公正性を欠いた判断がチームを毀損する
職場での誤解やトラブルは避けられないものですが、それにどう対応するかはチームの健全性を左右します。今回は、私が十数年前に在籍した開発チームでの嫌な思い出を例に、考えてみたいと思います。
誤解が生じたケース
ある会社の本棚にはプログラミングのリファレンス書籍が置いてありました。私のいたチームメンバーの一人が、同じ書籍を個人的に持っていて自分の机に置いていたところ、他チームから「共有の書籍を独占している」とのクレームが入りました。
リーダーがチーム内の会議中に当人に確認すると、当然ながら当人はそれを否定しました。ここで、リーダーは当該メンバーに「名前を書いておくべきだったのではないか」と指示しました。
私はこの事を思い出すと、今でもじんわりと嫌な気持ちになります。
リーダーの対応の問題点
このケースでは、誤解を受けた当人には全く非がありません。にも関わらず、リーダーが「名前を書いておくべきだったのではないか」と指示したことで、誤解を受けた側にも非があったというメッセージを伝えたことになり、不公平です。
リーダーがまず取るべき行動は以下の2つだったと思います。
落ち度がないメンバーに不快な思いをさせたことについて謝罪する
クレーム元のチームに誤解であったことを説明する事を当該メンバーに確約する
名前を書くなどの再発防止策はその後で良かったはずです。
これは私の想像ですが、「そのまま事実を伝えると、誤解をした他チームメンバーの顔を潰すことになるので気まずい」というリーダーの私心があったのではないかと思います。何にせよ、チームの公正性を歪める行為であり、不健全です。(ついでに言うと、そもそも同じ現場に同じ書籍を持っている人がいるのは大した偶然でもないので、クレームがあった事自体今でも理解に苦しみます。クレーム主は、仕事に関する本を人生で一度も買った事がなかったのでしょうか。)
公正性を重視するチームの健全性の重要性
チームの健全性を保つためには、全員に対して公正で透明な対応をすることが重要です。以下のポイントを重視すべきだと思います。
毅然とした対応: 他チームに対しても、誤解が生じた際には事実を正確に伝え、非のないメンバーを擁護することが必要です。他チームとの一時的な不和を恐れず、公正な立場を維持することが求められます。
公正性の維持: 公正性を歪めることなく、すべてのメンバーが公平に扱われる環境を作ることが大切です。非のないメンバーに対して不当な負担を強いることは、信頼関係を損なうリスクがあります。
長期的な信頼関係の構築: 一時的な不和を恐れず、公正な対応を続けることで、長期的には組織全体の信頼関係を強化することができます。
これは主にリーダーやマネージャーの責務ではありますが、それ以外のメンバーも組織の健全性を維持する責任があることには変わりはありません。
想定される反論
一部の人は「誤解を受けた側が『気をつけます』と謝れば済むならそれでいいのでは?誰が悪いといった些末なことにこだわらず、全体の利益を優先すべきでは?」と主張するかもしれません。
たしかに、このような対応は短期的には摩擦を避けることができるかもしれません。しかし、責任関係を隠して個人に譲歩を強いることは信頼関係を損ないます。
まずは事実関係と責任関係をクリアにする。その上で、全体として最適な方法を探すのが理想です。
結論
チームの健全性を保つためには、公正性を重視し、一時的な不和を恐れずに毅然と対応することが求められます。
補足(倫理学・ビジネス戦略の視点)
今回は私の見解を述べさせていただきましたが、当NOTEは人文科学や社会科学を中心に、自分の見解をアウトプットする場としておりますので、その視点で少し考察します。
ジョン・ロールズの『正義論』では、正義は「公正としての正義」とされ、制度や取り決めは、最も弱い立場(ここではメンバー)の人々にとっても公正であるべきだとされています。
また、『ブルーオーシャン戦略』でも戦略実現において透明性の高い「公正なプロセス」の必要性が説明されています。
倫理学・ビジネス戦略のいずれの視点からも、公正性は重要視されていると言えるでしょう。
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