ほんの些細なもの
昨日、盛大にこけた
ベランダに出ようとしたその時、身体が急に軽くなったのである。
今現在近く出展する展示会の制作中であり、仕事で片足を悪くしたので注意して生活しているさなかの出来事。人間はしらず弱い所を守るのか頭部と悪い方の足は無事であるが、脇と片腕とおしりと太股は青タンが出来ていると思う。ああ・・利き腕は無事だったから制作は出来るなと思ったのだが、そういえばここ二日あまり集中できなかった印象がある。
このご時世、いろいろ考える事が多い。
変化の多い年。
今まで出来た事が、制約される年になった。
美術館やギャラリーに半年以上行ってない。ライブもリモート、外食も買い物もあまり行っていない。自己判断で動けばいいが、家庭の事情でそうもいかず日々悩んでいる。
そんな自分が今から離れる時は、創作する数時間。
白い紙に紅茶を下塗りし、下書きしたうえからつけペンで形を掘り起こす作業。たかだか絵だという人もいるが、自分には何よりも代えがたいものである。たった数十センチの紙の上には、日々調べた事や感じた事・・心に留まった事や澱みやありとあらゆるものが詰まっている。
この制作活動を邪魔されることは、何よりも嫌いである。
でも休憩や食事を挟まないと描けなくなるし、生活に必要な事はしなくてはならない。そこで必ず自分は三つの事を必ずしている。
まず、制作中には音楽をかける。それも制作している作品のテーマに合った曲を終わるまで流し続ける。洋楽からクラシックからjazzとロックやヘビメタと言われるものまで合うと思ったら何でも聴く。音楽というのは精神を安定する作用もあるらしいのでそれもあるが、詞を聞いて歌声と楽曲で感情を絵に入れる作業を学生時代からやっている。一時期、絵が描けなかった日々があるがその中でも音楽は必ずかけている。
音楽をかけていると制作のとめどきも分かる。曲の中間からもう何度も聞いていると曲の終わりが分かる。そうすると自然にこの場所で終わるというのが分かるので手を止められるのだ。絵を描くことを再開したばかりの頃は勢いで描いていて失敗が多かったが、最近このやり方でやっている。
そして、私は神経が過敏で眼精疲労と遠視と乱視の持ち主である。とにかく目が疲れる。そして人の中に居るといろんな表情や感情が情報として入ってくるのでえらく一日が疲れる。愚痴をこぼした知人に良く生きていると驚かれるぐらいの神経質である。そこでイメージトレーニングをする為にキャンドルを灯す。(写真によくのせている#アグモキャンドル)何でもよいわけではない。匂いが気になったら却下。色が派手過ぎたら却下。溶け方があわないと集中できないし逆に面白みのない見た目であったら買う気も起きない・・めんどくさい・・自分でも本当に面倒な人間だと思う。
だからきっと日々疲れる。
寝る前や制作や・・ああ疲れたとうなだれた時、よく灯す。日々の疲れや人の気や心の澱みを炎で燃やし浄化するイメージを持つのだ。
「炎には癒しのリズムがあると言われる1/f」というモノがあるそうだ。アグモキャンドルを知ったのは初個展の時なので3年以上つかっているが、ありがたい事に今では制作する形のイメージ・・モデルにもなってくれる。
そして最後に私に必要なのは、散歩である。
それも木が多い所が重要である。自分のテーマで枯れ逝くものを描いていきたいという事がある。綺麗なものは好きだが、それを引き立たせるのには影が必要である。輪郭を形成し色合いの強弱を決めるのもが影だと思っている。自分の美しいものを描くならその影を描きたいと思っている。
そう思うようになったのが絵を描けない数年に従事した、介護という仕事である。認知症のホームで働き何十人という方々の話を聞き姿を見てきた。綺麗事ではない現場である。実際に私は足を悪くした。夜勤時のある朝・・その時にはもう膝に痛みがあり休むことを上司に話していたのだが、あと数ヶ月が一瞬で歩けなくなるそんな現場である。
妄想と幻覚の世界を彷徨われている方々が一時こちらに戻ってくることがある。苦しい過去と今の自分に対する不安の中、他人を労わることも出来るそんな方々に出会ったからこそ今のテーマに行きついたとも思える。
今「倒木」をテーマに描いている。
人の都合で切り倒された木々、自然の驚異でなぎ倒された木々・・昨年から今年にかけてそんな木々をよく見かけた。その一つ一つに個性があり、枝の伸び方も存在していた場所によって変わり個性がある。であるのなら、人の人生と倒木‥この姿は何か似ているものがあるのではないのかと思ったのである。倒されて終わりではなく、そこにはその木が存在していた記憶があり、その幹の痕を見ると新しい芽も芽生えているのだ。そんな事が気付ける散歩はとても創作に大事なものと言える。
ちなみに空を見ると悩みが少し減る。
絵を描くには生きるには、金銭的なモノも必要だ。
だがそれだけを見ていると足をすくわれる。
自分は何が好きなのか、何をしたかったのか、何を大事にしているのか。
音楽
キャンドル
散歩
私にとって、創作のマストアイテムである。
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