インド映画「きっとうまくいく」から見たインドのエンジニア社会の特徴
もう半年も前になりますが、コロナ禍の直前の2月にインドへ出張へいきました。
インドのムンバイへのフライトは10時間もかかるので、せっかくなので長いと言われているインド映画を見てみようと思い、アマゾンでも評判のよかった「きっとうまくいく」を見てみました。
何気なく見た映画でしたが、これがなんとインド人エンジニアを知るのにとても役立つ内容だという事がわかりました。
いくつか特徴をピックアップして紹介してみたいと思います。
1. まずは映画について
「きっとうまくいく」は少し前ですが2009年に公開された映画です。英文タイトルは「3idiots(3人のバカ)」でインド人にこのタイトルで伝えるとすぐにわかってくれます。
インドの工科大学に通っている仲良し3人組の話です。こう聞くとなんかのほほんとしたストーリーかと思われますが、笑いの中にも悲しみがあったり、スリルがあったり、ダンスのシーンももちろんあり、まさにインド映画という構成になっています。それゆえに前編、後編と分かれていてとても長いのですが、長時間フライトには持ってこいの映画です。
何よりインド、特にインド人エンジニアの特徴を知るのにかなり役立つ話になっています。
僕はフライトでこの映画を見て、そのあとインド人エンジニア社会を数日間体験しましたが、「ああこの関係ってまさに映画の中と同じだなあ」という場面を何度もみました。
ではその特徴を紹介していきます。
2. 同級生との絆が強い
まずインドの大学は基本寮生活です。それも1人一部屋ではなく部屋をシェアして生活しています。
ルームメイトとは四六時中顔を合わせます。それゆえに同級生とは深い絆が生まれます。
僕も中国留学のとき2人一部屋で1年半ほど生活しましたが、日本人のときは毎晩ビールを飲んで語り合ってから寝るのが日課になっていました。その他ルームメイトだったイタリア人とはその後20年以上に渡って交流があり、今でもときどき連絡をとったり、ときには会ったりしています。
これは何に影響するかというとその後のビジネスネットワークが同級生によって形成されているということです。
2019年の7月にバンガロールに行ったときにIITカンプール出身の同級生グループをまとめている人と会いました。彼はいろんな仕事を元請けして、同級生に回しています。
そのネットワークを使えば、仕事をお願いしたいときに彼にお願いすれば様々なエンジニアを紹介してくれます。特にその人たちは全員IITカンプール校出身というかなり強力な軍団なのです。
彼らの絆は大学時代に築かれ、信頼も厚いので、このネットワークに繋がると金脈を掘り当てたも同然です。
[写真] IITカンプール校同級生で作られたグループの人たちとの出会い
3. 先輩、後輩の上下関係は厳しい
同級生との絆の深さはまさに映画の根幹なのでよくわかるのですが、先輩との関係はどうなのでしょうか?
それは彼らが新入生として入ったときの場面でよく現れています。
大学入学すぐに先輩が開くイベントがありました。それはみんながパンツ一丁でイベントに参加しないといけないのですが、主人公の一人ランチョーだけはイベントに参加しませんでした。
そのときの先輩の怒り方や周りの同級生の怯え方を見るとかなりの上下関係の厳しさが垣間見えました。もちろん映画の中の世界ですが、昔の日本の体育会系のノリといったような光景でした。
これは何を意味するかというと仕事をするにしても、上下関係というのはインド社会ではあるようです。
インドではカースト制度があって差別が厳しいというイメージがありますが、そういうものとは別に先輩、後輩もしくは上司、部下の関係は厳しいという印象です。
[写真] 提携しているインド人開発チーム。和気あいあいとはしていますが、それなりに上下関係も存在します。
4. 就職に関しては大学がコントロールしている
卒業を間近にして、主人公の一人であるラージューは成績が悪いため(&校長への悪さをしたため)、卒業を取り消されそうになります。それを受けて彼は自殺未遂を起こすのですが、大学を卒業し、良いところに就職するには大学の影響がかなり強く感じられます。それほど大学が学生の就職をコントロールしているということです。
実際にIITの卒業生を雇用にするには大学を通してでしか学生と接触することができません。時期も決められており、大学が決めたルールを守らないと外国の企業でも面接さえさせてもらえません。
つまり優秀なインド人エンジニアを雇おうとするには、まずは大学とのコネクションをつくらないといいけないということです。
[写真] プネーにある大学を訪問したときの様子。大学の計らいで多くの学生が集まりました。大学側も日本に期待をしており、そのことに対しとても素直に話を聞いている様子がよくわかりました。
ということでやや強引な展開もありますが、映画を通じたインド人エンジニア事情を紹介しました。
海外に行くまでの長時間フライトではぜひ現地の映画を見るのがおすすめです。その国の事情が垣間見れますし、なにより現地の人との共通話題にもなります。語学の勉強にもなるかもしれません。
今コロナ禍で、いつ海外にいけるかわかりませんが、次回海外出張がある際はハリウッド映画や日本映画だけでなく、ぜひ現地の映画を見てみてください。
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