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第156回 力の象徴としての造形


1、湖のほとりの博物館

滋賀県にある民間の博物館、MIHO MUSEUMで平成26年9月から12月14日にかけて開催された「獅子と狛犬―神獣が来たはるかな 道」の図録を手にとる機会がありましたので紹介したいと思います。

実はこの展覧会にわが町の日吉山王神社に伝わる獅子狛犬像も出品していたのです。

少し前の話ですが、最近展示図録を目にする機会がありましたので紹介したいと思います。

2、獅子のイメージ

獅子はいうまでもなく、百獣の王で力の象徴です。展覧会の図録によると

メソポタミアでは夏の象徴としての獅子が冬の象徴としての牛を倒す図様で生命甦る夏の
季節への順調な移行を祈るものとして盛んに描かれていたということです。

エジプトでは太陽神の守護神として、人間の体躯に獅子頭をつけた像として神格化して描かれています。

ヨーロッパでは春を象徴するユニコーンを獅子が狩る図が夏の到来を示すものとして描かれています。

獅子が強さの象徴であれば、それを凌駕する存在であることは、権威を示すことにもなります。中東の古代王国、アッシリアやペルシアでは王が獅子を狩る図柄が見られますし、

ギリシャのヘラクレスも刃物を通さない強靭な皮を持つ獅子を三日間の格闘の末、打ち倒したという伝説を残しています。

一方で獅子は守るもの、というイメージも付与されます。

エジプトのスフィンクスは人面獅子ですし、文殊菩薩は獅子に乗っている姿で描かれます。

3、わが国独自の発展

もちろん前近代の日本人で本物のライオンを見た人はいません。

それでも仏像の一部や、銅鏡の文様にも獅子が古くから描かれています。

日本の寺社で見られる獅子狛犬像という二対の姿は日本独自のもので、口を開いている阿形は獅子、口を閉じている吽形は角があり狛犬と呼ばれます。

また各地の伝統芸能で見られる獅子舞の源流である獅子の面は東大寺正倉院の御物の中にもあります。

遠くはオリエントから、古くは奈良時代から、守護者として尊まれた神獣、それが獅子狛犬なのです。

ぜひ皆さんのお近くの神社にある獅子狛犬像を改めて眺めてみてはいかがでしょうか。

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