第1483回 日本動物考古学会第11回 山形大会参加記録
1、動物と考古学
昨日こちらにお邪魔してきました。
日本動物考古学会 第11回 山形大会
於 東北芸術工科大学
会員ではありませんが、一般も聴講可能、ということでしたので。
2、個人的に興味をもった発表について
一口に「考古学」といってもそのカバーしている範囲は広く
細かく分野ごとに分かれて研究会を行なっていることが多いのです。
私なんて、宮城県の考古学者が集まる「宮城県考古学会」の中でも、中近世という時代を主たるテーマにする部会に所属しており、年に何度か遺物の見学会などを企画しています。
ちなみに「動物考古学」とは学会HPによると
と書かれており、分析の対象とするものが「動物」に関するものであるという括りがあるようです。
古い時代の動物そのものを研究する場合は「古生物学」になってしまいます。
実際今回の大会プログラムを見ても、貝や骨などを理化学的に分析した研究や、動物を形取った製品の研究、果ては土器に残された調理の痕跡についての研究まで幅広いテーマがあることがわかります。
今回会場となったのは山形県になる私立大学東北芸術工科大学。
その名の通り、デザインやアート、ものづくりなど幅広い学問を学ぶことのできる大学です。
なんだか久しぶりに訪れたな、と思いましたが
前回は2009年の日本考古学協会大会でした。
もう十五年も前だったことに驚きです。
メインとなる会場の建物も洒落ていて
正面の入り口に向かう通路は、池の上を渡る橋を通ることになります。
建物内部にも至る所にアート作品が展示されておりました。
大きなキャンバスを抱えてあるく学生さんも見かけて、さすが芸術大学だと一人感嘆していました。
さて今回は2日間の会期な訳ですが、一日目土曜日の途中まで発表を聴講しました。
合間にポスターセッションの時間もあり、関心のある発表については詳しく説明を伺うことができました。
口頭発表で一番印象的だったのは
鹿又喜隆・鹿野晴尚「東北地方における縄文時代の動物形土製品の内部構造の地域差」
宮城県内から出土していた資料を分析していた、という親近感もありましたが
http://www.museum.tohoku.ac.jp/pdf/press_info/news_letter/omnividens_no11.pdf
動物を形どった土製品の中にコアと呼ぶような石だったり有機物だったりが入れられていた、ということ。
CTスキャンで判明した、とのことでしたが、恥ずかしながら全然知りませんでした。
今回はそれをさらに進展させて、コアに至る細い穴が開けられている例があり、それは精霊とか霊魂とかの通り道として認知されていたのではないか、
という大胆な仮説も提示されました。
東北各地の資料を分析されて、かなり地域色がある、ということがわかってきた、というところまででしたが、今後の研究の進展が待たれますね。
ポスターセッションからは
風間智裕・畑山智史・福井淳一・宮田佳樹「3D写真計測による骨角器の検討―縄文時代後期における角座骨付き鹿角の利用について―」
について。
道具の加工痕について、3D計測でどこまで迫れるか、というのはまだ道半ばな印象でしたが、
興味深かったのは、原生標本の3D画像と出土遺物の3D画像を重ね合わせることで、部位同定の客観性が増す、という点です。
先日お世話になった動物考古学の専門家の方は、自分で作った現生動物の標本をたくさん担いできて、参考資料にしていました。
もし3D画像でその標本を収集しておいて、参照することができれば、かなり省エネ化できるのではないでしょうか。
そして何と言っても我が町出土の資料にも触れていただいていた
松崎哲也「宮城県東松島市里浜貝塚で初確認されたウシサワラについて」
こちらもぜひどこかで論文として発表していただければ
我が町の資料がこんなに活用されていますよ、といういい実績になるのですが。
3、未来に希望が
いかがだったでしょうか。
今回の研究大会の冒頭に
「一般公開となっていますので、発表者の皆さんはできるだけ平易な言葉で」
というアナウンスがありましたが、結構専門用語が説明なく使われていたので
高校生ボランティアで参加してくれていた方々にもちょっと難しかったのではないか、と思いました。
この問題は宮城県考古学会でもいつも議論になりますね。
とはいえ、大学開催、ということで多くの若人が参加していて
この分野の将来性が明るいことを思いました。
やっぱり身近に触れる機会があってこそ、目指す人が生まれるのだな、と。
中近世考古学ももっとがんばらないと、と思いを新たにしました。
本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。