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バセドウ病や橋本病、甲状腺疾患を持っている方との上手な接し方

バセドウ病になってから、社会に出て働く中で、家族や友人と過ごす中で、感じたことがあります。

ひとつは、病気を支える側も大変だということ。そしてもうひとつは、バセドウ病でない人はバセドウ病の人とどう接したら良いか分からないということ。

前に勤めていた会社でも、私にどう接すれば良いか、どうすれば支えられるのか、悩ませてしまっているなと感じる場面が多々ありました。

Twitterでも、ご家族や身近な方がバセドウ病で、どんな風に接したら良いか分からないというご相談を頂くことがありました。

今回は私の体験をふまえて、バセドウ病をメインに甲状腺疾患を持っている方とどう接すればよいかを考えてみたいと思います。

バセドウ病の症状を正しく理解する

基本的なことですが、バセドウ病がどのような病気なのかを知ることが一番大切だと思います。もちろんベストは書籍で学ぶことですが、インターネットでも「バセドウ病 症状」などで検索すると沢山の情報がヒットします。

もし職場にバセドウ病の方がいらっしゃるなら、管理職の方にとってバセドウ病の正しい知識はなおさら必要です。力仕事や持久力が求められる仕事の場合には、病気を考慮しないと本人の体調が崩れることはもちろん、会社の損失に繋がるような重大なミスに繋がりかねません。

学校の場合も同じです。バセドウ病の症状が酷い状態では、動悸や息切れで階段をのぼることすら難しい場合があります。

安静にしていても脈拍が120を越えることが普通に起こり得ます。

そのような状態で、体育や運動系の部活で健康な人と同じようなメニューをこなすのは非常に危険なことです。

でも、本人が我慢してしまったら、あるいは誰かが我慢させてしまったら、見た目ではわかりません。

風邪や骨折とは違って目に見えない病気だからこそ、正しい知識と理解が求められます。

勤めていた頃、私はデスクワークでしたので重大なミスということはありませんでした。しかし、真夏の時は通勤するだけで精一杯、通勤途中で具合が悪くなり遅刻連絡をする日も多く、亢進状態による不眠症でフラフラ、真っ青な顔で休憩室へ直行…といった具合でした。

重い荷物を持ってくださったり、階段でフロア移動しなければいけない業務は変わってくださったり、小さな心遣いが身に染みるほどありがたかったです。

数値が良くなる≠元気になる

バセドウ病などの甲状腺疾患は、基本的に血液検査の数値でその時々の状態を判断します。しかし、検査結果が正常になっても不調を訴える方も多いです。

私自身、バセドウ病の数値はそれほど酷くはないけれど、再発を繰り返したり、数値が安定しても体調が安定しないという不安定タイプでした。

心療内科の先生によると、バセドウ病などの機能亢進症よりも、橋本病などの機能低下症の方が、数値が正常範囲内になっても不調を感じやすいとのこと。

なお、機能亢進症とは「代謝が良くなりすぎてしまっている状態」、機能低下症は「代謝が悪くなりすぎてしまっている状態」のことを指します。

「完治」ではなく「寛解」

バセドウ病は「完治」ではなく「寛解」という言葉を使います。風邪や骨折のように完全に治ることはありません。つまり、一生付き合っていく病気であり、再発もあり得るということです。

私の場合は何度も再発を繰り返し、「再発とは言い切れないが数値が悪い」という診断が下ったこともあります。私にとってバセドウ病は、曖昧で不安定な状態が続く病気です。

そしてバセドウ病は、目には見えない病気。症状も多岐に渡るためひとつひとつ説明することも難しく、同じバセドウ病の人でも症状や寛解までの期間が全く異なる場合もあれば、元気そうでも見えないところで苦しんでいる場合もあるのです。

