第133回 謹呈◯◯学兄殿
1、論文が名刺がわり
大学時代の友人から抜き刷りが届きました。
抜き刷りというのは、雑誌に投稿した論文などを、その部分だけ抜き出して印刷したもののことです。
他はどうだか知りませんが、歴史系の学問の研究者は特に名刺や近況挨拶代わりに50部や100部も印刷して配っているのが通例です。
私は無精なので、配り損ねた自分の論文の抜き刷りが山ほど書棚に入っています。
あとは大体知り合いが同じ学会に入っていて、掲載されている雑誌そのものを持っているので抜き刷りを渡す必要がない、という言い訳もあります。
隣接学、例えば私でいうと考古学が専門ですので、古文書を読む人たちに配るのだと意味があるということもありますね。
2、研究にも人間性が
その友人は神奈川県で後北条氏の研究をしており、今回頂いた論文も丁寧に古文書を読み込んで行くことで、ある時代、ある地域に生きた武将たちの姿を浮かび上がらせようと苦心している様子がうかがえる内容でした。
生真面目な彼の性格がにじみでているような感じです。
論文って性格出ますよね。
自分で書いたモノを読み直すと、大雑把で、結論を急ぎすぎ、説明が不足していることが往々にしてあるので、恥ずかしくなります。
ちなみに抜き刷りを送ってくれた彼は、お茶目?なところもあって、
戦国時代好きが高じて、ダンボールで鎧を製作して武者行列に毎年参加しています。いつもSNSで写真を拝見していますが、とてもダンボールとは思えない仕上がりになっていますよ。
今回送付してきた封書の封緘にも虎の印章が押されていました。
後北条氏が虎の印章を使っていたことにちなんでいるのでしょう。
3、どうせなら楽しく
このような友人の姿から刺激を受けることは、いつも大きな力になってくれます。
研究もっと頑張らねば、ということもありますが
鎧や虎の印章のようにパーソナリティを印象付ける何かが欲しくなりますね。
私ですと、
最近の研究は五輪塔やら板碑やらで、なんだかお墓や死後の供養の世界をイメージするものばかりで、あんまり受け取った方としては、いいイメージないですよね。
知名度が高い伊達政宗さんが領主となってやってくる前の歴史が1番関心高い時代ですし。
さらにいうと、戦国武将とか殿様とかの文化より、庶民がどのような暮らしをしていたのか、どのような信仰を持っていたのか、そんなところに迫りたいと常々思っていますし。
研究者としてのセルフブランディングについて、もう少し考えてみよう、と思いました。
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