第68回終演を迎えるその日まで

1、導入

7月2日、桂歌丸師匠が亡くなりました。

テレビ番組「笑点」に長く出演していましたし、落語芸術協会の会長を務められていたので

落語家として日本でもっとも知られていた方だと言えるでしょう。

実はわが町にも縁が深く、公民館でも落語を披露してくれたことがありました。

すでにその時には体調を崩され、車椅子で移動、舞台の幕が開いた時には既に座布団に座っている状態からの披露でした。

それでも語り始めると、いつも通りハリのある声で、病も笑いに変える姿に感動したことを覚えています。

生涯現役、その言葉を体現されていた方だと思います。

2、老いてなお戦う武将たち

歴史上の人物で、「生涯現役」という言葉で思い浮かんだのが

龍造寺家兼

知名度はあまりないかもしれませんが
その生涯は驚嘆に値すると思います。

彼は肥前国(今の佐賀県)の戦国武将。

小弐氏という大名に使える国人領主である龍造寺氏のさらに分家の出身でした。

己の才覚でのし上がり、小弐氏の筆頭家臣の位置に付きます。

そこまでは順調だったのですが、古くからの小弐家臣から妬みを買い、謀反の疑いで家族を皆殺しにされます。

家兼自身は高齢(90歳!?)のため見逃されます。

そこからが彼のすごいところ。

寺に入っていて無事だったひ孫の隆信のために奮闘し、家督相続を見届けてからようやく天寿を全うします。

のちに龍造寺隆信は「五州二島の主」と称するほど勢力を拡大します。

90を超える曽祖父が奮闘したからこそですね。

最後の戦国武将として70歳を超えて島原の乱に出陣した立花宗茂も波瀾万丈ですが

年齢的に龍造寺家兼を上回る超人はなかなかいないでしょう。

3、現代の長老たち

それに比べて現代の長老たちはどうでしょうか。

政治家はゆうまでもなく、経済界にも老害と呼ばれてしまうような方はいないでしょうか。

学会でも若手の活躍の場を奪う大家はいないでしょうか。

もちろん個人的には老いてなお、踏査に励み、資料を観察し、若手を導いてくれる方も存じ上げています。

ただ、ついこの間、所属する学会の研究動向(10年分)をまとめた際に、

10年前と同じ顔ぶれがズラリでした。

私たち中堅世代が不甲斐ないことを棚に上げて言わせてもらうと、後進の育成をもっと積極的に行う必要がありますよね。

それより何より、歌丸師匠のように

お迎えがくる直前まで己の使命に向き合って行く姿勢を貫いていきたいと思いました。

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