『ダンボールバチェラー』という漫画
この前終わったんだけども。
物流センターの仕分け現場に、たった一人、若くてかわいい女の子がやってくる。
途端に自分磨きを始める者、夢を思い出す者… そこから起きる”負け組”男たちの悲喜こもごも。
という内容だったんだよね、これ。
第1回で、その女の子が登場するんだけども、
ありていにいって地獄でしかないな、これ。
正直そう思いましたね……。
そもそも、声優を目指すような華奢な女の子が肉体労働ガチの仕分け現場で働く?
メリットがないよね。
夢にも関係ないし、周りはコミュ障のおっさんだらけだし、で。
もしそんな配置になったら一日というか、数時間経つ前に辞めるでしょ、まじで。
「この状況はヤバい!」って思わない女は
①本人がヤバい
②性能がヤバい
この二択。言い切る。
これね、本当に女側から見ると、地獄でしかない。
それだけありえないってことなので、つまりこれは、
「そういう状態になったらどうなるか」
というシミュレートしてみたお話なのですよ。
ただこれは「男どもから見て」美女獲得合戦であって。
女の子にとってはまったく全然そうじゃないってのが前提。
そのうえでの悲喜こもごもってこと。
ぶっちゃけ、自分は1話で興味失ったんだけど、家族が
「面白いから読め!」
というので最後まで読んだ。付き合いで。結論からいうと、そこそこ楽しめた。
どこら辺で? というと、
「若くてかわいい女と付き合いたい!」
とネットなどで見かける、非モテ男子のメンタルを理解するのに役立った。
なお、この漫画にはセクハラも、ストーカー行為も、犯罪もない。
ですので、安心してご利用いただけます。
男たちのリアクションはリアルな反面、女性はどこまでも都合のいい善人の天使ちゃん。
その辺でもう
「ああ、この女の子は何かの象徴であって、人類ではないな」
と気づく。
彼女は、男どもが無くした
人を好きになる気持ち…
なにかを目指す気持ち…
もっとよく思われたいという気持ち…
頑張ろうと思う気持ち…
以前確かに存在していたピュアな自分…… を再発見する、ための装置なわけ。
要は、しょぼくれた男たちの坩堝に放り込まれた触媒、それがヒロインなんだよね。
だから、彼女は正論ときれいごとを吐き続ける。
そうでなくては触媒にならないから。
実は、この女の子、どこかで
本当は全然可愛くない子でした
本当はおばちゃんでした
本当は実在しませんでした
とかいうオチがくるのかなとか思ってたんだ。
だって、この男たちの見ている「彼女」は幻想だからね。
あくまで、女の子に自分の願望や憧憬を投影して、自分のなかに化学反応を起こしてるだけのこと。
どこまでも鏡に向かっての自慰行為なの。
彼女の言葉や態度で触発されるけど、人間関係は「同僚」以上のものではない。
さらに、個人的に仲良くなったりとか、感情的なつながりも起きない。
もうね、ずーっと「職場の世間話」以上のことはないわけよ。
ゆえに、実際の「女の子」である必要は、全然ない。
よく言われてることだけど。
どんだけ性格悪くても、太ってようが外見が劣っていようが
男ばかりの集団にいる数少ない女はものすごくモテる
という事実がありんす。
この「女の子」がもっとグレードダウンしてても、男の集団では似たことが起きるんだよね。
その点はリアル。ただし、漫画でのスペックはファンタジー。
しかーし。
そんなことはなく、彼女は実在するらしいw
で、男たちはマドンナを取り囲んだまま、勝手に盛り上がって自己完結する。
これもう彼女はCGとかバーチャルでもいいんじゃ? というくらい、ほんとに一方的。
あ、あれ思い出した。夏目漱石の『こころ』
もう、Kと先生と私、3人の男で勝手にやってろよ、お嬢さん巻き込むなよっていう感想。
ただ、それはそれでありかなあ……、とも思った。
だって「若くてかわいい女にモテたい!」って騒ぐ層は、相手なんか見ちゃいないわけ。
何故なら、彼女はアイテムだから。
レアアイテム。
それを手に入れたら、ダメな自分、諦めた自分、劣った自分… そういう自分が
起死回生の大逆転してハッピーライフになるチートな存在。
と思ったら名前があった
そういうのは「ピーターパン症候群」っていうのかと思ってたけど、違うらしい。
っていうかこれ、真希波・マリ・イラストリアスじゃん。
wikiにもあったわ。ひとつ賢くなった。
それはともかく。
漫画では、それから一歩踏み出している分はかなりマシなのだけど、
「女を何だと思ってんのかな」っていう感じはぬぐえない。
価値観をアイコン化して、モノ扱いしてるのは変わらんの。
だからこそ、非モテ男子の勝手な思い入れを理解できる、ともいう。
とか思ってたわけさ。最終回までは。
彼女を取り囲んだまま、回春素晴らしい! で終わるんかなって。
キャンプファイヤー & マイムマイム で祭りは最高潮!
そして、相変わらずの日常…… みたいに?(それも嫌いじゃないぞ)
違った。
掲載誌の都合もあったんだと思う。
多いだろう男性読者の夢を叶えるというか。
最終回、ヒロインは尋ねられる(セリフはウロ)。
「気になる人は見つかったかい?」
→いや、彼女は出会いを求めて来たわけじゃないけど?
お前らにはそうだったかもしれんが、彼女は働きに来たんだよ???
この辺で「あれ、何言ってんの?」
つまり、「男どもの勝手な争奪戦」という前提が、相手にもある程度共有されているような言い方になってるわけよ。
さらに。
「ここに最初に来て話しかけたやつ、それがそうさ」
→仕事に来てるんだから、必要があれば話しかけるだろうが!
それとも黙ったまま作業を完結させろと???
初日、場所がわからなくて入口で道順聞いたら守衛さんに恋するのかよ!!
そんなやつおるかい!!
脱力した。
勝手な妄想バチェラーを現実に帰着させてしまう。
その一方で、「なるほど」と思えなくもない。
こうだったらいいな、を、強引に実現させてしまおうという無理やりさ加減。
一般常識との認識の差がわかる部分でもある。
かように、認知の歪みとは業の深いものなのだな、と思った次第。
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