「元気?」よりも「調子はどう?」

バセドウ病を経験していないと、恐らく感覚的に理解しにくいのが「体調に波のある病気」ということです。

昨日は体調が良くなかったけれど、今日はいつもより動けそう。今日は元気だけど、明日や一週間後までは分からない。

私の場合、気候、気圧、あらゆる要素に心と体が敏感になり、その日の体調が左右されました。

だから、勤めていた頃にどう答えたら良いのか一番困ったのが「元気?」という質問でした。

社交辞令的な挨拶に対して、何か一言で簡単に返事をしたい。かといって「元気です」は嘘になりますし、「元気ではありません」では場の空気を微妙にしてしまうかもしれない。

悩んだ末に「いつも通りです」「ぼちぼちです」と、少しぼかして答えることが多くなりました。

そんな中でとても助かるのが「今日の調子はどう?」と聞いてもらえること。幸い、私の上司は身内にバセドウ病の方がいらしたので病気の特徴を理解しており、このように聞いてくださることがよくありました。

仕事をする上でも「元気かどうか」を共有するよりも「今日の調子はどうか」を共有した方が、一日のタスク調整がしやすくなります。

家族や友人の場合にも「今日の調子はどう?」と聞いて貰えるととても答えやすく、私なら「気にかけてくれているんだな」と少し心が救われる気持ちになります。

また調子が悪い時なら「今日はあまり無理はできないかも」など、自分からはちょっと言いにくいな…と思っていることも言いやすくなるので、とても助かります。

バセドウ病と心のつながり

私はバセドウ病発症とほぼ同じタイミングで、うつ状態を発症し、さらにパニック障害も経験してきました。

一般的に、機能亢進症ではイライラしやすくなり、機能低下症ではうつ状態になりやすいと言われています。

うつ病やパニック障害だと思って心療内科に通い続けていたけれど、実は甲状腺疾患だったということも少なくないようです。私の通っていた心療内科の先生は、まず一番最初に血液検査で甲状腺疾患の値を確認すると仰っていました。

病気のせいで心のコントロールが上手くできなくなってしまうのは、本人にとっても周囲にとっても辛いこと。

誤解や必要以上の辛さを生まないためにも、日頃の些細なコミニュケーションの積み重ねがとても大切になってきます。

さいごに

病気というのは、本人はもちろんですが、支える側の人の負担も非常に大きいものです。時には見守り、時には支え、時には寄り添い…もしそんな気持ちを持ってくださっているとしたらそれはとてもありがたいことです。ですが、本人も支える側も決して頑張りすぎないことが一番大切だと思っています。

そして、病気の辛さというのは体験した本人にしか分からないもの。それを無理に分かったつもりになる必要もありません。「分からないから教えてほしい」「分からないけど寄り添いたい」という気持ちを伝えてもらうだけでもとても救われるものです。

支える側も支えられる側も、病気を乗り越えるために一致団結できたら。それは本当に難しいことで、私自身、何年も悩み続けてきたことでした。

実家や職場に分かってもらえず、旦那さんとは何度も衝突しました。

今となっては笑い話ですが、それはもう、何度も壮絶な戦いをしました。

職場に関しては最後まで折り合いが付けられず退職することになりましたが、実家と旦那さんは、紆余曲折を経て今では最強の味方に。

諦めずに何度も何度も粘り強くコミニュケーションを取り続け、やって貰ったことにはきちんと感謝を伝えました。

辛い時には辛い、悲しい時には悲しい。人前で感情を顕にするのは苦手でしたが、見栄もプライドも捨てて何度も何度も泣きました。

やりたいけどできないことをきちんと認めて、些細でもできることを探して、そういうことをひとつひとつ勇気を持って自分なりに伝えていきました。

ほんとうは私にとって、人を頼るよりも、自分が我慢することの方が何百倍も楽です。

でも、それじゃ何も変わらない。変えられない。

私が変わらないと、この病気は終わらない。そう思いました。

何年もかけて理解してもらう努力を重ねてきた過程と、その結果得たものに、今ではかけがえのない価値を感じています。

今回の記事、いかがでしたでしょうか。甲状腺疾患を持つ方との接し方について悩んでいる方にとって、この記事が少しでも参考になれば幸いです。


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