』を批判し、生得観念の重要性を主張、独自の合理論哲学において全ての存在の最小単位をモナド(単子)としてそれらは神によって造られた宇宙の中ではあらかじめ調和が保たれている(予定調和)と主張した。

また、「究極の問い」においては神の存在論的証明を行い「悪の問題」に悩んだという

社会契約説の展開

17世紀のヨーロッパは王権神授説に基づく絶対王政であったが、ルネサンスや宗教改革を経て新しい社会秩序の模索が行われ始め、グロティウスの自然法に関する主張によって国家や政府が形成される前の自然状態の想定と自然状態での権利(自然権)を保証しようとする社会契約説が生まれた。

●ホッブズ

社会契約説の基礎を作った。

主著『リヴァイアサン』

自然状態とは「万人の万人に対する闘争」の状態であるとし、平和と安全のためにすべての自然権を統治者に譲渡することを主張。
結果的に絶対王政を肯定することとなった。

●ロック

主著『統治二論』

彼によれば自然状態とは自然法に基づき各人の自由・平和・平等が程よく保たれている状態だとし、各人は自然権として生命・自由・財産の所有権をもつとした。

しかし、自然状態では所有権を巡る争いを誰も止められないとして、国家の代表である政府に自然権を信託することを主張。ただし政府が自然権を濫用する場合には政府に対する抵抗権革命権が認められるとした。

このようにロックは国家の主権が人民にあることと政府が法の下にあることを主張。また、国家権力の分散も主張。

●ルソー

主著『社会契約論』(正式には『社会契約、または国法の諸原理』)

フランスブルボン朝の絶対王政下での封建的な旧制度(アンシャンレジーム)を批判したフランス啓蒙主義の人物の中でも※のように理性を重視するのではなく自然な感情を重視した。

※三権分立論のモンテスキューや『哲学書簡』を著したヴォルテールや百科全書派のディドロ、ダランベールなどが代表例

啓蒙とは・・・無知の人に正しい知識を教えて正しい方向へと導くこと

『人間不平等起源論』のなかで社会の腐敗、堕落を厳しく批判する

彼によれば人間の自然状態は平和で平等で自由なものであったという。しかし、産業の発達によって財産の私有が生まれ、それに伴い支配と服従の関係、悪徳と不平等が社会に広がった。

理想の自然状態を重視する彼の思想はしばしば「自然に帰れ」という標語であらわされている。

また、ルソーにとっての理想国家は人々が本来持つ自由と平等の共通意志を体現する一般意志に基づいて成立した国家であるという。

自己とその権利を一般意志に委ねることで人は市民的自由を得る。その政体が直接民主制であるとした。

※ルソーは一般意志に対し、利欲を優先する個人の意志を特殊意志、特殊意志の総和を全体意志とよんだ。


今回は以上です。次回はカント、ヘーゲルを解説します。閲覧ありがとうございました。スキしてくれると励みになります。参考になれば幸いです

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