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アイソトープ治療その1 決断の経緯と葛藤 | バセドウ病体験談#10

きっかけは医師の勧め

アイソトープ治療を考えるきっかけは、医師の勧め。主治医の不在時に診てくださった医師が「バセドウ病歴がこんなに長いのにアイソトープ治療を勧められていないのか」と驚いたことがはじまりでした。

アイソトープ治療を強く勧められて、資料を貰ったり詳しい説明を聞くことに。

バセドウ病を発症した2013年以降、このような話は初めてだったので、最初は戸惑いしかありませんでした。

アイソトープ治療ってなに?

そもそもアイソトープ治療とはどのような治療なのでしょうか。

甲状腺の細胞は、食物中のヨウ素を取り込み、ヨウ素を材料として甲状腺ホルモンを作り、血液中に分泌します。また、放射性ヨウ素も食物中のヨウ素と同じように甲状腺に取り込まれ、甲状腺にとどまり放射線の力によって甲状腺細胞の数を減らします。そのため、甲状腺のはれが縮小し、甲状腺ホルモンの産生や分泌が減ります。
この作用を利用してバセドウ病や甲状腺がんの治療を行っています。この治療は放射性ヨウ素を使用するため特別な設備が必要であり、実施できる施設は限られています。

出典:アイソトープ 放射性ヨウ素内用療法(伊藤病院HP)

治療自体は放射性ヨウ素のカプセルを服用するだけというシンプルなもの。

ですが、治療の前後でヨウ素制限や眼科の検査があります。治療自体よりも、この検査の方が時間も労力もかかるため大変です。

悩みその1 放射性ヨウ素を服用する不安

まず一番心配だったのがこれ。恐らく、ほとんどの方はここで悩むのではないでしょうか。原爆や原発事故を経験してきた日本人にとって、放射性ヨウ素を服用して被曝するということにはかなりの抵抗があると思います。私もそうでした。

どうしても不安が拭えない中で色々と調べてみて、当時私の中で一番不安を払拭できた根拠はこちらでした。

 バセドウ病に対して放射性ヨウ素を使った初めての治療の試みは、1941年にアメリカの2つのグループで行われました。その後、多くの人が放射性ヨウ素治療(アイソトープ治療)を受けてきましたが、治療量のアイソトープが白血病や甲状腺癌を起こすという証拠はなく、アイソトープ治療は安全と考えられております。
また、この治療には手術で見られる傷痕などの心配がなく、甲状腺の腫れが取れ、美容的にもアイソトープ治療は優れております。現在、アメリカではバセドウ病患者の80-90%がアイソトープ治療を受けています。日本でも、1998年から500メガベクレル(13.5ミリキューリー)までなら専門医療機関の外来で治療ができるようになりました。患者さんにとっては福音です。ただ、病状によっては入院して治療する場合もあります。

バセドウ病のアイソトープ治療について(公益社団法人日本アイソトープ協会)

出典元の公益社団法人日本アイソトープ協会のホームページでは、他にもアイソトープ治療に関する詳しい説明が記載されています。

引用の通り、アメリカではポピュラーな治療法であること、また歴史もそれほど浅くないことから「受けてみようかな」という気持ちに傾きました。

余談ですが、アイソトープ治療から約1年後のこと。健康診断を受けに行った時に内科検診を担当してくださった女医さんがアイソトープ治療経験者でした。あまりたくさんお話はできなかったのですが、年配の方で、アイソトープ治療を受けたのは随分前のような雰囲気でした。女医さんでもアイソトープを選択するのだなと少し安心した事を覚えています。

ですが近年、論文でアイソトープ治療のリスクも指摘されています。「長崎甲状腺クリニック」のホームページによると、令和1年の日本甲状腺学会のセミナーにおいて、最新の論文によりアイソトープ治療の数十年後の発癌リスクの増加が指摘されたとのことです。

そのことが発表された当時、非常にショックを受けました。

正直、今でもアイソトープ治療が正しかったかどうかはわかりません。

治療の選択というのは、正解が無いから本当に難しい。でも、当時の私にとってはそれが最良の選択肢でした。悩んで考えて調べて、ベストを尽くして出した結論がアイソトープ治療でした。

今の私にとって大切なのは「アイソトープ治療は正解だったのか」よりも「これから先をどれだけ良くしていくか」ということです。

悩みその2 入院と外来

アイソトープ治療は、入院するか外来にするかの二択です。

私が通っていた伊藤病院は使用する放射線量が多い場合のみ入院という形を取るとのことで、外来による治療が決定しました。使用する放射線量が一定値を超える場合は、法律で入院が義務付けられていると医師から説明を受けました。

インターネットで調べた際には、小さいお子さんがいるので入院を選択したという方を見かけました。アイソトープ後しばらくは、小さなお子さんや妊婦さんとの接触が禁止されます。病院によっては入院という選択肢を取ることもできると思いますので、該当する方はぜひ医師に相談してみてください。

悩みその3 低下症との付き合い

アイソトープ治療後は低下症になる場合が多いのですが、それは治療成功の証ともされています。そのため、アイソトープ治療をするということは甲状腺ホルモン剤(チラーヂン)を一生飲み続ける覚悟も必要です。

副作用の多いメルカゾールを約6年飲み続けた私にとって、むしろそれはありがたいことのように思えました。

決断理由その1 結婚と妊娠出産の希望

当時、私は結婚を間近に控えていました。結婚をきっかけに、妊娠出産のことも考えるようになっていました。

結婚して、家庭を築いて、将来的には子供に恵まれたい。

それは、私にとって学生の頃から持ち続けていた夢でもありました。

アイソトープ治療後1年は妊娠不可(期間については半年~2年など色々な見解があるようです)なので、当時26歳だった私にとってはタイミング的に「治療をするなら今だ」と感じていました。

メルカゾールは妊娠初期は服用を控えなければなりませんし、妊娠中にバセドウ病を再発すれば胎児への影響も懸念されます。ですが、チラーヂンなら妊娠中も授乳中も問題なく飲むことができます。

決断理由その2 再発の恐怖

再発を繰り返す不安定な状態と、再発を重ねるごとに重くなる症状。当時はもう「これ以上の再発には体が耐えられない」と思いました。それくらい心も体もボロボロでした。

もしも妊娠をきっかけにバセドウ病を再発したら、私の体が出産に耐えられるとはとても思えませんでした。

バセドウ病のトリガーはどこに潜んでいるか分かりません。人生のどこかのタイミングでまたいつかバセドウ病になるかもしれない、それは私にとって本当に怖いことでした。そのため、再発の恐怖に怯えなくて良いということは私の人生において非常に重要で、それは人生を変えるための選択肢でもありました。

さいごに

アイソトープ治療を検討されている方は、本当に受けるべきか不安で悩まれると思います。ライフステージ、金銭面、アイソトープ治療を受ける病院の選択、考えたり決めたりすることはたくさんありますが、ぜひ納得の行くまで検討してみてください。

真剣に悩んで考えて決断したら、責任と自信を持って進んでいくこと。決断を正解にできるのは、今この瞬間の自分だけです。

アイソトープ治療の決断にあたり、この記事が少しでもお役に立ちましたら幸いです。

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アイソトープ治療の体験談は「その1」「その2」「その3」に分かれています。ぜひこちらの記事もご参考ください。

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バセドウ病体験談の記事まとめ↓

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