第83回1000年後にどう見られるか
1、震災モニュメント
2011年3月31日に発生した東日本大震災からの復興を祈念したモニュメントが各地に建てられています。
標題の写真は今日視察で実見した名取市の「芽生えの塔」と「種の慰霊碑」。
他にも塩釜市の「時の縁石」や東松島市にある復興祈念公園内のモニュメントなど、
津波被害が大きかった沿岸部の自治体に必ずと言っていいほど建てられています。
あるものは波のイメージを、あるものは復興に立ち上がる芽のイメージを象徴しています。
ただ、今は被災者の記憶もあり、説明看板がありますので何をイメージしたのかがわかりますが、遠い未来、例えば千年後にこのモニュメントをみた人が何を象ったものかわかるでしょうか。
2、歴史上のモニュメント
文字や口承がなければモニュメントが何をイメージしたものか推測することは難しいと思います。
例えば環状列石。
世界遺産登録を目指す候補として正式にきまった「北海道・北東北の城門遺跡群」の構成要素にもなっている、秋田県鹿角市の大湯環状列石が有名ですね。
縄文時代後期(今から4000年ほど前)に築かれたものと考えられています。
集落の中心に位置すること、夏至の日没の方向との関連から祭祀に関わるもの、と考えられていますが、本当のところはわかりません。
イギリスのストーンヘンジも同様です。
後世の我々は残された遺構から様々な推論をめぐらしては、当時の人が何を想ってこれを作ったのか考えますが、もしかすると全然的外れのことかもしれません。
3、考古学者がやっていること
例えば
現代の波の形を模したモニュメントにしても、
海の恵みに感謝して、神を祀るものだ
とか考えないとも限りません。
天に向かって芽吹くモニュメントは
天体と関連づけられて語られるかもしれません。
どちらも震災の犠牲者を慰霊する、という共通の目的があって建てられたことも推測できるでしょうか。
考古学的には、
・沿岸部に多く見られる(分布論)
・2010年代に集中して造立されている(年代論)
というところが分析の対象となるでしょうか。
東日本大震災があったことがちゃんと伝承されていれば答えに辿りつくかもしれません。
その時未来人は何を思うでしょう。
石碑に慰霊の気持ちを込める21世紀人を、旧時代的だと思うのか、共感してくれるのか。
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