第149回 建築が体現する思想

1、施主の人生と建築

月刊文化財 659号 ◆新指定の文化財―建造物―

にて紹介されている

重要文化財 旧川上家別邸 岐阜県各務原市

を取り上げてみたいと思います。

川上家という名称の通り、川上貞奴という人が建築した別邸です。

貞奴は日本最初の女優とされ、波乱万丈を絵に描いたような人生を送りました。

2、浮世離れした建築技巧

この別邸は貞奴が亡夫音二郎の菩提寺として建立した貞照寺を参拝するために整備した、とされていることでもスケールが大きい話です。

建物は主屋と茶室、表門からなり、主屋は全体的にV字形の 平面を呈します。

接客する空間と、台所などの内向きの施設を明確に分離した構造をとっており、玄関もアールデコ調の客用と数寄屋造りの内玄関の二つがあるなど豪勢です。

広間には蕨花頭窓や獅子の陽刻を施した欄間板など贅を凝らしています。書斎やサンルームは木曽川を望む東面を大胆なガラス窓としています。

さらに田舎家と呼ぶ茅葺の部屋が付属し、囲炉裏も設けられています。

まとめると

自由な着想で数寄屋、中国趣味、農家風など大胆に使い分け、変化に富んだ外観と豪奢な室内空間を創出している。

ということらしいです。

一度見てみないといけませんね。

3、建築が時代を現す

日本の歴史上では、その時代の技術や文化を贅沢に盛り込んだ華やかな建築が続く時期が何度かあるようです。

明治から大正、昭和に掛けて建築された和洋折衷の建物然り、

安土桃山時代の寺院建築然り、

直前の混乱期が収束して、希望に満ちているような建築群。

後の時代からみたら現代の建築はどう評価されるのでしょうか。

JR京都駅や江戸東京博物館のようなポストモダン建築や

身近でいうと、せんだいメディアテークのような建築が体現するのはどんな空気なのでしょうか。

建造の文化財指定の基準は50年以上経過すること。

その頃にどう評価されるのか楽しみにしたいと思います。

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