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【やさしい】PCOSへの対応【不妊症ガイド】

たなかゆうすけです。

今回は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の続きです。

PCOSは症候群(syndrome)ですので、注目すべきは臨床症状です。主な症状としては、月経周期異常や高アンドロゲン症状に伴う男性化兆候(多毛、にきび、肥満など)、インスリン抵抗性(2型糖尿病、脂質代謝異常症、心血管イベント、メタボリックシンドロームなど)がありますが、妊娠する上で問題となるのは、排卵障害に伴う月経周期異常です。

ですので、妊娠を考える上でのPCOSへの対応は、排卵障害への対応となります。もちろんPCOSは排卵障害だけの疾患ではなく、内分泌異常も重要ですが、今回は排卵障害にフォーカスを当ててお話します。

排卵障害とその対応については、このあたりでお話しています。

PCOSは、『排卵するものも排卵させる力もあるが、排卵しない』のパターンになります。基本的には排卵障害としての対応は通常の排卵障害とほぼ同じですが、PCOSならではの特別な部分もあります。


インスリン抵抗性

PCOSには、インスリン抵抗性が背景に存在することがあります。インスリンとは血糖値を低下させるホルモンですが、これが効きづらくなっていることがあり、これをインスリン抵抗性と言います。インスリン自体の作用が減弱しているというよりは、インスリンが効果を発揮しにくい体質になっていると考えてください。このインスリン抵抗性の指標には、一般的にHOMA-IR(Homeostatic Model Assessment for Insulin Resistance)が用いられることが多く、空腹時血糖値×空腹時インスリン値÷405で計算します。正常は1.6未満で、2.5以上をインスリン抵抗性ありと判断します。ただし、基本的に空腹時血糖値が140mg/dL以下の場合に有効で、それ以上であれば有効性は低下します。

インスリン抵抗性ありと判断した場合には、インスリン抵抗性改善薬であるメトホルミン塩酸塩(メトグルコなど)を使用することがあります。メトホルミンはビグアナイド系経口血糖降下薬ですが、吐き気、嘔吐(おうと)、腹痛、下痢などの胃腸症状、体がだるい、筋肉痛、呼吸困難感などの症状が出現することがあり、注意が必要です。

インスリン抵抗性は肥満を背景に持つことも多く、BMI(Body mass index)が25kg/m2以上の場合は、減量が第一選択になります。目標は2-6ヵ月で5-10%の体重減少です。目標は身長(m)×身長(m)×22の標準体重までの減量ですが、5%程度の減量でも排卵の再開や内分泌代謝動態の改善には効果があると言われています。


手術療法

特殊な手術療法として、腹腔鏡下に両側卵巣に小さな穴をたくさん開ける腹腔鏡下卵巣開口術(laparoscopic ovarian drilling;LOD)を行うこともあります。多孔術とかドリリングと言われることもあります。手術後には排卵と妊娠率の改善や、内服薬への反応改善を認めますが、負担が大きいため実施することは多くありません。


今回はこのくらいにしておきます。



妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…

たなかゆうすけでした。

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